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2017年11月16日 (木)

売主の本人確認情報を提供した弁護士に、成りすましを看過したことに過失があるとされた事例

東京地裁H28.11.29      
 
<事案>
不動産を購入して代金を支払い、自己に対する所有権移転登記を経たXが、売主の依頼によって当該不動産の所有権移転登記申請に当たり売主の本人確認情報を提供した弁護士であるYに対し、Yが過失により売主の本人確認の際に提示を受けた住民基本台帳カード等の書類が偽造されたものであることに気付かないまま誤った本人確認情報を提供し、このために、真実の所有者から所有権移転登記抹消登記手続を求められ、当該不動産の所有権を取得することができなくなった⇒不法行為に基づき、当該不動産の売買代金、登記申請費用、不動産の紹介者に対して支払った報酬及び弁護士費用相当額の合計3億2239万円余及びその遅延損害金の支払を求めた。
 
<判断>
不動産登記制度における資格者代理人制度は、直接的には登記義務者の権利を保護するものではあるが、不動産登記制度は取引の安全を保護するもの
当該登記を信頼して法律上の利害関係を有するに至った者も保護の対象に含まれる。 

Yは、誤った本人確認をすることによって、Xが不測の損害を被る可能性があることについて予見可能性を有し得る立場にあった。

①売主であると称する自称PがYに提出した遺産分割協議書には相続開始日と被相続人の死亡時が異なっていること等遺産分割協議の内容を正確に示すものではなく、そのままでは遺産分割協議に基づく登記申請に用いることができないことを容易に気付くことができる内容であったとに、Yは、これらの誤記に関して調査、確認を何ら行っていないも同然であった
②本件売買契約の決裁は、自称Pが、現金で2億4000万円を受け取るという異例の決済方法であり、決済当時78歳の高齢であるはずの自称Pに多額の現金を交付することは著しく安全を欠く行為といわざるをえず、成りすましによるものと疑うべき事情があった

予見可能性があった

本件確認の追加資料として提出された本件遺産分割協議書は、かえって本人確認に当たり疑義を抱かせる体裁のものであり、本件売買契約の履行態様も不自然なもの
提示を受けた本件住基カードが一見して真正なものと判断されるようなものであったとしても、成りすましによって発行を受けたり、偽造によるものであるという可能性を疑うべきであり、自ら(所有者である)Pの自宅に赴くか、Pの自宅に確認文書を送付して回答を求めるなどして、本人確認を行う義務があった。

結果回避義務違反があった

損害について、
支払った売買代金2億4000万円、登記費用309万円余を認め、
過失相殺を4割認め、
その上で弁護士費用を1割認め、
合計1億6044万円余を認容。

判例時報2343

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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