« 2017年11月 | トップページ | 2018年1月 »

2017年12月

2017年12月30日 (土)

会社法2条6号「大会社」となったにもかかわらず、会計に限定した非常勤監査役を選任していた場合の同監査役の責任等(和牛預託商法)

大阪高裁H29.4.20      
 
<事案>
原告らは、平成15年6月から平成23年7月までの間にオーナー契約を締結し、本件会社に投資した顧客。
投資総額4億2980万円の大半が焦げ付いた⇒違法な資金集めに関与したとする個人の賠償責任を追及する本件訴訟を提起。
本件被告とされたのは、有限会社時代の従業員(平)取締役であったY3とY1、株式会社移行後に選任された非常勤監査役Y2のほか、関連会社の役員であった多数の者。
 
<判断> 
●従業員(平)取締役Y3及びY1の責任 
◎原判決 
Y3について:
取締役退任から原告らの契約締結時期まで4年以上が経過⇒Y3の義務懈怠と原告らの損害との間に相当因果関係が認められない
⇒Y3に対する請求を棄却。

Y1について:
新たなオーナ―契約の募集を止めるよう代表取締役に進言するなどの措置を講じるべき義務があったのに、重過失によりその義務を懈怠
⇒Y1に対する請求を全部認容
 
◎判断 
①Y3・Y1が繁殖牛不足の事実を知ることが困難であった
②Y3・Y1が置かれていた状況に照らせば、違法なオーナー契約の勧誘を止めさせるための行動を起こすこと(職務上の義務を履行すること)が極めて困難であった

そうしなかったこと(職務上の義務懈怠)につき重大な過失は認められない
⇒Y3、Y1の第三者責任を否定。
 
●非常勤監査役Y2の責任 
◎事案 
Y2は、株式会社に移行した直後の平成21年9月(60歳時)、本件会社の非常勤監査役に就任。
本件会社の定款には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあり、Y2と本件会社は監査の範囲を会計に限定して監査役就任契約を締結。
but
本件会社は、株式会社移行時、既に負債が200億円以上の大会社(会社法2条6号)⇒本来なら会計監査人と監査役の両方を置かなければならず(同法327条3項、328条2項、329条1項)、監査役の監査の範囲を会計に限定することができないはず(同法389条1項)。
Y2は、平成22年5月頃、同年3月期決算の打ち合わせにおいて初めて、本件会社が負債200億円以上の大会社であり、会計監査人を置く必要があると知り、本件会社の取締役会に対し、会計監査人導入に向けた行動計画を提案したが、本件会社は、そのような態勢を整えようとせず、平成23年8月に経営破綻。
 
◎原審
①平成21年4月の株式会社移行時既に大会社であった⇒本件会社は、それ以後、会計限定監査役を選任することが許されない⇒Y2は(監査役就任契約の内容とは関係なく)法律上当然に業務監査を行う職責を負う
②その職責を果たしていたなら平成22年6月以降のオーナー契約を食い止めることができた可能性がある

Y2は同時期以降に生じた原告らの損害について個人賠償責任を負う。
Y2に対する請求の一部(7062万円)を認容。
 
◎判断 
Y2には業務監査の職責まで負わせられる契約上の根拠がない
業務監査を行う適任者として選任されたのではないY2に業務監査の職責を負わせることは、会社にとって不足であるばかりでなく、Y2にとっても過酷
大会社の監査は、会計監査人と監査役が分業して行うべきなのに、株主が機関選任を懈怠している間、Y2一人に両方の職責を強いる解釈には無理がある
会社法336条4項3号が、通常監査役を置く必要が生じた場合、会計限定監査役の任期を終わらせることにしているのは、会計限定監査役に通常監査役の職責を果たすことを求めない法の姿勢の現れである

Y2の職責は会計に限定されると判断した上で、Y2に対する請求を棄却。
 
<解説>
ワンマン社長が経営を支配する会社の名目取締役について、経営監視義務懈怠を理由に対第三者責任を問うことが可能なのか?
最高裁昭和48.5.22は平取締役の経営監視義務を肯定
but
義務懈怠と第三者の損害の相当因果関係を否定し、あるいは、
義務懈怠についての重大な過失を否定し、
このような取締役の対第三者責任を否定した下級審判例は多い。

●「大会社」であるのに会計限定監査役が選任されている場合に関する監査役の責任の範囲
このような「監査役の権利義務は、業務監査権限を有する監査役としての権利義務であるため・・・その義務を免れることを望む場合には、裁判所に対し、仮監査役の選任の申立てをする必要がある」との学説
but
本判決は異なる見解。

会社法429条1項の責任を逃れたいなら、同法346条2項の仮監査役の選任申立てをしておくべきだったということは非現実的と考えた?

判例時報2348

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月29日 (金)

ピクトグラムの「使用許諾契約」終了による原状回復義務・契約当事者たる地位の承継の主張等

大阪地裁H27.9.24      
 
<事案>
X:VI(ヴィジュアル・アイデンティティ)等の制作等を主たる目的とする株式会社(仮説創造研究所)
Y1:大阪市
Y2:大阪市都市工学情報センター 
Y1は、その案内表示の改善のため、Y2に業務委託を行い、Y2は、平成12年3月31日、大阪城等のピクトグラムのデザインを、板倉デザイン研究所に委託し、P1がピクトグラムのデザインを行った。

Y2は、平成12年3月31日、大阪市各局の設置する案内表示等に、P1がデザインしたピクトグラムを使用することを目的として、板倉デザイン研究所との間で、「ピクトグラム使用契約」(「本件使用許諾契約1」、対象となったピクトグラムを「本件ピクトグラム」)を締結。

Y2は、平成12年8月31日、P1がデザインした本件ピクトグラムを、同じくP1がデザインした地図デザイン(「本件地図デザイン」)に配した「本件案内図」につき、これをY1が設置する案内表示等に使用することを目的として、板倉デザイン研究所との間で、「大阪市観光案内使用契約」(「本件使用許諾契約2」、両契約を併せて「本件各使用許諾契約」)を締結。

本件各使用許諾契約において、板倉デザイン研究所が、Y2に対し本件ピクトグラム等についての使用を許諾するに当たり、大阪市案内表示ガイドラインに従って実施される大阪市各局の案内表示とそれらを補足する地図等の媒体において、Y1が本件ピクトグラム等を使用することが定められている。
 
<争点>
(1) 本件各使用許諾契約の有効期間内に作成された本件ピクトグラム等の原状回復義務
①Yらは有効期間の満了による有効期間内に作成した本件ピクトグラム等についての原状回復義務を負うか
②Xは、Yらに対し、板倉デザイン研究所から本件各使用許諾家役の許諾者たる地位を承継したとして同契約上の権利を主張しうるか

