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2017年10月 5日 (木)

尼崎連続不審死事件地裁判決

神戸地裁H27.11.13      
 
<事案>
被告人は、首謀者(女性)の義理のいとこであるが、首謀者Aを中心とする共同体(A一家)の一員として、Aら共犯者と共謀の上、
①Aの義妹Bの戸籍上の夫V1に対する保険金目的の殺人とその保険金の詐欺(第1)
②Aらの虐待に耐えかねて行方をくらましていたV4に対する生命身体加害略取、傷害致死(第2)
③Aらの虐待に耐えかねて行方をくらましていたV4の長女V2に対する監禁、殺人と、Aの怒りを買ったA一家の家政婦的存在であったV3に対する監禁(第3)
④A一家が財産目的で介入していた家族から預かっていた女児の胸を触ったとしてAの怒りを買ったV5に対する逮捕監禁、殺人、死体遺棄(第4)
により起訴。 
 
<争点>
①第1について、他人に自殺するよう働き掛けた場合に殺人(未遂)罪が成立するか、仮に成立するとして、被告人に殺意及び共謀が認められるか
②第2について、被告人が傷害致死の実行行為を行ったのを見たという目撃者の証言の信用性
③第3、第4について、いずれも、被害者に対する行為を殺人罪の実行行為と評価することができるか、仮にできるとして、被告人に殺意及び共謀が認められるか
 
<判断>   
いずれの点についても肯定し、被告人に殺意及び共謀が認められるとした。
 
●第1について 
自殺関与罪(自殺教唆罪)なのか、被害者を利用した殺人(未遂)なのかについて、
他人の意思決定の自由を完全に失わせるに至らない場合であっても、単なる働き掛けの域を超え、暴行や脅迫、偽計等を用いて他人を自殺する以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせた結果、その者が自殺行為に及んだ場合は、刑法199条(203条)の構成要件に該当。
被害者が崖から飛び降りて死ぬに至った経緯について詳細に検討⇒自殺する以外に選択することができない精神状態に陥らせた
 
●第2について 
①目撃証言が、捜査機関の求めに応じて被害者の頭部CT写真や診療録等の分析を求められた頭部外傷の専門家である医師の証言に裏付けられている
被告人の犯行を捜査機関に告白した経緯・状況に作為性が感じられず、被告人を陥れようとする意図がうかがわれない
証言の信用性を補強する別人(C)の証言がある

その信用性を肯定。
 
●第3、第4について、 
第3の犯行:
7月頃から被害者をベランダに置いた簡易物置の中に閉じ込める中、数か月間にわたって継続的に監禁、暴行、飲食睡眠の制限、排泄・入浴制限による不衛生等の数々の虐待を加えたことにより11月中旬頃の時点で、監禁下で虐待を継続する行為は、客観的にみて、被害者の生命を大きな危険にさらす行為
殺人罪の実行行為に該当する。

第4の犯行:
7月に前記物置に入れた被害者をビニールひもや手錠等を用いて緊縛した上で殴る蹴るなどの暴行を加え、2日以上正座を強制して飲食を制限した場合も、客観的にみて、被害者の生命を大きな危険にさらす行為
殺人罪の実行行為に該当する

被告人が、これらについて、被害者が死亡する危険性があるとは思わなかったと供述

単に他人の生死に無頓着になっていたために、自分の行為の違法性について意識を喚起できなかっただけであって、このような合理的根拠に基づかない憶測をもって殺意を否定することなどできない
 
●量刑について:
検察官は無期懲役刑の求刑。

判決:
一連の犯行によって3人が殺害され、1人が死亡させられるという極めて重大な結果。
被告人は、いずれの犯行においても、主犯であるAに匹敵するほどの重要な役割を積極的に果たした。
⇒死刑を選択する余地も含めて検討すべき。

①被告人がAに比べて従たる役割であったことは否定できない
②被告人をAと全く同列には論じられない
⇒結論的には、死刑の選択には躊躇せざるを得ないとして、求刑通り無期懲役刑。 

判例時報2337

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