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2017年10月10日 (火)

肖像権侵害を理由に、経由プロバイダに対する発信者情報開示請求が認められた事例

新潟地裁H28.9.30      
 
<事案>
氏名不詳者Aは、平成27年8月、X(平成26年生まれの女性)の画像(本件画像)を添付し、ツイッターに自分の孫娘Bがいわゆる安保法制反対デモに連れて行かれ、熱中症で死亡したとの記事を投稿。
本件画像はXの父親がツイッターに投稿していたもの。

X(法定代理人である両親)は、平成27年9月、Aが本件記事を投稿するに当たって使用したアカウント(本件アカウント)にログインした際のIPアドレス(本件IPアドレス)について、仮に開示することを命じる仮処分命令を受けた。

本件IPアドレスが、いわゆる経由プロバイダであるY会社と管理組合との間でインターネットサービスプロバイダ契約が締結されたマンションにおける共有ルータのグローバルIPアドレスであることが判明。

Xは、本件記事に本件画像が添付されたことで肖像権を侵害されたと主張し、Y会社に対し、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)4条1項に基づいてAの氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスの開示などを求める本件訴訟を提起。
 
<Yの主張>
①本件画像はすでにウェブサービスで公開されていた⇒肖像権を侵害しない。
②Y会社は本件IPアドレスに係る危機が設置されているマンションの名称及び住所の情報しか保有しておらず、この情報を開示してもAに対する損害賠償請求などの措置を講じることはできない。⇒Xには開示を受けるべき正当な理由はない。
として、同法4条1項1号、2号の要件に該当することを争った。
 
<判断>
Xが包括的ないし黙示的に本件画像をこのように公開することを承諾したとは考え難いし、Aにおいても容易に認識できたはず
②不法行為などの成立を阻却する存在をうかがわせる事情が認められない本件では、肖像権が侵害されたことが明らか

プロバイダ責任制限法4条1項1号の要件が認められる。 

本件アカウント、このアカウントを使用した記事から推測されるAの年齢、勤務先などを考慮すると、Y会社が保有するのは本件IPアドレスに係る機器が設置されているマンションの名称及び住所の情報だけであるが、この情報だけでもAに対する損害賠償請求権の行使のために必要

XにはY会社から開示を受けるべき正当な理由があるとみるのが相当であり、同項2号の要件も認められる。
Y会社にその開示を命令
 
<解説>
●プロバイダ責任制限法4条1項は、同項1号及び2号のいずれにも該当するときは、プロバイダなどの開示関係役務提供者に対する発信者情報の開示請求権を定めている。

立法担当者の解説:
同項1号の「権利が侵害されたことが明らかであるとき」とは、
権利の侵害がなされたことが明白であるという趣旨であり、不法行為等の成立を阻却する事由の存在をうかがわせせるような事情が存在しないことまでを意味する。」
とされている。

●判例は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益があると判示(最高裁H17.11.10)。

撮影ないし公表に同意したが、その公表形態、時期、媒体についての同意の範囲、承諾の要否が争点になったものとして、
①メイクのサンプル用に撮影した女性モデルの顔写真がいわゆる出会い系サイトの広告に無断で使用された事例で女性モデルの肖像権侵害を理由とする損害賠償請求を認めた東京地裁H17.12.16
②学生時代に撮影され、雑誌掲載に同意した女性アナウンサーの水着写真が放送局に就職した後に別の雑誌に無断で掲載された事例で女性アナウンサーの肖像権侵害を理由とする損害賠償請求を認めた東京地裁H13.9.5

本件画像のようなウェブサービスで公開されていた画像についても、写真と同様、公表形態、時期、媒体いかんによっては、同意が及ばず、公表に違法性が認められる場合がある。
本判決は、自分の画像を死亡した他人の画像として記事に添付するとの公表形態に着目して、肖像権を侵害したと位置づけ。

判例時報2338

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

 

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