(2) 本件各使用許諾契約の有効期間満了後に作成された本件ピクトグラムの複製権侵害
(3) 前記争点(1)の原状回復義務及び前記争点(2)の著作権に基づく本件ピクトグラムの抹消・消除の必要性(使用継続のおそれ)
(4) 前記争点(1)の原状回復義務違反及び前記争点(2)の著作権侵害の不法行為に基づくXの損害額
(5) Yらは、本件冊子の頒布及びPDFファイルのホームページへの掲載を行ったことによる、本件ピクトグラムの複製権及び公衆送信権侵害の不法行為責任を負うか
①本件ピクトグラムの著作物性

(6) Y1は、Xによる本件ピクトグラムの一部修正について報酬支払義務を負うか
(7) Y1は、別紙4案内図を作成することによって、本件地図デザインについての複製権又は本案権侵害として不法行為責任を負うか 
 
<規定>
民法 第613条(転貸の効果)
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
2 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
 
<判断>
●争点(1)①について
◎Y2の義務 
本件各使用許諾契約には、有効期間満了後の被告らの義務について明確な規定はない。
but
本件各使用許諾契約において、Y2に認められた本件ピクトグラム等の使用権は、主として複製後も継続して展示される案内表示が対象とされており
複製後もY1において使用し続ける形態であることを前提としている。

本件各使用許諾契約は、このような使用形態を前提に、有効期間を設定して契約当事者間の折合いをつけたもの。
有効期間を新たな複製ができる期間と解したのでは、その趣旨が損なわれる。

「使用」の通常の意義からしても「使用権の有効期間」とは、本件ピクトグラム等を複製することだけでなく、複製した案内表示等の展示を継続することの有効期間を定めたものと解するのが自然。

本件各許諾契約において、有効期間が満了した以上、少なくとも案内表示でのピクトグラム等の使用を中止し、原状に服するという合意までが含まれていると認めるのが相当。

原状回復義務として、既に複製された本件ピクトグラム等の抹消・消除の義務が生じると解するのが相当。

◎Y1の義務 
本件各使用許諾契約においては、板倉デザイン研究所が、Y2に対し本件ピクトグラム等についての使用を許諾するに当たり、大阪市案内表示ガイドラインに従って実施される大阪市各局の案内表示とそれらを補足する地図等の媒体において、Y1が本件ピクトグラム等を使用することが定められている。

Y1は、板倉デザイン研究所の承諾の下に、Y2の使用権を前提に、本件ピクトグラムなどの一種の再使用許諾を受けているものといえ、
これは、賃貸人の承諾を受けて転貸借がされている状況と同様の状況にある

民法613条の趣旨は、転貸借が適法に行われている場合に、目的物を現実に用益する転借人に対する直接請求権を認めることにより、賃貸人の地位を保護する点にあるが、
再使用許諾関係の場合にも、本件ピクトグラムを現実に使用するのが再被許諾者であるY1である以上、同様の趣旨が妥当する。
本件における本件ピクトグラム等の使用は、案内板等における継続的使用を対象とし、本件各使用許諾契においてY2に原状回復義務が認められる
賃貸借終了後の原状回復義務に類似した関係にある

Y1においては、本件各使用許諾契約の当事者ではないものの、民法613条を類推適用し、本件ピクトグラム等の抹消・消除義務を直接負う。

●争点(1)② 
◎「統合」の意義
Xが、平成19年6月1日に板倉デザイン研究所の事業を統合する際に、・・著作権全てを板倉デザイン研究所から包括的に譲り受ける合意をし、その後同年9月に板倉デザイン研究所が解散清算
当事者間において本件ピクトグラム等を含む著作権が譲渡
本件各使用許諾契約上の地位も譲渡
 
◎地位の譲渡の対抗 
本件各使用許諾契約における許諾者の義務は、許諾者からの権利不行使を主とするものであり、本件ピクトグラムの著作権者が誰であるかによって履行方法が特に変わるものではない
⇒本件ピクトグラムの著作権の譲渡と共に、被許諾者たるY2の承諾なくして本件各使用許諾契約の許諾者たる地位が有効に移転されたと認めるのが相当。
(賃貸人たる地位の移転についてのものであるが、最高裁昭和46.4.23)
but
著作物の使用許諾契約の許諾者たる地位の譲受人が、使用料の請求等、契約に基づく権利を積極的に行使する場合には、これを対抗関係というかは別として、賃貸人たる地位の移転の場合に必要となる権利保護要件としての登記と同様、著作権の登録を備えることが必要
(賃貸人たる地位の移転に関するものであるが、最高裁昭和49.3.19)

Xは、Yらに対し、著作権の登録なくして本件各使用許諾契約上の地位を主張することはできない
 
●争点(5)① 
本件ピクトグラムは、実在する施設をグラフィックデザインの技法で描き、これを、四隅を丸めた四角で囲い、下部に施設名を記載したもの。
本件ピクトグラムは、これが掲載された観光案内図等を見る者に視覚的に対象施設を認識させることを目的に制作され、実際にも相当数の観光案内図等に記載されて実用に供されているもの
いわゆる応用美術の範囲に属するもの

応用美術の著作物性について、
実用性を兼ねた美術的創作物においても、「美術工芸品」は著作物に含むと定められており(著作権法2条2項)、
印刷用書体についても一定の場合には著作物性が肯定(最高裁H12.9.7)

それが実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えている場合には、美術の著作物として保護の対象となると解するのが相当。

ピクトグラムが指し示す対象の形状を使用して、その概念を理解させる記号(サインシンボル)⇒その実用的目的から、客観的に存在する対象施設の概観に依拠した図柄となることは必然。
⇒創作性の幅は限定される。
but
それぞれの施設の特徴を拾い上げどこを強調するのか、
そのためにもどの角度からみた施設を描くのか、
どの程度、どのように簡略化して描くのか、
どこにどのような色を配するか、
等のの美的表現において、実用的機能を離れた創作性の幅は十分に認められる

このような図柄としての美的表現において制作者の思想、個性が表現された結果、それ自体が実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となる得る美的特性を備えている場合には、その著作物性を肯定し得る。

本件ピクトグラムは
その美的表現において、制作者であるP1の個性が表現されており、その結果、実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている
それぞれの本件ピクトグラムは著作物である
 
