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2017年12月30日 (土)

会社法2条6号「大会社」となったにもかかわらず、会計に限定した非常勤監査役を選任していた場合の同監査役の責任等(和牛預託商法)

大阪高裁H29.4.20      
 
<事案>
原告らは、平成15年6月から平成23年7月までの間にオーナー契約を締結し、本件会社に投資した顧客。
投資総額4億2980万円の大半が焦げ付いた⇒違法な資金集めに関与したとする個人の賠償責任を追及する本件訴訟を提起。
本件被告とされたのは、有限会社時代の従業員(平)取締役であったY3とY1、株式会社移行後に選任された非常勤監査役Y2のほか、関連会社の役員であった多数の者。
 
<判断> 
●従業員(平)取締役Y3及びY1の責任 
◎原判決 
Y3について:
取締役退任から原告らの契約締結時期まで4年以上が経過⇒Y3の義務懈怠と原告らの損害との間に相当因果関係が認められない
⇒Y3に対する請求を棄却。

Y1について:
新たなオーナ―契約の募集を止めるよう代表取締役に進言するなどの措置を講じるべき義務があったのに、重過失によりその義務を懈怠
⇒Y1に対する請求を全部認容
 
◎判断 
①Y3・Y1が繁殖牛不足の事実を知ることが困難であった
②Y3・Y1が置かれていた状況に照らせば、違法なオーナー契約の勧誘を止めさせるための行動を起こすこと(職務上の義務を履行すること)が極めて困難であった

そうしなかったこと(職務上の義務懈怠)につき重大な過失は認められない
⇒Y3、Y1の第三者責任を否定。
 
●非常勤監査役Y2の責任 
◎事案 
Y2は、株式会社に移行した直後の平成21年9月(60歳時)、本件会社の非常勤監査役に就任。
本件会社の定款には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあり、Y2と本件会社は監査の範囲を会計に限定して監査役就任契約を締結。
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本件会社は、株式会社移行時、既に負債が200億円以上の大会社(会社法2条6号)⇒本来なら会計監査人と監査役の両方を置かなければならず(同法327条3項、328条2項、329条1項)、監査役の監査の範囲を会計に限定することができないはず(同法389条1項)。
Y2は、平成22年5月頃、同年3月期決算の打ち合わせにおいて初めて、本件会社が負債200億円以上の大会社であり、会計監査人を置く必要があると知り、本件会社の取締役会に対し、会計監査人導入に向けた行動計画を提案したが、本件会社は、そのような態勢を整えようとせず、平成23年8月に経営破綻。
 
◎原審
①平成21年4月の株式会社移行時既に大会社であった⇒本件会社は、それ以後、会計限定監査役を選任することが許されない⇒Y2は(監査役就任契約の内容とは関係なく)法律上当然に業務監査を行う職責を負う
②その職責を果たしていたなら平成22年6月以降のオーナー契約を食い止めることができた可能性がある

Y2は同時期以降に生じた原告らの損害について個人賠償責任を負う。
Y2に対する請求の一部(7062万円)を認容。
 
◎判断 
Y2には業務監査の職責まで負わせられる契約上の根拠がない
業務監査を行う適任者として選任されたのではないY2に業務監査の職責を負わせることは、会社にとって不足であるばかりでなく、Y2にとっても過酷
大会社の監査は、会計監査人と監査役が分業して行うべきなのに、株主が機関選任を懈怠している間、Y2一人に両方の職責を強いる解釈には無理がある
会社法336条4項3号が、通常監査役を置く必要が生じた場合、会計限定監査役の任期を終わらせることにしているのは、会計限定監査役に通常監査役の職責を果たすことを求めない法の姿勢の現れである

Y2の職責は会計に限定されると判断した上で、Y2に対する請求を棄却。
 
<解説>
ワンマン社長が経営を支配する会社の名目取締役について、経営監視義務懈怠を理由に対第三者責任を問うことが可能なのか?
最高裁昭和48.5.22は平取締役の経営監視義務を肯定
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義務懈怠と第三者の損害の相当因果関係を否定し、あるいは、
義務懈怠についての重大な過失を否定し、
このような取締役の対第三者責任を否定した下級審判例は多い。

●「大会社」であるのに会計限定監査役が選任されている場合に関する監査役の責任の範囲
このような「監査役の権利義務は、業務監査権限を有する監査役としての権利義務であるため・・・その義務を免れることを望む場合には、裁判所に対し、仮監査役の選任の申立てをする必要がある」との学説
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本判決は異なる見解。

会社法429条1項の責任を逃れたいなら、同法346条2項の仮監査役の選任申立てをしておくべきだったということは非現実的と考えた?

判例時報2348

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