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2017年12月 4日 (月)

遺留分減殺請求と代襲相続人の特別受益

福岡高裁H29.5.18      
 
<事案>
被相続人A(平成23年7月死亡)の二女であるXが、B(Aの長女。平成16年2月死亡)及びY1(Bの長男・代襲相続人)に対するAの贈与によって、Xの遺留分が侵害されている⇒Y1及びY2(Bの二男・代襲相続人)に対して遺留分減殺を求めた。 

Aが、
①Bの生前である平成元年12月、Bに対して土地13筆(本件土地1)を、
②平成3年5月、B及びY1に対して土地2筆(本件土地2)の各共有持分2分の1を、
③Bの死亡後である平成16年4月にY1に対して土地3筆(本件土地3)をそれぞれ贈与。
(Bの遺産分割では、Y1がBの遺産の全てを取得し、Y2は代償金のみを取得)

XがY1及びY2に対して遺留分減殺を求めた。
 
<争点>
①被代襲者(B)が生前に被相続人(A)から受けた特別受益が、代襲相続人(Y1、Y2)の特別受益に当たるか?
②推定相続人でない者(Y1)が被相続人(A)から贈与を受けた後に、被代襲者(B)の死亡によって代襲相続人として地位を取得した場合に、当該代襲相続人(Y1)の特別受益に当たるか? 
 
<判断>
●争点①について:
被代襲者についての特別利益は、その後に被代襲者が死亡したことによって代襲相続人となったY1及びY2との関係で特別受益に当たる

特別受益の持戻しや代襲相続は相続人間の公平を図る制度であって、代襲相続人に被代襲者が生存していれば受けることができなかった利益を与える必要はない
②被代襲者に特別利益があればその子等である代襲相続人も利益を享受しているのが通常

●争点②について
相続人でない者が、被相続人から贈与を受けた後に、被代襲者の死亡によって代襲相続人としての地位を取得したとしても、前記贈与が実質的には相続人に対する遺産の前渡しに当たるなどの特段の事情がない限り、特別受益には当たらない

他の共同相続人に被代襲者が生存していれば受けることができなかった利益を与える必要はない
②被相続人が他の共同相続人の子らにも同様の贈与を行っていた場合の不均衡
but
本件では、相続人であるBへの遺産の前渡しとして自宅の敷地である本件土地2を贈与するにあたって、その持分2分の1をBの子のY1名義にしたものにすぎず、実質的にはBへの遺産の前渡しとも評価しうる特段の事情がある

前記贈与はY1の特別受益に当たる

●最後に贈与された本件土地3から遺留分減殺をすべきところ、
Y1が価額弁償を申し出て、XもY1に対して価額弁償金を請求
⇒原判決を取り消し、Y1にXに対する価額弁償金の支払いを命じた。 
 
<解説>
被代襲者が生前に受けた特別受益が、被代襲者の死亡後に代襲相続人となった者の特別受益に当たるか?
A:積極説(通説)
特別受益制度では共同相続人間の公平を重視すべきところ、代襲相続人は被代襲者と実質上同一の地位にあり、被代襲者の特別受益があれば、その直系卑属である代襲相続人も実質的に利益を受けていると考えられる。 

相続人でなかった者が被相続人から贈与を受けた後に、被代襲者の死亡によって代襲相続人としての地位を取得した場合に特別受益に当たるか?

A:消極説(通説)

推定相続人の資格を持たなかった代襲相続人に対する贈与は、相続分の前渡しとはいえない
②他の共同相続人に代襲がいなかった場合以上の利益を与える必要はない

B:積極説も有力
受益者は相続開始時に共同相続人であれば足り、受益の時期にかかわらず持ち戻しの対象とすべき

特別受益は共同相続人間の公平の維持が目的

判例時報2346

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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