<解説>
●使用許諾契約の解釈 
本来、原状回復の規定がなければ、その義務を負わないが、契約に明文の規定がなくとも原状回復が含意されているとした。
 
●民法613条の類推適用 
本判決:
①本件における本件ピクトグラム等の使用は、案内板等における継続的使用を対象とし、②本件各使用許諾契約においてY2に原状回復義務が認められている
⇒賃貸借終了後の原状回復義務に類似した関係にある。

大阪地裁H22.3.11:
Qは原告から、本件ソフトウェアの使用許諾を受けたが、許諾の期間が経過した場合、Qにおいて、本件ソフトウェアの使用を中止し、サーバー等から削除する義務がある。
Qは、被告に対し、本件ソフトウェアを本件事業のために使用することを許諾していたと認められるが、Qへの使用許諾が終了した以上、民法613条(本件のような無償再許諾にも準用を認めるのが相当であると考えられる)の趣旨を類推し、被告においても、本件ソフトウェアの使用中止とサーバ等からの削除義務が発生していると解することができる。

反対説
民法613条の趣旨を簡単に及ぼしてよいものか疑問

①転貸借に係る原状回復義務は法定の典型的な義務であるのに対して、(再)使用許諾によって定められた義務は非典型的なもの
②著作権の範囲外の義務を課す点で、転貸借において問題となる、目的物自体の原状回復義務とは異なるものと評価できる。
 
●地位の譲渡の対抗 
著作権法 第77条(著作権の登録)
次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない
一 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限
二 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限

本判決:
賃貸人の地位の移転に関する最高裁判断を参照に解決をはかっている。

使用許諾契約は誰が行っても履行方法が特に変わるものではない⇒許諾者の地位の移転に被許諾者の承諾は不要。
その有効に移転した地位に基づいて、許諾者たる地位に立つ者が契約上の権利を積極的に行使する場合には、権利保護要件としての登記と同様、著作権の登録の具備を必要とする

判例時報2348

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月28日 (木)

契約書記載の賃料額と実際に支払われている賃料額の齟齬が現況報告書に不記載⇒買受人の国賠請求(肯定)

大阪高裁H29.1.27      
 
<事案>
本件土地及びその地上建物である本件建物を担保不動産競売手続で買い受けたXが、収益物件である本件建物について、現況調査報告書に誤った賃料額が記載されていたため損害を被ったと主張
①執行官の現況調査の過誤
②その過誤を是正すべき執行裁判所の義務違反
③売却許可決定に対するXの執行抗告を棄却した抗告裁判所の義務違反
を理由に、
Y(国)に対し7785万1360円及び遅延損害金の支払を求める国賠請求事件。 
 
<判断>
執行官の現況調査の過誤を認め、Xの請求を一部認容

実際支払賃料額につき、本件現況調査報告書の記載内容と本件不動産の実際の状況との間に看過し難い齟齬が生じたというべき。
①本件執行官は、本件現況調査において、調査結果の十分な評価、検討をし、本件不動産の実際支払賃料額について調査すべき義務があったのにこれを怠った。
②その結果、本件不動産の実際支支払賃料額につき、本件現況調査報告書の記載内容と本件不動産の実際の状況との間に看過し難い齟齬が生じた

本件執行官は、本件現況調査を行うに当たり、目的不動産の現況をできる限り正確に調査すべき注意義務に違反した。

損害については、民法248条を適用。

判例時報2348

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月26日 (火)

裁判員への声かけ事件

福岡地裁H29.1.6      
 
<規定>
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 第107条(裁判員等に対する威迫罪)
被告事件に関し、当該被告事件の審判に係る職務を行う裁判員若しくは補充裁判員若しくはこれらの職にあった者又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 第106条(裁判員等に対する請託罪等)
法令の定める手続により行う場合を除き、裁判員又は補充裁判員に対し、その職務に関し、請託をした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
 
■①判決
Vが裁判員A及びBに発した言葉は、「あんた裁判員やろ」「俺、同級生なんよ」「Xの同級生なんよ」「あんたらの顔は覚えとるけね」「Xは同級生だから、よろしくね」

前提事実⇒Vは、自らの行為によって裁判員らがC会親交者に顔を覚えられたなどの不安や困惑を覚えることは認識していた(=威迫の故意あり)。
Vの「よろしくね」との発言の趣旨が、裁判員らに対し、Xに有利な判断をしてほしいという依頼の意味であり、この意味を分かって発言に及んだ(=請託の故意あり)

威迫罪及び請託罪の成立を肯定

懲役1年、3年間執行猶予

■②判決
Wが裁判員A及びBに発した言葉についての認定:
「明後日も来るんやろ」「裁判員も大変やね」
判決や刑の重さは裁判員の意見で決まるわけではないという趣旨の文言や、
もうある程度は裁判の結果あるいは判決は決まっているんだろうという趣旨の文言
「いろいろ言っても変わらんもんね」
 
●威迫罪の認定
「威迫の行為」(裁判員法107条1項)とは、相手に対して言葉・動作をもって気勢を示し、不安・困惑を生じさせる行為を言う。

言葉の内容のほか、声かけがなされた経緯やWの風貌を総合
気勢を示す行為に当たる。
威迫の故意も認定。
 
●請託罪の認定 
「請託」(裁判員法106条1項)とは、裁判員又は補充裁判員としての職務に関する事項についての依頼をいい、黙示のものも含む

本件では否定。
⇒威迫罪のみ。

懲役9月、3年間執行猶予。

判例時報2348

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月24日 (日)

再審請求において、捜査機関の保管する全証拠の一覧表を弁護人に交付するよう決定書をもって命じた事例

大阪地裁H27.1.14      
 
<事案>
再審請求審において、裁判所が、書面による決定という形で、検察官に対して、弁護人への証拠の一覧表の交付を命じた事例。 
 
<解説>
●本決定は、弁護人が、検察官に対し、本件捜査の開始から再審請求後の補充捜査までに収集された全証拠の開示を求めたのに対してなされたもの。 
証拠自体の開示は、具体的に特定していないことを理由に認めなかったが、
全証拠の一覧表の交付を認めた

一覧表の交付についての必要性、相当性
←「弁護人が開示を求める証拠と具体的に特定するすることは、相当な困難が伴い、ひいては、本件再審請求事件の迅速な判断が阻害されるおそれがある」
 
●刑訴法は、再審の審理の仕方についてはほとんど手続規定をおいておらず、再審請求審が職権主義的審理構造
⇒審理の進め方は裁判所の合理的な裁量による
⇒証拠開示をどのように考えるかは、裁判所によって相当取り扱いが異なる。 
裁判所が新証拠の発見に資するべく、訴訟指揮権に基づき証拠開示を命じることは現行法上許容されないという考えも根強い。

