市立記念館条例を廃止する条例の制定行為の「処分性」を否定した事例
青森地裁H29.1.27
<事案>
本件は、Y(十和田市)が、地方自治法244条1項所定の公の施設として十和田市立新渡戸記念館(本件記念館)を設け、十和田市立新渡戸記念館条例(本件記念館条例)において、その設置及び管理に関する事項を定めていたが、その後、十和田市立新渡戸記念館条例を廃止する条例(本件廃止条例)を制定
⇒
Xが、Yに対し、本件廃止条例制定行為が行政事件訴訟法3条2項所定の処分すなわち「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(同条3項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。)」に当たることを前提として、本件廃止条例制定行為の取消しを求めた。
<争点>
本案前の争点:本件廃止条例制定行為の処分性
本案の争点:本件廃止条例制定行為が違法なものであるか否か
<判断>
本件廃止条例制定行為に処分性を認めることはできない⇒訴えを却下
●条例制定行為の処分性の認否の判断枠組み
条例の制定行為は、普通地方公共団体の議会が行う一般的・抽象的な法規範を定める立法作用に属し、一般的には処分に当たるものではない。
but
他に行政庁の法令の執行行為と処分を待つことなく、その施行により特定の個人の権利義務や法的地位に直接影響を及ぼし、行政庁の処分と実質的に同視し得ることができるような例外的な場合には、処分に含まれるものと解するのを相当とすることもあり得る。
●本件廃止条例制定行為の処分性の認否
①地方自治法、本件記念館条例、文化財保護法及び十和田市文化財保護条例の関係法令の内容に照らすと、本件記念館の設置、あるいは、本件記念館において本件資料の保存等がされることに関して、Xが、Yに対して、本件各契約等に基づく契約上の地位等を離れて法的保護の対象となる権利ないし利益を有するものとは認められない。
②本件保管覚書合意を基礎として本件廃止条例制定行為の処分性を認めることはできず、本件廃止条例の施行により本件各契約等に基づくXの権利ないし法的地位に直接影響が及ぶものということもできない
③実質的に考えても、法的救済を求める手段としては、民事訴訟によるのが最適というべきであって、取消訴訟において本件廃止条例制定行為の法的効力を争い得るものとすることに十分な合理性は見出し難い
⇒
本件廃止条例の制定行為の処分性を認めることはできない。
<解説>
横浜市保健所廃止条例事件(最高裁H21.11.26)は、条例制定行為の処分性を最高裁判例として初めて肯定。
←①法的効果とその直接性、②対象の特定性、③救済方法としての合理性
が認められる。
本件廃止条例制定行為については、①③が認められないとして、処分性を否定。
判例時報2343
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