麻薬取締官の対応による被告人の覚せい剤等の取引の促進助長と、意匠収集証拠は維持・量刑評価
大阪地裁H29.4.12
<事案>
被告人がトランクルームや自宅で覚せい剤及びコカインを合計約1023g所持していたという事案。
<判断>
被告人が、薬物取引を行う際に、その情報を麻薬取締官に提供し、麻薬取締官もこれを容認していた「持ちつ持たれつ」の関係があった。
but
客観的な薬物所持の態様等
⇒被告人には、自己の利益を図る目的(営利目的あるいは使用目的)があると認定し、私人である被告人に犯意を誘発させて薬物犯罪に巻き込んだとの弁護人の主張を排斥。
量刑の場面で、
麻薬取締官の対応が被告人の薬物取引を促進、助長した面があるとし、その意味で被告人の意思決定に対して不当な影響を与えてことは否定できない⇒被告人の刑を引き下げる一事情として考慮。
<解説>
おとり捜査については、最高裁H16.7.12でその許容性について判示
調査官解説では、
国家が犯罪を創出した点等におとり捜査の違法性の実質を求め、働きかけも強度で国家が犯罪を行ったに等しいような場合には公訴棄却、免訴といったドラスティックな処理もあり得、
そこまで至らない程度の違法については、違法収集証拠排除法則の適用が問題となる、との見解。
判例時報2343
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