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2017年12月14日 (木)

銀行が、輸入業者の輸入する商品に関して信用状を発行し、商品につき譲渡担保権の設定を受けた場合の占有改定による引渡し

最高裁H29.5.10      
 
<事案>
輸入業者であるYから依頼を受けてその輸入商品に関する信用状を発行し、同輸入商品につき譲渡担保権の設定を受けた銀行X
Yにつき再生手続開始の決定⇒前記譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、Yが第三者に転売した同輸入商品の売買代金債権の差押えを申し立てた。 
Y:Xは前記譲渡担保権について対抗要件を具備していないから物上代位権の行使は許されないと主張。
 
<判断>
銀行であるXが、輸入業者であるYの輸入する商品に関して信用状を発行し、これによってYが負担する償還債務等に係る債権の担保として当該商品につき譲渡担保件の設定を受けた場合において、
次の①及び②の事情の下では、Yが当該商品を直接占有したことがなくても、Xは、Yから占有改定の方法により当該商品の引渡しを受けたものといえる。 
①XとYとの間においては、輸入業者から委託を受けた海貨業者によって輸入商品の受領等が行われ、輸入業者が目的物を直接専有することなく転売を行うことが一般的であったという輸入取引の実情の下、
前記譲渡担保権の設定に当たり、
XがYに対し輸入商品の貸渡しを行ってその受領等の権限を与える旨の合意がされていた。
②海貨業者は、金融機関が譲渡担保権者として当該商品の引渡しを占有改定の方法による受けることとされていることを当然の前提として、Yから当該商品の受領品の委託を受け、当該商品を受領するなどしていた。
 
<解説> 

最高裁H11.5.17:
動産譲渡担保権に基づく物上代位権の行使について、一定の事実関係の下においてこれを肯定。
but
同決定の事案では、譲渡担保権者による対抗要件の具備の要否ないし有無は、争点とされておらず、判断の対象とされなかった。 

最高裁H22.6.4:
再生債務者財産についての所有権留保権者による別除権の行使が問題となった事案において、別除権の行使のためには、一般債権者との衡平を図るなどの趣旨から、原則として再生手続開始時点で当該特定の担保権につき登記、登録等を具備している必要がある。

動産譲渡担保権者についても、別除権者として権利を行使するためには譲渡担保物につき引渡しを受けている必要がある。
 

占有改定の意思表示は、占有代理関係を発生させる法律関係があれば黙示的に表示されたものといえ(大判大4.9.29)、
動産譲渡担保権設定契約後、債務者が引き続き目的物を占有するときは、債権者は、契約成立と同時に占有の改定により引渡しを受けたものとして、その物の占有権を取得する(最高裁昭和30.6.2)。 
 

民法 第183条(占有改定)
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

民法 第181条(代理占有)
占有権は、代理人によって取得することができる

民法 第184条(指図による占有移転)
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
 
●間接占有者からの占有改定の可否 
占有権は代理占有によっても取得できる(民法181条)⇒民法183条がいう「占有物」が直接占有物に限定されているとは当然には解されない。
民法184条は、本人が代理人によって目的物を専有する場合に、代理人に対する指図によって第三者に引渡しをすることができる旨を規定。
指図による占有移転は、本人と代理人との間の返還請求権(代理占有関係)を第三者と代理人との間に移転させ、これによって本人が間接占有を失い、代わりに第三者が間接占有を取得するもの。
but
本件のような場合に、同条の方法によって占有を引き渡すことができることは当然であるとしても、
本人である譲渡担保権設定者が占有代理関係から抜けることが想定されておらず、本人と代理人(直接占有者)との間の占有代理関係を維持したまま、本人と譲渡担保権者との間に重畳的に新たな占有代理関係を生じさせ、譲渡担保権者に間接占有を取得させようとする場合も、同条によらなければならないと解する必要はない。

一般的に、AからB、BからCへの占有物の現実の引渡しがされ、各当事者間に重畳的占有代理関係が成立した場合には、Cが所持していても、Aは間接占有を保持すると解されている。

Bの代理人であるCが現実の所持を取得し、BとAとの間で占有改定の合意が成立した場合であっても、前記現実の引渡しがされた場合の同様の重畳的な代理占有関係が成立したと評価することができるのであれば、その成立過程の違いをもってAによる占有の取得を否定すべき理由はない

判例時報2347

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