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2017年11月27日 (月)

ネットモール事業者が検索連動型広告にハイパーリンクを施して広告を掲載する行為と商標法違反・不正競争防止法違反(否定)

大阪高裁H29.4.20      
 
<事案> 
出店者が各ウェブページを公開し商品を売買する形態のインターネット上のショッピングモールを運営するYが、インターネット上の検索エンジンに表示される検索連動広告に、「石けん百貨」等の標章とYのサイトへのハイパーリンクを施す方法による広告を表示した行為が、X各商標権の侵害にあたり、また不正競争法2条1項1号の不正競争にあたるとして、X各商標の商標権者であるXが、損害賠償を請求した事案。 
 
Yは、少なくとも平成24年8月から平成26年9月12日までの間、
「石けん百科」「石鹸百貨」をキーワードとして、検索連動型広告に、「石けん 百貨大特集」などの見出しのもとに広告(以下、これらの広告を「本件広告」、標章表示を「本件表示」)を掲載。

本件広告のなかにYのショッピングモールのURLがハイパーリンクとして表示され、クリックすると、Yのサイト内での「石けん百貨」等をキーワードとする検索結果表示画面(「Y検索結果が面」)に移動。
本件広告から移動したY検索結果画面には、少なくとも平成26年6月頃には、出店者である訴外Aが販売する複数の石けん商品が陳列表示。
 
<争点>
①YによるX各商標権侵害の有無
②Yによる不正競争行為の成否 
 
<判断> 
●争点①について
◎ 本件表示を「石けん」等と「百貨」等との間に半角スペースがない場合と、ある場合に区分(それぞれ、「スペースなし表示」「スペースあり表示」)。

◎  Yの行為につき、Y検索結果画面に表示される内容は、Yが制作に関与していない加盟店の出店頁の記述により専ら決せられる
⇒検索連動型広告に「石けん百貨」という具体的な表示が表示され、かつ、そのリンク先のY検索結果画面に石けん商品が陳列表示されたことは、直ちにYの意思に基づくこととはいえないYの行為は商標法2条3項8号の要件を欠き、X商標権を侵害しない

①Yが「商標権の侵害又はその助長を意図して構築したものであるとも、客観的に見て専ら商標権侵害を惹起するものであるとも認めることができない」
②規約で知的財産権侵害を、ガイドラインで隠れ文字の使用を禁止していることなどを指摘⇒本件標章が付されたことを自己の行為として認容していたとは言えない。
③一定のキーワードの取得を制限する管理の必要性につき、そのために必要な出店のページの事前調査は加盟店や取扱商品の膨大さから著しく困難。
④隠れ文字使用の設定ができないシステムが通常の仕様として普及しているとの事情がないこと、加盟店や取扱い商品等の膨大さに照らせば規約違反の常時監視は非現実的⇒それらのことをもってYが隠れ文字使用を包括的に認容していたとはいえない

but
本件広告のリンク先のY検索結果が面にX商標の指定商品である石けん商品の情報が表示された場合、ユーザーから見れば、本件広告とY検索結果画面とが一体となって、検索エンジンで「石けん百貨」をキーワードとして検索したユーザーを、Yサイト内のX商標の指定商品である石けん商品を陳列表示する加盟店のウェブページに誘導サウルための広告であると認識される

Yが当該状態及びこれが商標の出所表示機能を害することにつき具体的に認識するか、又はそれが可能になったといえるに至ったときは、その時点から合理的期間が経過するまでの間にNGワードリストによる管理等を行って、「石けん百貨」との表示を含む検索連動型広告のハイパーリンク先のY検索結果画面において、登録商標である「石けん百貨」の指定商品である石けん商品緒情報が表示されるという状態を解消しない限り、Yは、「石けん百貨」という標章が付されたことについても自らの行為として認容したものとして、商標法2条3項8号所定の要件が充足され、Yについて商標権侵害が成立

本件では、Yは、本件広告の存在を認識するや、直ちにAの出店頁を調査、サーチ非表示とするなど、具体的に認識してから合理的期間が経過するまでに、商標の出所表示機能を害する状態を解消した。

Yと販売業者との間に何らかの意思の連絡があったとは認められない⇒裁判所は共同不法行為の成立を否定
 
●争点②について 
Xのサイトの広告であると誤認混同するおそれがあるとの主張に対し、
Yの名称が使用されており、Yがインターネットショッピングモールとして周知⇒誤認混同のおそれはない。

本件広告のリンク先のY検索結果画面に表示されている商品をXが販売しているとの誤認混同するおそれがあるとの主張に対し、
争点①と同様に、商品等表示を使用したとは認められない⇒不正競争行為に該当しない
 
<規定>
商標法 第25条(商標権の効力)
商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

商標法 第36条(差止請求権)
商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

民法 第709条(不法行為による損害賠償) 
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

商標法 第2条(定義等)
3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
 
<解説>
●商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有し(商標法25条本文)、自己の商標権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の差止めを請求でき(商標法36条1項)、損害賠償を請求できる(民法709条)。
商標の「使用」は、商標法2条3項各号で規定され、同8号は、
「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」を掲げる。

広告等を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為は、平成14年改正により規定され、たとえばホームページ上のバナー広告、自己のホームページの出所を示す広告等が挙げられる。
 
●検索連動広告:インターネット上の検索エンジンにおいて、利用者が検索したキーワードの検索結果表示画面に、関連した広告が表示されるもの。

Aというキーワードを利用者が検索⇒Aに関する検索結果が表示されるが、その検索結果の上部や下部などに、関連する広告が表示。
この広告にはハイパーリンクが設定され、利用者が広告をクリックすると、広告主の設定したウェブサイトに異動。

広告主が、表示対象となる検索結果のキーワードを指定し、表示したい広告の見出しやURL等を登録することにより、設定がされる。
キーワードや広告内容には、商品や役務の内容だけでなく、他者の登録商標も設定できうる⇒商標権侵害の問題が生じうる。 

本件では検索連動型広告の広告内において原告の登録商標が表示され、なおかつハイパーリンク先に当該商標の指定商品が陳列表示⇒商標法2条3項8号にいう行為に該当するか?
 
●検索連動型広告と商標権をめぐる紛争の当事者:
①商標権者・広告主間
②商標権者・検察エンジン運営者間
③商標権者・オンライン市場運営者

本件は③。 

通常の広告主とオンライン市場運営者では広告への関与の度合いが異なる。
本件では、
①広告のハイパーリンク先のYサイト内における商品陳列が面に、いかなる商品が陳列表示されるかも、
②検索連動型広告での表示も、
Yが関与しない加盟店の出店ページの記述に左右される
⇒オンライン市場経営者であるYが侵害主体となりうるかが問題
 
●過去の裁判例として、
原告商品の名称及び原告商標をキーワードとして表示される検索結果の広告スぺースに被告が自社の広告を掲載することが商標権侵害であるかが争われた大阪地裁H19.9;.13:
裁判所は「被告の行為は、商標法2条3項各号に記載された標章の「使用」のいずれの場合にも該当するとは認め難い⇒本件における商標法に基づく原告の主張は失当」
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本件とは事案が違う。 
 
●本控訴審は、オンライン市場運営者による検察連動型広告における標章の使用が、自らの商標の使用(商標法2条3項8号)にあたる場合の基準を示したもの。 
Yのようなオンライン市場において加盟店が第三者の商標権を侵害する商品を陳列表示している場合に、オンライン市場運営者が侵害主体となりうるときの基準を示した知財高裁H24.2.14と比較すると、本控訴審判決はオンライン市場運営者の行為が商標の使用にあたるとしている点に特徴がある。

判例時報2345

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