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2017年11月19日 (日)

なりすまし捜査⇒違法収集証拠排除⇒自白の補強証拠がないとして無罪

鹿児島地裁加治木支部H29.3.24      
 
<事案>
被告人が深夜、他人の自動車内から発泡酒1箱(警官が現行犯逮捕目的で置いたもの)を盗んだとして起訴された事案。 
 
<判断>
おとり捜査が許容される類型として最高裁H16.7.12が示した要件(①犯意があると疑われる者を対象とし、②直接の被害者がいない薬物犯罪等の操作において、通常の捜査方法のみでは犯罪の摘発が困難であること)に沿って検討。

尾行捜査時の被告人の行為等⇒被告人には車上狙いの犯意があると疑われる。
but
その犯罪傾向は強くはなく、本件の捜査により被告人の車上狙いの実行が促進された面が多分にある

捜査の必要性に関して、
車上狙いは証拠収集や犯人検挙が困難な犯罪類型ではなく、また、
本件を具体的に見ても、
①被告人の住居等は特定され、
②行動方法も徒歩又は婦人用自転車であって追跡が容易であり、
③車上狙いは他者から観察しやすい犯罪類型である上、実際にも被告人が他人の自動車を覗き込む様子が観察されており、
④新たな被害申告後に捜査に着手するとしても、その捜査遂行は特に困難ではない。
過去の各車上狙いの被害額や発生頻度等⇒なりすまし捜査を行わない場合に生じ得る害悪も大きくない。

本件ではなりすまし捜査を行う必要性はほとんどなく、そうである以上、捜査の態様いかんにかかわらず、本件の捜査は任意捜査として許容される範囲を逸脱しており、国家が犯罪を誘発し、捜査の公正を害するものとして違法

適法手続からの逸脱の程度が大きい
②警察官らには捜査方法の選択につき重大な過失がある
③本件はそれほど重大な犯罪に関するものではない
④警察官らは、なりすまし捜査を行った事実を捜査書類上明らかにせず、公判廷でも同事実を否認する証言をするなど、捜査の適法性に関する司法審査を潜脱しようとする意図が見られること等
本件の捜査の違法は重大

違法な捜査と直接かつ密接な関連性を有する被害届等の証拠は、証拠能力を欠くものとして証拠排除

本件では被告人の自白の補強証拠がなく、無罪
 
<解説>
おとり捜査については、
①犯罪誘発型(=おとり捜査により犯意を生じさせる場合)は違法だが、
②機会提供型(=元々犯意を有していた者に犯行の機会を提供した場合)は違法ではない
との2分説で、平成16年決定も、その実務傾向を概ね追認。 

おとり捜査をめぐる実務傾向について二分説のような単純化が可能なのは、その多くが薬物犯罪(特に密売)に関するものであり、各事例間においてその適法性の主要な考慮要素(犯意の強固さや通常の操作方法のみによる摘発の困難性、事案の重大さ等)の同質性が高いため。

本件のようにその典型的類型から外れる事案については、各考慮要素を事案に応じて具体的に見極め、それらを総合的に考慮してその捜査の適法性を検討することが必要であり、その検討の結果、捜査の適法性につき二分説とは異なる結論となることも当然あり得る。

捜査の違法の重大性に事後の事情を取り込む判断は、最高裁H15.2.14等にも見られるもの。

判例時報2343

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