証拠開示を命じた昭和44年決定や、刑訴法の証拠開示の規定は、通常第一審の手続に関するもので、再審請求手続には適用がなく、
請求人において再審理由を基礎付ける証拠とを提出することが必要とされている。

判例時報2347

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月22日 (金)

長野先生の不法行為責任内容論序説

■規範の内容
①権利回復規範:
侵害された権利の完全性を回復するために支出された費用⇒必要な限度で賠償されなければならない。

②価値補償規範:
侵害された権利が保障する権限ないし地位またはそこから得られたであろう利益が損なわれた場合⇒それらの価値が賠償されなければならない。

③権利保全規範:
権利の侵害を回避するために支出された費用⇒①と同様に賠償されなければならない

④利益保全規範:
侵害された権利が保障する権限ないし地位から得られたであろう利益の喪失を回避するために支出された費用⇒①と同様に賠償されなければならない

■規範の分類1
①権利回復規範、③権利保全規範
~権利の完全性、すなわち権利の保障内容の中核をなす「権限」または「地位」に向かられたもの

②価値補償j規範、④利益保全規範
~権利の保障内容をなす「利益」、すなわち中核たる「権限」または「地位」に基づき得られたであろう「利益」に向けられたもの

■規範の分類2
①権利回復規範、③権利保全規範、④利益保全規範
~いずれも不法行為に対する被害者の対抗措置が問題となっている⇒「対抗措置規範」

■対抗措置規範の賠償規準

①一定の費用の支出(の予定)が主張・立証されたことを前提として、
②問題となる費用の「必要性」が問題となる。
そこでの目的(権利の回復・保全、「利益」の保全)のために、被害者の立場にある合理人であればどのように行動したかが基準となる。
   
③被害者が自ら対抗措置⇒それに対する報酬を与えるという観点から一定の賠償が認められるべき。

■価値補償規範の賠償規準

①「権限」または「地位」自体の価値、あるいは
②それに基づき得られる「利益」の価値を算定。
   
①については、収益価値による算定が原則。
市場価値が存在する場合(所有権を初め、財産権の多くがそう)には、それが通常の利用の価値を表す。
   
②の「利益」については、
具体的な金額の形で生じる場合にはそれが基準となる。
そうでない場合にも、場合によっては具体的な金額を得る可能性があったならば、それを基に抽象的な利益の価値を算定すべき。
but
これについては、加害者の利益あるいは社会的負担軽減の観点から一定の閾値を設け、最低限の要保護性に達しないものについては賠償的確性を否定する可能性を留保しておくことが考えられる。

■規範間の適用関係 
   
これらの規範の適用が、目的が共通するため両立しない場合
⇒いずれが適用されるかは、原則として被害者の選択による。
but
他に適用可能な規範がある場合、被害者の選択した規範が排除され、当該他の規範が指示される場合がある。
その判断は、当該指示により得られる加害者の財産的利益または経済的効率性との衡量という、ハンドの定式と同様の判断枠組による。

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月20日 (水)

化学物質過敏症に罹患している旨の説明を受けたのに事前通告なしで白アリ駆除の薬剤散布⇒損害賠償請求(肯定)

佐賀地裁H28.10.18      
 
<事案>
原告が化学物質過敏症に罹患している旨説明⇒同人に対して事前通告せず原告の隣家においてシロアリ駆除の薬剤を散布⇒損害賠償請求。
 
<判断>
①原告が被告従業員に対して自身が化学物質過敏症に罹患しており、実際に被告の実施した外壁塗装作業時に体調が悪化したと告げていたこと等の薬剤散布に至るまでの原告と被告従業員との間の交渉経過
②散布時には薬剤に曝露しないように注意するとともに、薬剤が飛散しないように注意すべきとされ、仕様によって体調に異常を感じた場合には使用を中止し、医師の診断を受けることとされている等の本件薬剤の特性(危険性)
③被告従業員が薬剤を散布するに際して事前通告することが困難であったとは認められないこと等

被告従業員は、本件薬剤散布をするに際しては、原告に事前に通告すべき義務を負っていたと解するのが相当であり、事前の通告をしないで薬剤を散布した同人の行為には過失がある

損害額:
治療費、慰謝料(20万円)及び弁護士費用の限度でこれをみとめた。

判例時報2347

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月19日 (火)

杭工事において打設した杭が支持層に到達していない⇒元請け業者から下請業者、孫請業者に対する損害賠償請求(肯定)

松江地裁H28.3.31      
 
<事案>
杭工事において打設した杭が支持層に到達していないとして、
元請業者から下請業者、孫請業者に対する損害賠償請求。 
Xは、A市から幼稚園の建築工事を受注、同工事のうち杭工事をY1に発注し、Y1は、Y2に対し本件杭工事の現場管理を任せる契約を締結。
平成22年12月に本件建築工事は完了
平成23年3月より、不同沈下確認⇒Xは、同24年5月以降、不同沈下の是正工事を行った。

Xは、
Y1に対しては、
本件杭工事には打設した杭が支持層に到達していないという瑕疵がある⇒瑕疵担保責任に基づく修補に代わる損害賠償請求(民法634条2項)
Y2に対しては
現場管理における過失によって杭の支持層未到達、不同沈下を発生させたとして不法行為(民法709条)に基づき、
是正工事費等5置く1300万円余の支払を請求。
 
<規定>
民法 第634条(請負人の担保責任)
仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。
 
<判断> 
●本件杭工事に瑕疵があるか? 
本件杭工事契約が、幼稚園の建物の荷重を支えるために締結されたものであり、仮に打設された杭が現実の支持層に到達していなければ建物が傾く危険を生じることになる。
Y1の打設した杭が現実の支持層に到達していることことが、本件杭工事契約の仕事として備えているべき最も重要かつ基本的な性状であることは社会通念に照らし明らか

①本件杭工事契約においては、Xが、杭が現実の支持層に根入れされない場合があることを特に了承したといった特段の事情のない限り、打設された杭が現実の支持層まで根入れすることを合意していたと認めるのが相当。
②本件では、Y1の打設した杭は、現実の支持層まで根入れされておらず、しかも、X・Y1間で特段の合意はない。
本件杭工事には瑕疵がある
 
●Xの指示による免責の有無
ここにいう「指示」とは「工事に瑕疵があるにもかかわらず請負人の瑕疵担保責任を免れさせるもの」
発注者等による指示は請負人に対して拘束性を持つものでなければならない

