認定司法書士が弁護士法72条に違反して締結した和解契約の効力
最高裁H29.7.24
<原判決>
補助参加人(認定司法書士)が代理人として本件和解契約を締結した行為は、公益規定である弁護士法72条に違反
⇒この点に関する補助参加人とAとの間の本件委任契約は無効
⇒本件和解契約も、そのような委任契約に基づいて締結されたという点において、無効。
⇒被上告人(Aの破産管財人)の請求を認容。
<判断>
認定司法書士が委任者を代理して裁判外の和解契約を締結することが弁護士法72条に違反する場合であっても、
当該和解契約は、その内容及び締結に至る経緯等に照らし、公序良俗違反の性質を帯びるに至るような特段の事情がない限り、無効とはならない。
本件事情によれば、公序良俗違反の性質を帯びるに至るような特段の事情はうかがわれず、本件和解契約を無効ということはできない。
⇒
被上告人の請求を棄却した第1審判決の結論は正当であるとして、控訴を棄却。
<解説>
●最高裁判例
最高裁昭和38.6.13:
非弁護士が、依頼者との間で締結した、債権の取立てに成功した場合には取立金額から訴訟費用を控除した残額の半分を報酬として受け取るという契約に基づき、報酬を請求した事案について、
弁護士法72条に抵触する委任契約は民法90条に照らして無効⇒非弁護士による報酬請求は棄却すべきもの。
最高裁昭和46.7.14:
弁護士法72条本文の法意について、
弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、ひろく法律事務を行うことをその職務とするものであって、そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされるなど、諸般の措置が講じられているのであるが、世上には、このような資格もなく、なんらの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになる
⇒同条は、かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられる。
最高裁H28.6.27:
司法書士法3条1項7号にいう「紛争の目的の価額」をどのように算定するかについて、
債務整理を依頼された認定司法書士は、当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が司法書士法3条1項7号に規定する額を超える場合には、その債権に係る裁判外の和解について代理することができない。
~
債権額説(債権者が主張する残元金額をいう)
個別説(個別の債権ごとに算定)
をとることを明らかにした。
●法令に違反する契約の効力
当該法令が法律行為を無効とするものか否かについて、
①法令違反行為を無効とすることが禁止目的達成のために必要かどうか
②違反行為が公序良俗に反するかどうか
③違反行為を無効とすることによって当事者相互間に不公正が生じないかどうか
という3要素を考慮して決する。
(末弘、今日でも通説)
弁護士法72条に違反して、j弁護士でない者が代理人として締結した契約の効力:
〇A非無効説
弁護士法72条に違反して締結された委任契約の効力と、当該委任契約を締結した非弁護士が委任者を代理して締結した契約の効力は、別個に判断されるべき。
●
×A:弁護士法72条に違反して締結された委任契約が民法90条に照らして無効となる⇒非弁護士による代理行為が無権代理となり無効となるとする説
but
代理権授与行為自体は存在しており、典型的な無権代理とは異なる。
本判決は、本件和解契約を有効と判断⇒認定司法書士との間で弁護士法72条に違反して委任契約が締結された場合でも、代理権授与は無効とはならないと解しているものと思われる。
判例時報2351
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