情報公開条例に基づく公開請求で、訴訟事件の事件番号が非開示とされた事例
東京地裁H28.11.29
<事案>
東京都の都民であるXが、東京都情報公開条例6条1項に基づき、東京都知事Yに対し、原告をA社、被告を東京都及び新宿区とする損害賠償事件の第1審及び控訴審の訴訟関連文書として、文書開示請求⇒意見の各文書を非開示の対象とした上で、そのうち特定の個人の氏名など特定の個人を識別する記載、事件番号の記載並びに訴訟当事者、訴訟代理人及び裁判所書記官等の印影の各部分を非開示とし、その余の部分を開示する旨の一部開示決定。
⇒
Xは処分行政庁であるYに対し、本件一部開示決定のうち、別件訴訟の第一審及び控訴審の各事件番号を非開示とした部分の取消しを求める訴えを提起。
<条例>
本件条例7条2号は
本文において、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報を照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するもの」を非開示情報として定めた上で、
ただし書において、「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」(同号イ)等を本文に定める非開示情報から除く旨を規定。
<判断>
①本件一部開示決定において、別件訴訟の第1審及び控訴審の係属する各裁判所名は明らかにされている⇒不開示とされた本件各事件番号と併せてみることにより、当該事件が特定されることとなる。
②何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる
⇒
特定される別件訴訟の訴訟記録を閲覧することにより、何人も、別件訴訟の訴訟記録に記載された当該事件に関与する個人の氏名、住所、生年月日等を知ることができ、特定の個人を識別することができることとなる。
⇒本件各事件番号は、個人識別情報に該当
「法令の規定」とは、何人に対しても等しく情報を公開することを定めている法令のことをいい、
「慣行」とは、事実上の慣習をいい、
「公にされている情報」とは、現に何人も容易に入手することができる状態におかれている情報をいう
⇒
本件各事件番号は、「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当するとは認められない。
⇒請求を棄却。
<解説>
情報公開条例との関係で、「個人に関する情報」に該当するか否かが問題となった裁判例:
①法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。)の代表者に準じる地位にある者以外の従業員の職務遂行に関する情報は、その者の権限に基づく当該法人等のための契約の締結等に関する情報を除き、「個人に関する情報」に当たるとした最高裁H15.11.11
②県の職員の出勤簿に記録された職員が停職処分により特定の日に出勤しなかったことを示す情報は「個人に関する情報」に該当するとした最高裁H15.11.21
等
東京都情報公開条例を巡って、非開示としたものを取り消した裁判例:
③警視庁における制服購入契約締結文書の起案者(東京地裁H18.5.26)
④警視庁の非管理職職員の氏名、印影が含まれる情報(東京地裁H18.7.28)
非開示を相当とした裁判例:
⑤建築審査会裁決案の評議の議事録に記載された情報
⑥警視庁K署内の道路標示塗装委託単価契約書の法人の契約代表者の氏名
等
判例時報2343
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