« タクシー会社の乗務員の雇止めの事例(有効) | トップページ | 教員採用処分の取消処分の有効性が問題となった事案 »

2018年1月30日 (火)

私立大学における自社年金規程の不利益変更の事例(有効)

東京地裁H29.7.6      
 
<事案>
大学等を運営する学校法人であるYが、昭和37年4月に創設した事前積立方式の確定給付型年金制度において、年金財政が危機的な状況⇒平成23年4月に正との改定を実施。 
これによって年金給付が減額されたYの元職員であった年金受給者である14名がその改定の無効を主張し、改定前の年金を受給しうる地位にあることの確認と減額分の支払を請求した事案。
 
<判断>
●本件年金給付の賃金後払い的性格を否定し、教職員に対する恩恵的給付、功労報償としての性質や、教職員の相互扶助としての性質を有する制度であると評価できる⇒Xらの権利性に関する主張を退ける。

●本件年金制度を契約関係と捉えた上で、
その契約内容は年金規程等によって一律に規律されることが予定されており、
Yは同年金規程の減額条項を根拠として、その内容に従い合理的と考えられる範囲内で年金給付額を減額することができる。

●本件改定について:
①死亡率計算の前提となる平均余命が大きく伸びており
②Yが平成20年8月に従来の国民生命表から厚生年金生命表に入れ替えたのも適切
③Yが予定利率を同月以降従前の4%から3.5%に引き下げたのも低金利状況の中での運用実績等からして十分な理由がある

前記年金規程の減額条項にいう計算基礎率の「著しい変動」に該当し、合理的な範囲内で給付額を減額する事情が認められる。
本件改定は、受給額の段階的な兵器10.4%の引下げであり、受給者に対する一定の配慮もなされており、Yの教職員の高水準の退職金等からしても、本件減額は相当性を有する。

●改定続要件について、
本件年金細目の規定内容を理由に、具体的なシミュレーション等による説明は不可欠とはいえない⇒その瑕疵を否定。 
 
<解説>
本判決:
年金受給権の法的性格について、恩恵的給付、功労報償、相互扶助等の性格を強調しており、その権利性に触れるところがない
but
仮にそのような性格が含まれるとしても、年金受給権が年金規程に基づいて既に具体的に発生した権利としていの性格を有することも否定できない

松下電器産業事件控訴審判決(大阪高裁H18.11.28)の判示するように、
その不利益変更は本来信義則に反するものであり、その変更を実質的に基礎付ける「経済情勢の変動」の程度を検討、減額改定の程度も最低限度のものであることの検討が求められる。 

本判決は、年金財政の悪化等から被告の「方針転換」の必要性を肯定し、死亡率・予定利率の「著しい変動」を認定して受給者に対する「合理的な範囲での負担」を求めている。
but
本件年金減額の程度が年金財政の改善として必要かつ合理的な範囲かどうかの、将来予測等による具体的な検討が欠けている

Y法人本体の財政状態については、Yの拠出責任の判断とは別に考慮すべき要素と考えられる。

制度趣旨が類似する確定給付企業年金については、
確定給付企業年金法において給付額引き下げを内容とする規約の変更には行政庁の承認が必要であり、その承認の要件として、実施事業所の経営の状況が悪化したこと等が必要とされている。
同法の適用対象外である自主年金についても参照されてよい。

判例時報2351

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« タクシー会社の乗務員の雇止めの事例(有効) | トップページ | 教員採用処分の取消処分の有効性が問題となった事案 »

判例」カテゴリの記事

労働」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132655/66339783

この記事へのトラックバック一覧です: 私立大学における自社年金規程の不利益変更の事例(有効):

« タクシー会社の乗務員の雇止めの事例(有効) | トップページ | 教員採用処分の取消処分の有効性が問題となった事案 »