本件杭工事で採用された杭工法の性質に照らし、本件杭伏図の記載通りの杭長による施工をY1に義務付けるものではない
Xの指示による免責を否定
 
●Y2の過失の有無ないしは不法行為責任の存否 
XとY2との間には契約関係がない⇒不法行為責任の有無が問題。

試験杭が現実の支持層に到達したか否かを判定するに当たっては、試験杭の施行によって得られた硬さ指標の変化が、L型地盤を前提とする硬さの変化と合致することを慎重に見定めたうえで判定を行うべきであって、かかる変化が十分に認められない場合には、未だ同杭が現実の支持層に到達していない可能性を疑わなければならなかったというべき。
施工データ等に基づき、当該可能性を疑うべき事情があった⇒Y2の過失を肯定
⇒Xの請求を全部認容
 
<解説>
本判決は、元請と孫請との関係で、直接の契約関係に立たない場合でも不法行為責任が成立する限り、元請は孫請に対し責任を追及できることを判示。 

判例時報2347

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月18日 (月)

マンションの駐車場の使用料増額の決議の効力等

東京地裁H28.9.15      
 
<事案>
マンションの管理組合であるXが、同マンションの区分所有者で、Xの組合員であるYらのうち
第1事件では、Y1及びY3に対し
第2事件では、Y2に対し
Xの臨時総会における同マンションに設置されている本件駐車場の専用使用料を増額する旨の本件増額決議が有効であることの確認
その増額後の使用料のうちYら各自の未払分及びこれに対するXの管理規約所定の遅延損害金の支払
を求める事案。
 
<争点>
本件増額決議の効力の有無
これを有効とした場合にYらが負う債務額 
 
<規定>
区分所有法 第31条(規約の設定、変更及び廃止)
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない
 
<判断>
●本件増額決議の効力の有無
本件駐車場の各専有部分についてのYらの権利:
区分所有者全員の共有に属するマンション敷地を排他的に使用することができる債権的権利。

Xとその組合員であるYら専用使用権者との関係:
法の規定の下で規約及び集会決議による団体的規制に服し、
管理組合は法の定める手続要件に従い、
規約又は集会決議をもって、
専用使用権者の承諾を得ることなく使用料を増額することができる

当該区分所有関係における諸事情を総合的に考慮して、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、
専用使用権者は使用料の増額を受忍すべき。

このような場合は使用料の増額に関する規約の設定、変更等は専用使用権者の権利に「特別の影響」(区分所有法31条1項後段)を及ぼすものではなく、同項所定の区分所有者の承諾は必要ない

本件増額決議に係る増額については、必要性及び合理性があり、かつ、
増額されたい使用料も社会通念上相当な額

同決議はYらの承諾を要することなく有効であり、平成24年1月分以降はこれに沿った専用使用料増額の効力が発生。

●Yらの供託額を控除した残額の支払義務を求めたほか、
管理規約の規定に基づく弁護士費用としてXが支出した21万6000円の支払義務を認めた。 
 
<解説>
一般に、給付請求が可能な請求権については、給付の訴えを提起すれば足り、そのほかに、同請求権の確認を求める利益はないとされている。
 
本件増額決議の確認によって、差額分が直ちに確認されるわけではない

増額決議の有効の認を求める利益のほかに、その有効を前提として発生する差額分の支払を求める利益が肯定されてよい。 

本件増額決議の有効を確認する判決は、民事訴訟一般の確認判決
⇒対世的効力が認められるわけではなく、Yら以外の組合員で本件増額決議の効力を争う者がいると場合にも、その者の本件増額決議の無効主張を封ずるために、Yらとの間で本件増額決議の確認を求める利益が肯定されるということではない。

判例時報2347

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月16日 (土)

第一取引終了時の残元金に現実の交付額を加算して第2取引の開始時の金銭消費貸借契約が成立したことを前提に計算

東京地裁H28.3.10      
 
<事案>
貸金業者X⇒Yに対して貸付け残元利金の支払等を求める。
Y⇒Xに対して不当利得として過払金の返還等を求める。 
 
<解説>
第一取引の残元金相当額を第2取引の貸付元金に加える、いわゆる「借換え」がされている場合と同様に解し得る
⇒本判決も、これを前提に、第2取引の貸付元金を(約定の440万円ではなく)350万1921円と認め、以後の貸付と返済に基づく引き直し計算⇒第2取引終了時の過払金の発生を認めている。

第1取引の終了時の残元金に現実の交付額を加算して第2取引の開始時の金銭消費貸借契約が成立したことを前提に計算

第1取引において過払金の発生が認められている場合:
同過払金を第2取引の貸付元金の弁済に充当し得るか否かは、第1取引と第2取引とが一連の取引として当事者間委、これまでの判例にいう、いわゆる「充当合意」が認められるのか否かによって結論が異なる。

判例時報2347

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月14日 (木)

銀行が、輸入業者の輸入する商品に関して信用状を発行し、商品につき譲渡担保権の設定を受けた場合の占有改定による引渡し

最高裁H29.5.10      
 
<事案>
輸入業者であるYから依頼を受けてその輸入商品に関する信用状を発行し、同輸入商品につき譲渡担保権の設定を受けた銀行X
Yにつき再生手続開始の決定⇒前記譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、Yが第三者に転売した同輸入商品の売買代金債権の差押えを申し立てた。 
Y:Xは前記譲渡担保権について対抗要件を具備していないから物上代位権の行使は許されないと主張。
 
<判断>
銀行であるXが、輸入業者であるYの輸入する商品に関して信用状を発行し、これによってYが負担する償還債務等に係る債権の担保として当該商品につき譲渡担保件の設定を受けた場合において、
次の①及び②の事情の下では、Yが当該商品を直接占有したことがなくても、Xは、Yから占有改定の方法により当該商品の引渡しを受けたものといえる。 
①XとYとの間においては、輸入業者から委託を受けた海貨業者によって輸入商品の受領等が行われ、輸入業者が目的物を直接専有することなく転売を行うことが一般的であったという輸入取引の実情の下、
前記譲渡担保権の設定に当たり、
XがYに対し輸入商品の貸渡しを行ってその受領等の権限を与える旨の合意がされていた。
②海貨業者は、金融機関が譲渡担保権者として当該商品の引渡しを占有改定の方法による受けることとされていることを当然の前提として、Yから当該商品の受領品の委託を受け、当該商品を受領するなどしていた。
 
