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2017年12月 7日 (木)

楽曲の無断配信と、権利者からの許諾の有無を確認すべき条理上の注意義務・損害認定

知財高裁H28.11.2      
 
<事案>
X:本件原盤についてのレコード製作者の著作隣接権(複製権、貸与権、譲渡権及び送信可能化権)及び本件楽曲についての実演家の著作隣接権(送信可能化権)を有する。 
Y:Xから委託を受けたとするZとの再委託契約に基づき、本件原盤から複製された本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信を行ったが、実際にはZは許諾を得ていなかった

Xが、Yに対し、以下の理由により、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求権及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。
①本件原盤から複製された本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信により、Xが有する本件原盤についてのレコード製作者の著作隣接権(複製権、貸与権、譲渡権及び送信可能化権)及び本件楽曲についての実演家の著作隣接権(送信可能化権)を侵害したことを理由とする損害賠償金(著作権法114条2項)
②本件CDを廃盤にして、Xの本件原盤、ジャケットを含む本件CD及びポスター等の所有権を侵害したことを理由とする損害賠償金
③前記①②に関する弁護士相談料に係る損害賠償金
 
<規定>
著作権法 第114条の5(相当な損害額の認定)
著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる
 
<判断>
Yの控訴を棄却するとともに、Xの附帯控訴に基づき原判決が認定した損害額を増額変更し、Xのその余の請求をいずれも棄却。 

本件再委託契約に際してZが作成した本件企画書の記載から、Yは、本件再委託契約を締結した頃、Zが本件原盤について著作権及び著作隣接権を有しないことを認識していた
②Yによる本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信は、いずれも著作権者又は著作隣接権者の許諾がない限り著作権又は著作隣接権を侵害する行為
Yは、国内最大手の衛星一般放送事業者であるのに対し、Zは、資本金400万円の比較的小規模な会社であり、本件再委託契約締結当時、YとZとの取引実績はまだそれほど蓄積されていなかった
④Yは、本件原盤に関し、本件企画書に原盤会社として明記されているXとZとの利用許諾関係を確認することができ、同確認をすれば、本件のCDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信についてのXの許諾がないkとを明確に認識し、以後、前記販売及び配信をしないことによって、Xが有する著作隣接権の侵害を回避することができた

Yは、本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信に当たり、Xの許諾の有無を確認すべき条理上の注意義務を負う
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Yは、本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信に当たってXの許諾の有無を確認しておらず、前記条理上の注意義務に違反して、Zが本件岩盤を複製して制作した本件CDをレンタル事業者に販売し、また、インターネット配信事業者を通じて本件楽曲を配信。

Yは、Xの許諾なく前記複製、販売及び配信を行ったことにつき、少なくとも過失がある

Yは、Zらと共に、Xのレコード製作者としての複製権、譲渡権、貸与権及び送信可能化件並びに実演家としての送信可能化権を侵害し、共同不法行為責任を負う

配信1回当たり控訴人が受領した金額の平均はおおむね146円であり、著作権法114条の5により、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、事実審の口頭弁論終結日までの本件楽曲の無断配信の回数は400回と認められる
⇒本件楽曲の無断配信に係る損害は、両者を乗じた5万8400円になる。
 
<解説>
著作隣接権が侵害された場合、著作権者等は、損害賠償を請求することができるが(民法709条)、損害賠償請求の要件として、故意又は過失が必要。

過失の推定規定を有する特許法等とは異なり(特許法103条)、著作権法には、そのような規定がない
⇒侵害者の故意又は過失を主張立証する必要がある。 

本判決は、許諾の有無を確認しなかったという不作為についての注意義務違反を認めたが、不作為が不法行為を構成するには、その前提としての作為義務の存在が不可欠

作為義務の根拠としては、法令の規定、契約のほか、条理が挙げられ、条理に基づく不作為による過失責任を認めた判例:

最高裁H13.3.2:
カラオケ装置のリース業者に、リース契約の相手方が著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上注意義務を負う。
本判決は、同最高裁判決が示した5つの要素(①カラオケ装置の危険性、②被害法益の重大性、③リース業者の社会的地位、④予見可能性、⑤結果回避可能性)等を総合的に考慮して、条理上の義務違反を肯定。

判例時報2346

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