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2017年11月 2日 (木)

障害者支援施設を運営する社会福祉法人が特別縁故者として認められた事例

名古屋高裁金沢支部H28.11.28      
 
<事案>
被相続人が入所していた障害者支援施設を運営する社会福祉法人が、被相続人の特別縁故者に該当するとして、被相続人の相続財産の分与を求めた⇒原審が申立てを却下⇒即時抗告 
 
<規定>
民法 第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
 
<原審>
抗告人が被相続人に提供した療養看護が、社会福祉事業を目的とする障害者支援施設とその利用者との関係を超える特別なものであったとまではいえない⇒抗告人が民法958条の3第1項の特別縁故者に該当するとは認められない。 
 
<判断>
抗告人が運営する施設の職員は、約35年間にわたって、知的障害及び身体障害を有し、意思疎通が困難であった被相続人との間において地道に信頼関係を築くことに努めた上、
食事、排泄、入浴等の日常的な介助のほか、カラオケ、祭り、買い物等の娯楽に被相続人が参加できるように配慮し、
その身体状況が悪化した平成5年以降は、昼夜を問わず頻発するてんかんの発作に対応したり、
ほぼ寝たきりとなった平成21年以降は、被相続人を温泉付きの施設に転居させて、専用のリフトや特別浴槽を購入してまで介護に当たるとともに、
その死亡後は葬儀や永代供養を行うなどした。

抗告人は、長年にわたり、被相続人が人間としての尊厳を保ち、なるべく快適な暮らしを送ることのできるように献身的な介護を続けていた。
このような療養看護は、社会福祉法人として通常期待されるサービスの程度を超え、近親者の行う世話に匹敵すべきもの(あるいはそれ以上のもの)といって差し支えない
国等からの補助金があることを考慮しても、被相続人の介護の内容やその程度に見合うものではなかったといえるし、
このような低廉な利用料の負担で済んだことが被相続人の資産形成に大きく寄与した。

抗告人は、被相続人の療養看護に努めた者として、民法958条の3第1項にいう特別縁故者に当たる。 
 
<解説>
民法958条の3第1項は、相続人が不存在の場合に、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができると定める。
同条に記載された前二者は例示であり、特別縁故者に当たるか否かは、抽象的な親族関係の遠近ではなく、具体的実質的な縁故の濃淡が判断の基準。
自然人のみならず、法人も特別縁故者になり得る

療養監護に努めた者のうち、正当な報酬を得ていた者について、直ちに特別縁故者の該当性が否定されるものではないが、学説の中には、そのような者については、原則として特別縁故者となり得ず、特別の事情がある場合に限ってこれを肯定すべきであり、特別の事情として、単に金銭的対価に応じた機械的サービスをしただけではなく、肉親に近い愛情の伴っている献身的サービスを必要とするというものもある。

裁判例での肯定例:
・対価としての報酬以上に献身的に被相続人の看護に尽くした付添看護師。
・14年間にわたって被相続人が入所し、療養看護を受けた権利の養護老人ホーム。
・労災事故により身体の大部分が麻痺した被相続人が入所していた施設の運営主体。

本決定は、
①被相続人が施設に入所していた期間、②被相続人の障害の程度及び介護の難易度、③被相続人に対する介護の献身性、④施設に支払われた対価等を総合的に勘案した上で、当該施設を運営する主体に相続財産の分与を認めたもの。

判例時報2342

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