<解説> 

最高裁H11.5.17:
動産譲渡担保権に基づく物上代位権の行使について、一定の事実関係の下においてこれを肯定。
but
同決定の事案では、譲渡担保権者による対抗要件の具備の要否ないし有無は、争点とされておらず、判断の対象とされなかった。 

最高裁H22.6.4:
再生債務者財産についての所有権留保権者による別除権の行使が問題となった事案において、別除権の行使のためには、一般債権者との衡平を図るなどの趣旨から、原則として再生手続開始時点で当該特定の担保権につき登記、登録等を具備している必要がある。

動産譲渡担保権者についても、別除権者として権利を行使するためには譲渡担保物につき引渡しを受けている必要がある。
 

占有改定の意思表示は、占有代理関係を発生させる法律関係があれば黙示的に表示されたものといえ(大判大4.9.29)、
動産譲渡担保権設定契約後、債務者が引き続き目的物を占有するときは、債権者は、契約成立と同時に占有の改定により引渡しを受けたものとして、その物の占有権を取得する(最高裁昭和30.6.2)。 
 

民法 第183条(占有改定)
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

民法 第181条(代理占有)
占有権は、代理人によって取得することができる

民法 第184条(指図による占有移転)
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
 
●間接占有者からの占有改定の可否 
占有権は代理占有によっても取得できる(民法181条)⇒民法183条がいう「占有物」が直接占有物に限定されているとは当然には解されない。
民法184条は、本人が代理人によって目的物を専有する場合に、代理人に対する指図によって第三者に引渡しをすることができる旨を規定。
指図による占有移転は、本人と代理人との間の返還請求権(代理占有関係)を第三者と代理人との間に移転させ、これによって本人が間接占有を失い、代わりに第三者が間接占有を取得するもの。
but
本件のような場合に、同条の方法によって占有を引き渡すことができることは当然であるとしても、
本人である譲渡担保権設定者が占有代理関係から抜けることが想定されておらず、本人と代理人(直接占有者)との間の占有代理関係を維持したまま、本人と譲渡担保権者との間に重畳的に新たな占有代理関係を生じさせ、譲渡担保権者に間接占有を取得させようとする場合も、同条によらなければならないと解する必要はない。

一般的に、AからB、BからCへの占有物の現実の引渡しがされ、各当事者間に重畳的占有代理関係が成立した場合には、Cが所持していても、Aは間接占有を保持すると解されている。

Bの代理人であるCが現実の所持を取得し、BとAとの間で占有改定の合意が成立した場合であっても、前記現実の引渡しがされた場合の同様の重畳的な代理占有関係が成立したと評価することができるのであれば、その成立過程の違いをもってAによる占有の取得を否定すべき理由はない

判例時報2347

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月13日 (水)

共同不法行為の考え方(建設アスベストの事案)

札幌地裁H29.2.14      
 
<規定>
民法 第719条(共同不法行為者の責任)
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
 
<事案>
いわゆる建設アスベストの事案
 
<719条1項前段>
●本判決:
民法719条1項前段の規定は、
複数人による個々の加害行為と被害者の被った損害の全部との間に、それぞれ独自に相当因果関係がある場合(加害行為と損害との間に事実的因果関係があり、かつ、当該損害が不法行為に基づく損害賠償の範囲に含まれる場合)において、
当該複数人による個々の加害行為が同項前段にいう共同の不法行為に該当するとき(いわゆる客観的関連共同性が認められるとき)は、
当該複数人による個々の加害行為が単純に競合したにすぎないときとは異なり、
当該複数人による個々の加害行為の当該損害に対する寄与の割合に応じた減責の抗弁を許さず、当該複数人に対して当該損害の全部を連帯して賠償する責任を負わせる趣旨。 

●現在の多数説:
複数人による個々の加害行為と被害者の被った損害の全部との間にそれぞれ独自に相当因果関係があることを要しない。
ex.
2人のうち1人(A)による加害行為の損害に対する寄与の割合が6割で、もう1人による加害行為の損害に対する寄与の割合が4割

Aによる加害行為は損害の一部(6割)との間でのみ相当因果関係があるにすぎず、Bによる加害行為も損害の一部(4割)との間でのみ相当因果関係があるにすぎない。

①被害者が民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求をする場合には、Aに対しては損害の一部(6割)のみ、Bに対しても損害の一部(4割)のみの賠償請求をすることができるにすぎない。
but
②被害者が民法719条1項前段の共同不法行為に基づく損害賠償請求をする場合には、A及びBによる個々の加害行為が同項前段にいう共同の不法行為に該当する(いわゆる関連共同性が認められる)限り、
A及びBに対して損害の全部(A及びBによる共同の加害行為と相当因果関係のある損害)の賠償請求をすることができる。

●判例:
Aによる加害行為の損害に対する寄与の割合が6割で、Bによる加害行為の損害に対する寄与の割合が4割である場合には、A及びBによる個々の加害行為と損害の全部との間にそれぞれ独自に相当因果関係があることを前提としており、
前記事例において
①被害者が民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求をする場合には、原則として、Aに対しても、Bに対しても、損害の全部(A及びBによる個々の加害行為とそれぞれ独自に相当因果関係のある損害)の賠償請求をすることができるが、

その例外として、
A及びBの前記寄与の割合に応じた減責の抗弁が認められる余地がある

but
②被害者が民法719条1項前段の共同不法行為に基づく損害賠償を請求する場合、
A及びBによる個々の加害行為が同項前段にいう共同の不法行為に該当する(いわゆる客観的関連共同性が認められる)限り
前記減責の抗弁は排斥され、
原則のとおり、A及びBに対して損害の全部(A及びBによる個々の加害行為とそれぞれ独自に相当因果関係のある)の賠償請求をすることができる。

民法709条とは別に719条を置いている意味がある。
 
<719条1項後段> 
●本判決:
民法719条1項後段の規定は、
複数人による個々の加害行為のうちのいずれかの者による行為(1人による行為である必要はない。)と被害者の被った損害の全部との間に相当因果関係があり、かつ、
当該複数人以外の者による加害行為はないか、又は当該複数人以外の者による加害行為と当該損害との間には相当因果関係がない場合において、
当該複数人のうちのいずれの者による加害行為と当該損害との間に相当因果関係があるのかが不明であるときは、
当該複数人による個々の加害行為と当該損害との間にそれぞれ独自に相当因果関係があるものと推定し、
当該複数人がそれぞれ自身による加害行為と当該損害との間には相当因果関係がないことを立証しない限り、
当該複数人に対して当該損害の全部を連帯して賠償する責任を負わせる趣旨の規定。
ex.
Aによる加害行為の損害に対する寄与の割合が6割、
Bによる加害行為の損害に対する寄与の割合が4割、
Cによる加害行為と損害の間には相当因果関係がない(ただし、Cの行為も加害行為には当たる。)場合で
被害者がAとCのみを共同行為者として民法719条後段に基づく損害賠償請求

