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2017年10月15日 (日)

嘉手納基地爆音訴訟第1審判決

那覇地裁沖縄支部H29.2.23     嘉手納基地爆音訴訟第1審判決 
 
<事案>
駐日米軍の嘉手納飛行場(本件飛行場)の周辺住民ら2万2048名が、米軍航空機の騒音によって各種の被害を受けていると主張⇒日本国に対し、騒音の差止め及び損害賠償を求める訴え。 
 
<判断・解説>
●騒音の差止請求棄却。 
国が日米安保条約に基づき米国に対し同国軍隊の使用する施設及び区域として飛行場を提供している場合において、国に対して右軍隊の使用する航空機の離発着等の差止めを請求することができない(厚木基地騒音上告審判決、最高裁H5.2.25)

本判決:
国は、日米安保条約及び日米地位協定上本件飛行場における米軍の航空機の運航等を規制し、制限することのできる立場にはない
⇒本件差止請求は、被告に対してその支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するもの⇒国に値する航空機騒音の差止め請求を棄却
 
●口頭弁論終結の日の翌日以降の将来分の損害の賠償請求に係る訴えを却下 
航空機の騒音等による損害の賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分については、大阪国政空港訴訟上告審判決(最高裁昭和56.12.16)が将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないと判断。
本判決も同旨。
 
●過去分の損害賠償請求 
過去分の損害賠償請求につきいわゆる受忍限度論を採用した上、生活環境整備法において区域指定に用いられるW値で75以上の区域に居住している期間について、原告らが社会生活上受忍すべき限度を超える違法な権利侵害ないし法益侵害を被っている。

原告らのいわゆる民特法に基づく損害賠償請求を一部認容。
損害賠償額については、
生活環境整備法に基づいて作成されている騒音コンター図(5W値ごとに同一のW値を結んで作成されたコンター図)を用いて、
W75以上80未満の区域に居住する期間は、1か月7000円
W80以上85未満⇒1か月1万3000円
W85以上90未満⇒1か月1万9000円
W90以上95未満⇒1か月2万5000円
W95以上⇒1か月3万5000円
を基本となる慰謝料額。

但し、生活環境整備法に基づき住宅防音工事がされている場合には、施工室数に応じて、慰謝料額は減額
~慰謝料として高額。

本件飛行場における航空機の運航等から生じる騒音によって周辺住民らに受忍限度を超える違法な被害が生じていることを認定し、
国に損害賠償を命じた第一次訴訟の判決が確定した平成10年から既に18年以上、第二次訴訟の判決が確定した平成23年1月からは既に4年以上が経過しているものの、米国又は国による被害防止対策に特段の変化は見られず周辺住民に生じている違法な被害が漫然と放置されていると評価されてもやむを得ない

判例時報2340

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