第二次普天間基地騒音公害訴訟第一審判決
那覇地裁沖縄支部H28.11.17
<事案>
駐日米軍の普天間飛行場(本件飛行場)の周辺住民ら3417名が、米軍航空機の騒音及び低周波音等によって各種の被害を受けていると主張
⇒日本国に対し、騒音の差止めや損害賠償等を求める。
<判断・解説>
●騒音の差止請求を棄却
国は、日米安保条約及び日米地位協定上、本件飛行場における米軍の航空機の運航等を規制し、制限することのできる立場にはない
⇒本件差止請求は、被告に対してその支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものであるとして、国に対する航空機騒音をの差止請求を棄却。
~
厚木基地騒音訴訟上告審判決の判断を踏襲
●憲法に基づく確認請求がされ、これについて裁判所が判断
原告ら:
国に米軍の航空機の規制権限がないことを理由に、実体的な利益衡量をせずに国に対する差止請求を棄却するのは、基本権の実効的救済権としての裁判を受ける権利を侵害するもの
⇒
主位的に、米軍本件飛行場を提供する日本国と米国との間の協定の違憲無効確認を、
予備的に、国が原告らに騒音が到達している状態を放置していることの違憲確認を請求。
主位的請求について:
当該飛行場提供協定は、国と米国との間で日米安保条約及び日米地位協定に基づき本件飛行場を提供する旨を合意した協定
⇒それ自体は、原告らの法律関係を規定するものではない、
⇒その違憲無効確認請求は、原告らと国との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争とはいえず、これに係る訴えは、法律上の争訟に該当しない
⇒却下。
予備的請求について:
①原告らは、国が米国に対して本件飛行場を提供し、原告らに人格権侵害を生じさせていると同時に、その救済手段を設けていない点を問題視し、その違憲性を問うことで、差止請求を基礎付けようとしている。
②このような主張は、差止請求の攻撃防御方法として主張、判断されるべきものというべきものであって、これとは別に、原告らが求める確認判決をすることが原告らの権利又は法的地位に生じている不安を除去する方法として適切とはいえない。
⇒
予備的請求に係る訴えについては確認の利益を欠く。
●口頭弁論終結の日の翌日以降の将来分の損害の賠償請求に係る訴えを却下
大阪国際空港訴訟上告審判決に依拠して、本件の将来分の損害の賠償請求に、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を認めず、却下。
●過去分の損害賠償請求
受忍限度論を採用した上、生活環境法において区域指定に用いられるW値(うるさ値)で75以上の区域に居住している期間について、原告らが社会生活上受忍すべき限度を超える違法な権利侵害ないし法益侵害をこうむっている
⇒
原告らのいわゆる民特法に基づく損害賠償請求を一部認容。
本判決は、裁判例の中で最高の金額を基本とする慰謝料額とした。
←
本件飛行場における航空機の運航等から生じる騒音及び低周波音によって周辺住民らに受忍限度を超える違法は被害が生じていることを認定し、国に損害賠償を命じた第一次訴訟の判決が確定した平成23年10月から既に4年以上が経過しているものの、米国又は国による被害防止対策に特段の変化は見られず、周辺住民に生じている違法な被害が漫然と放置されていると評価されてもやむを得ない。
判例時報2341
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