前記説示の各要件のうち
①複数人(A及びC)による個々の加害行為のうちのいずれかの者(A)による行為と被害者の被った損害の全部との間に相当因果関係があるという要件は満たすが
②当該複数人(A及びC)以外の者(B)による加害行為はないか、又は当該複数人以外の者による加害行為と当該損害との間には相当因果関係がないとの要件は満たさない。

Aによる加害行為の損害に対する寄与の割合が6割
Bによる加害行為の損害に対する寄与の割合が4割
Cによる加害行為と損害との間には相当因果関係なし
Dによる行為は加害行為すらなし
の場合で、
4人全員を共同行為者として民法719条1項後段に基づく損害賠償請求

ABCについては、相当因果関係がないこと(抗弁)を主張立証しない限り、損害の全部を賠償する責任を負う
Dは、自身による加害行為がないことを主張して請求原因を否認すれば足りる。

判例時報2347

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月 7日 (木)

楽曲の無断配信と、権利者からの許諾の有無を確認すべき条理上の注意義務・損害認定

知財高裁H28.11.2      
 
<事案>
X:本件原盤についてのレコード製作者の著作隣接権(複製権、貸与権、譲渡権及び送信可能化権)及び本件楽曲についての実演家の著作隣接権(送信可能化権)を有する。 
Y:Xから委託を受けたとするZとの再委託契約に基づき、本件原盤から複製された本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信を行ったが、実際にはZは許諾を得ていなかった

Xが、Yに対し、以下の理由により、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求権及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。
①本件原盤から複製された本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信により、Xが有する本件原盤についてのレコード製作者の著作隣接権(複製権、貸与権、譲渡権及び送信可能化権)及び本件楽曲についての実演家の著作隣接権(送信可能化権)を侵害したことを理由とする損害賠償金(著作権法114条2項)
②本件CDを廃盤にして、Xの本件原盤、ジャケットを含む本件CD及びポスター等の所有権を侵害したことを理由とする損害賠償金
③前記①②に関する弁護士相談料に係る損害賠償金
 
<規定>
著作権法 第114条の5(相当な損害額の認定)
著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる
 
<判断>
Yの控訴を棄却するとともに、Xの附帯控訴に基づき原判決が認定した損害額を増額変更し、Xのその余の請求をいずれも棄却。 

本件再委託契約に際してZが作成した本件企画書の記載から、Yは、本件再委託契約を締結した頃、Zが本件原盤について著作権及び著作隣接権を有しないことを認識していた
②Yによる本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信は、いずれも著作権者又は著作隣接権者の許諾がない限り著作権又は著作隣接権を侵害する行為
Yは、国内最大手の衛星一般放送事業者であるのに対し、Zは、資本金400万円の比較的小規模な会社であり、本件再委託契約締結当時、YとZとの取引実績はまだそれほど蓄積されていなかった
④Yは、本件原盤に関し、本件企画書に原盤会社として明記されているXとZとの利用許諾関係を確認することができ、同確認をすれば、本件のCDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信についてのXの許諾がないkとを明確に認識し、以後、前記販売及び配信をしないことによって、Xが有する著作隣接権の侵害を回避することができた

Yは、本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信に当たり、Xの許諾の有無を確認すべき条理上の注意義務を負う
but
Yは、本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信に当たってXの許諾の有無を確認しておらず、前記条理上の注意義務に違反して、Zが本件岩盤を複製して制作した本件CDをレンタル事業者に販売し、また、インターネット配信事業者を通じて本件楽曲を配信。

Yは、Xの許諾なく前記複製、販売及び配信を行ったことにつき、少なくとも過失がある

Yは、Zらと共に、Xのレコード製作者としての複製権、譲渡権、貸与権及び送信可能化件並びに実演家としての送信可能化権を侵害し、共同不法行為責任を負う

配信1回当たり控訴人が受領した金額の平均はおおむね146円であり、著作権法114条の5により、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、事実審の口頭弁論終結日までの本件楽曲の無断配信の回数は400回と認められる
⇒本件楽曲の無断配信に係る損害は、両者を乗じた5万8400円になる。
 
<解説>
著作隣接権が侵害された場合、著作権者等は、損害賠償を請求することができるが(民法709条)、損害賠償請求の要件として、故意又は過失が必要。

過失の推定規定を有する特許法等とは異なり(特許法103条)、著作権法には、そのような規定がない
⇒侵害者の故意又は過失を主張立証する必要がある。 

本判決は、許諾の有無を確認しなかったという不作為についての注意義務違反を認めたが、不作為が不法行為を構成するには、その前提としての作為義務の存在が不可欠

作為義務の根拠としては、法令の規定、契約のほか、条理が挙げられ、条理に基づく不作為による過失責任を認めた判例:

最高裁H13.3.2:
カラオケ装置のリース業者に、リース契約の相手方が著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上注意義務を負う。
本判決は、同最高裁判決が示した5つの要素(①カラオケ装置の危険性、②被害法益の重大性、③リース業者の社会的地位、④予見可能性、⑤結果回避可能性)等を総合的に考慮して、条理上の義務違反を肯定。

判例時報2346

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月 5日 (火)

介護施設利用者の転倒による頭部負傷事故と事業者の損害賠償責任(肯定)

大阪地裁H29.2.2      
 
<事案>
Aは、Y施設で、介護事業を利用⇒深夜にトイレに行こうとして転倒して頭部を負傷し、急性硬膜下血腫を発症、その後、それを原因として呼吸不全により死亡。 
Aの相続人であるXらは、前記事故は、Aが以前に転倒したことがったにもかかわらず、Y施設の職員が転倒防止措置を実施せず、Aに対する安全配慮義務を怠った過失により発生⇒Yに対し、債務不履行又は使用者責任に基づき損害賠償を請求。
 
<争点>
①Y施設の職員は、Aが再三の注意を守らずに1人でトイレに行こうとすることを予見することができたか
②Yは、Aの転倒を防止する措置として離床センサーを設置することを義務付けられていたか 
 
<判断>   
Yは、Y施設の利用契約に基づき、Aに対し、その生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)がある
 
