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2017年12月13日 (水)

共同不法行為の考え方(建設アスベストの事案)

札幌地裁H29.2.14      
 
<規定>
民法 第719条(共同不法行為者の責任)
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
 
<事案>
いわゆる建設アスベストの事案
 
<719条1項前段>
●本判決:
民法719条1項前段の規定は、
複数人による個々の加害行為と被害者の被った損害の全部との間に、それぞれ独自に相当因果関係がある場合(加害行為と損害との間に事実的因果関係があり、かつ、当該損害が不法行為に基づく損害賠償の範囲に含まれる場合)において、
当該複数人による個々の加害行為が同項前段にいう共同の不法行為に該当するとき(いわゆる客観的関連共同性が認められるとき)は、
当該複数人による個々の加害行為が単純に競合したにすぎないときとは異なり、
当該複数人による個々の加害行為の当該損害に対する寄与の割合に応じた減責の抗弁を許さず、当該複数人に対して当該損害の全部を連帯して賠償する責任を負わせる趣旨。 

●現在の多数説:
複数人による個々の加害行為と被害者の被った損害の全部との間にそれぞれ独自に相当因果関係があることを要しない。
ex.
2人のうち1人(A)による加害行為の損害に対する寄与の割合が6割で、もう1人による加害行為の損害に対する寄与の割合が4割

Aによる加害行為は損害の一部(6割)との間でのみ相当因果関係があるにすぎず、Bによる加害行為も損害の一部(4割)との間でのみ相当因果関係があるにすぎない。

①被害者が民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求をする場合には、Aに対しては損害の一部(6割)のみ、Bに対しても損害の一部(4割)のみの賠償請求をすることができるにすぎない。
but
②被害者が民法719条1項前段の共同不法行為に基づく損害賠償請求をする場合には、A及びBによる個々の加害行為が同項前段にいう共同の不法行為に該当する(いわゆる関連共同性が認められる)限り、
A及びBに対して損害の全部(A及びBによる共同の加害行為と相当因果関係のある損害)の賠償請求をすることができる。

●判例:
Aによる加害行為の損害に対する寄与の割合が6割で、Bによる加害行為の損害に対する寄与の割合が4割である場合には、A及びBによる個々の加害行為と損害の全部との間にそれぞれ独自に相当因果関係があることを前提としており、
前記事例において
①被害者が民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求をする場合には、原則として、Aに対しても、Bに対しても、損害の全部(A及びBによる個々の加害行為とそれぞれ独自に相当因果関係のある損害)の賠償請求をすることができるが、

その例外として、
A及びBの前記寄与の割合に応じた減責の抗弁が認められる余地がある

but
②被害者が民法719条1項前段の共同不法行為に基づく損害賠償を請求する場合、
A及びBによる個々の加害行為が同項前段にいう共同の不法行為に該当する(いわゆる客観的関連共同性が認められる)限り
前記減責の抗弁は排斥され、
原則のとおり、A及びBに対して損害の全部(A及びBによる個々の加害行為とそれぞれ独自に相当因果関係のある)の賠償請求をすることができる。

民法709条とは別に719条を置いている意味がある。
 
<719条1項後段> 
●本判決:
民法719条1項後段の規定は、
複数人による個々の加害行為のうちのいずれかの者による行為(1人による行為である必要はない。)と被害者の被った損害の全部との間に相当因果関係があり、かつ、
当該複数人以外の者による加害行為はないか、又は当該複数人以外の者による加害行為と当該損害との間には相当因果関係がない場合において、
当該複数人のうちのいずれの者による加害行為と当該損害との間に相当因果関係があるのかが不明であるときは、
当該複数人による個々の加害行為と当該損害との間にそれぞれ独自に相当因果関係があるものと推定し、
当該複数人がそれぞれ自身による加害行為と当該損害との間には相当因果関係がないことを立証しない限り、
当該複数人に対して当該損害の全部を連帯して賠償する責任を負わせる趣旨の規定。
ex.
Aによる加害行為の損害に対する寄与の割合が6割、
Bによる加害行為の損害に対する寄与の割合が4割、
Cによる加害行為と損害の間には相当因果関係がない(ただし、Cの行為も加害行為には当たる。)場合で
被害者がAとCのみを共同行為者として民法719条後段に基づく損害賠償請求

前記説示の各要件のうち
①複数人(A及びC)による個々の加害行為のうちのいずれかの者(A)による行為と被害者の被った損害の全部との間に相当因果関係があるという要件は満たすが
②当該複数人(A及びC)以外の者(B)による加害行為はないか、又は当該複数人以外の者による加害行為と当該損害との間には相当因果関係がないとの要件は満たさない。

Aによる加害行為の損害に対する寄与の割合が6割
Bによる加害行為の損害に対する寄与の割合が4割
Cによる加害行為と損害との間には相当因果関係なし
Dによる行為は加害行為すらなし
の場合で、
4人全員を共同行為者として民法719条1項後段に基づく損害賠償請求

ABCについては、相当因果関係がないこと(抗弁)を主張立証しない限り、損害の全部を賠償する責任を負う
Dは、自身による加害行為がないことを主張して請求原因を否認すれば足りる。

判例時報2347

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