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2017年11月 7日 (火)

仮処分命令が不当であるとして保全異議審で取り消されたが、不法行為は成立しないとされた事例

福島地裁H28.5.24      
 
<事案>
産業廃棄物処理施設の設置許可を受けたXが、Yらの申立てより発令されたXを債務者とする本件処理施設の建設工事の続行差止めをもt目る仮処分が保全異議審で取り消された(保全抗告審もその判断を維持)⇒取り消されるまでの間、Xの事業の停滞を余儀なくされたと主張し
(1)Yらに対し、共同不法行為に基づき、事業停滞期間の借地料及び運用収益等の損害の賠償を求めるとともに、
(2)Yら(Y3を除く)に対し、本件処理施設の設置につき同意をしたにかかわらず、これを撤回し本件仮処分の申立てを行ったことが債務不履行に該当するとして、前記損害の賠償を求める。
 
<争点>
①Yらによる本件仮処分の申し立てが不法行為となるか。
②Yら(Y3を除く。)が本件処理施設の設置につき同意していたにもかかわらず、それを撤回し本件仮処分の申し立てを行ったことが債務不履行となるか。 
 
<判断>

①Yらは、本件処理施設の設置によりため池にに関する水利権が侵害されると主張するところ、本件仮処分の手続では、Xに対する審尋を行った上で、本件処理施設の設置によりため池の集水域は、減少し、利用可能水量が減少すると判断しており、保全異議及び保全抗告審もこの判断自体は是認
②このように発令裁判所と保全異議審及び保全抗告審の判断が異なったのは、ため池の水量が農業用水として不足する場合に備えて、他にも給水方法が確保されているなどの事情を考慮すると、本件処理施設の建設の建設工事によるため池の水量の減少は被告らの受忍限度を超えるものではないないといった、Yの有する他の権利をも考慮すべきか否かの判断が別れたことになる。
③このような判断枠組みに対する考え方には様々なものがあり、現に発令裁判所と異議審によって異なった

Yらにおいて、ため池の水量の減少を危惧し、本件仮処分根異例の申立てを行ったとしても、そのことが不相当であるとは認められない。

④保全手続においてはじめてXが他の取水方法を採ることによって増加した費用を負担するとの申し出を行った
⑤XとYらとの信頼関係が崩れたことが本件仮処分の申立ての契機となったこと等の経緯

Yらにおいて本件仮処分を申し立てるにあたって、相当な理由があったものといえ、Yらの本件仮処分申立てに過失があると認めることはできない

Yら(Y3を除く)が本件処理施設の設置許可に関わる行政手続に当たっておこなった同意は、処分行政庁において周辺住民の同意を求めている趣旨が、産業廃棄物処理業を円滑に実施し得るよう、周辺住民の理解と協力を得ることにより、事業者と周辺住民との間の利害を調整し、もって紛争を未然に防止すること等にある
本件処理施設の設置に当たって紛争が生じることを防止する目的で取得したもの。
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①X代表者は、Y2を含む周辺住民に本件処理施設の設置について同意を求めるに当たって、・・・メリットについて説明しながら、廃棄物の埋立て等によって生じる可能性のあるデメリット等について特に説明しなかった。
X代表者の説明により、Yらに対し、本件処理施設の設置による環境や、所有する水利権に与える影響を的確に判断し得る情報が提供されたものとはいえない

②同意書には水利権の喪失に対する補償や代替措置の記載がない

Yら(Y3を除く。)が本件同意を行うに当たって、本件処理施設の設置に関し、今後一切反対の意思を表明することはない旨の意思を表示したものとは考えられず、まして、本件仮処分の申立てや訴えの提起に関する権利を放棄する趣旨であったとまでは認められない

Yらが、本件仮処分の申し立てを行ったことが、債務不履行を構成するということはできない。


Xの請求をいずれも棄却。 
 
<解説>
仮処分が不当であるとして取り消された場合、これによって仮処分の相手方が受けた損害については、判例(最高裁昭和43.12.24)上、一般の不法行為と同様、仮処分の申立人に故意又は過失があることが必要であるが、
仮処分が異議もしくは上訴手続において取り消され、あるいは本案訴訟において原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した場合には、他に特段の事情がない限り、申請人(申立人)において過失があったものと推認するのが相当である」とされている。
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結論として、「特段の事情」の存在を認める事案も多い。

判例時報2342

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