●予見可能性について 
①Aは、パーキンソン症候群等の影響で、歩行の際はふらつきによる転倒の危険が高い状態にあった
②Aは、本件事故のわずか19日前にも本件施設において1人でトイレに行こうとして転倒する事故を起こしていた
③Aは本件施設の利用当初から1人でトイレに行こうとしており、Y施設の職員からはナースコールで職員を呼ぶように注意をされていたにもかかわらず、それを聞き入れることなく、1人でトイレに行っていた

Yの施設の職員は、Aに対して注意をしていたとしても、Aがそれに従うことなく1人でトイレに行こうとすること、その際に転倒する危険が高いことを予見することができた
 
●結果回避義務について 
①Yが高齢者向けの介護事業を営む事業者
②既にY施設で離床センサーを導入済みであった
③転倒防止の予防のために離床センサーを設置することについての当時の知見

Yは、本件事故の当時、自らナースコールを押そうとしない利用者に対して離床センサーを設置することが転倒予防に効果があることについて知見を有することを期待することが相当。

①Aは自らナースコールを押そうとしない利用者であり、離床センサーの設置が転倒予防のために望ましい者
②Y施設で離床センサーは利用されていない状態であってその設置に特段のコストは必要なく、Y施設の職員は離床センサーを設置すればAが1人でトイレに行こうとすることを察知し、転倒しないように見守り等を行うことができた

離床センサーを設置することが義務付けられていた。

●介護施設には人的物的体制に限界があるとしても、Aには転倒歴がある等の転倒の危険が高い者であったのに、特段の再発防止策を講じることなく、聞き入れてもらえないことが分かっている注意を繰り返していただけで、安全配慮義務を尽くしていたと評価することはできない

判例時報2346

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月 4日 (月)

遺留分減殺請求と代襲相続人の特別受益

福岡高裁H29.5.18      
 
<事案>
被相続人A(平成23年7月死亡)の二女であるXが、B(Aの長女。平成16年2月死亡)及びY1(Bの長男・代襲相続人)に対するAの贈与によって、Xの遺留分が侵害されている⇒Y1及びY2(Bの二男・代襲相続人)に対して遺留分減殺を求めた。 

Aが、
①Bの生前である平成元年12月、Bに対して土地13筆(本件土地1)を、
②平成3年5月、B及びY1に対して土地2筆(本件土地2)の各共有持分2分の1を、
③Bの死亡後である平成16年4月にY1に対して土地3筆(本件土地3)をそれぞれ贈与。
(Bの遺産分割では、Y1がBの遺産の全てを取得し、Y2は代償金のみを取得)

XがY1及びY2に対して遺留分減殺を求めた。
 
<争点>
①被代襲者(B)が生前に被相続人(A)から受けた特別受益が、代襲相続人(Y1、Y2)の特別受益に当たるか?
②推定相続人でない者(Y1)が被相続人(A)から贈与を受けた後に、被代襲者(B)の死亡によって代襲相続人として地位を取得した場合に、当該代襲相続人(Y1)の特別受益に当たるか? 
 
<判断>
●争点①について:
被代襲者についての特別利益は、その後に被代襲者が死亡したことによって代襲相続人となったY1及びY2との関係で特別受益に当たる

特別受益の持戻しや代襲相続は相続人間の公平を図る制度であって、代襲相続人に被代襲者が生存していれば受けることができなかった利益を与える必要はない
②被代襲者に特別利益があればその子等である代襲相続人も利益を享受しているのが通常

●争点②について
相続人でない者が、被相続人から贈与を受けた後に、被代襲者の死亡によって代襲相続人としての地位を取得したとしても、前記贈与が実質的には相続人に対する遺産の前渡しに当たるなどの特段の事情がない限り、特別受益には当たらない

他の共同相続人に被代襲者が生存していれば受けることができなかった利益を与える必要はない
②被相続人が他の共同相続人の子らにも同様の贈与を行っていた場合の不均衡
but
本件では、相続人であるBへの遺産の前渡しとして自宅の敷地である本件土地2を贈与するにあたって、その持分2分の1をBの子のY1名義にしたものにすぎず、実質的にはBへの遺産の前渡しとも評価しうる特段の事情がある

前記贈与はY1の特別受益に当たる

●最後に贈与された本件土地3から遺留分減殺をすべきところ、
Y1が価額弁償を申し出て、XもY1に対して価額弁償金を請求
⇒原判決を取り消し、Y1にXに対する価額弁償金の支払いを命じた。 
 
<解説>
被代襲者が生前に受けた特別受益が、被代襲者の死亡後に代襲相続人となった者の特別受益に当たるか?
A:積極説(通説)
特別受益制度では共同相続人間の公平を重視すべきところ、代襲相続人は被代襲者と実質上同一の地位にあり、被代襲者の特別受益があれば、その直系卑属である代襲相続人も実質的に利益を受けていると考えられる。 

相続人でなかった者が被相続人から贈与を受けた後に、被代襲者の死亡によって代襲相続人としての地位を取得した場合に特別受益に当たるか?

A:消極説(通説)

推定相続人の資格を持たなかった代襲相続人に対する贈与は、相続分の前渡しとはいえない
②他の共同相続人に代襲がいなかった場合以上の利益を与える必要はない

B:積極説も有力
受益者は相続開始時に共同相続人であれば足り、受益の時期にかかわらず持ち戻しの対象とすべき

特別受益は共同相続人間の公平の維持が目的

判例時報2346

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月 1日 (金)

ゴルフ会員権の売買契約について共通の錯誤に陥った事案

大阪高裁H29.4.27      
 
<事案>
Xは、平成27年2月3日、Yから本件各会員権を購入する売買契約を締結。
その後の同年4月23日、Yが作成した退会届をαの運営会社に提出して、本件a会員権の退会手続き⇒同年6月1日、前記運営会社から、Y名義の預金口座に、本件α会員権の預託金6000万円が振り込まれた。
⇒Xは、Yに対し、不当利得返還請求権に基づき、預託金6000万円から未払い会費15万5520円を控除した5984万4480円の支払を求めた。

<Yの主張>
本件各会員権の売買価値について、XとYとが共通して錯誤に陥っていた
⇒Yぬい錯誤の重過失があったとしても、本件各会員権の売買契約の無効を主張できる。 
 
<判断>
共通錯誤の場合には、取引の安全を図る必要はなく、表意者のYの保護を優先してよい⇒民法95条ただし書は適用されず、表意者に重大な過失があっても、錯誤無効を主張することができる。
Xも、本件各会員権ば売買的価値が6000万円以上であるのに、これが430万円を著しく超える価値を有するものではないと認識しており、Yと共通の錯誤に陥っていたと認めるのが相当。

判例時報2346

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2017年11月 | トップページ | 2018年1月 »