意匠登録出願に係る物品の一物品性、一意匠一出願の要件
知財高裁H28.9.21
<事案>
意匠に係る物品を「容器付冷菓」とした意匠登録出願につき、特許庁から意匠法7条の要件を満たさないとして拒絶査定⇒不服審判請求⇒不成立とする審決⇒審決の取消しを求めた。
<規定>
意匠法 第7条(一意匠一出願)
意匠登録出願は、経済産業省令で定める物品の区分により意匠ごとにしなければならない。
<判断>
意匠法7条の規定は、意匠登録出願が「物品ごとに」かつ「形態ごとに」行われるべきことを定めた。
「物品ごとに」とは、ある1つの特定の用途及び機能を有する一物品であることを意味。
「形態ごとに」とは、意匠登録の出願図画に表される形態が、全体的なまとまりを有して単一の一形態であることを意味。
1つの特定の用途及び機能を有する1物品といえるか、及び、出願図画に表される形態が全体的なまとまりを有して単一の一形態といえるかは、
願書における「意匠に係る物品」欄及び「意匠における物品の説明」欄の記載を参照した上、
①意匠登録出願に係る物品の内容、製造方法、流通形態及び使用形態、
②意匠登録出願に係る物品の一部分がその外観を保ったまま他の部分から分離することができるか、並びに
③当該部分が通常の状態で独立して取引の対象となるか
等の観点を考慮して、社会通念に照らして判断すべきもの。
本願の「容器付冷菓」に係る物品は、社会通念上、1つの特定の用途及び機能を有する1物品であるとして、審決を取り消した。
<解説>
●1意匠1出願の原則の理由:
①出願の対象を単一にして、その内容を明確に把握でき
②したがって、審査の便宜かつ手続の迅速化を図ったもので、
③このようにすることによって、類似意匠に関する出願も簡明となり、
④また、当該意匠について意匠権が発生した場合は、権利の効力範囲が明らかとなり、
⑤侵害事件、意匠権の移転等の場合もその取扱いが明確にされ得る
利点を考慮。
意匠法6条で願書に記載する旨規定している「意匠に係る物品」の欄の記載を意匠登録出願人の自由にまかせて、例えば、「陶器」という記載を認めたのでは、「花瓶」と記載した場合に比べて、その用途及び機能において非常に広汎な意匠について意匠登録出願を認めたものと同一の結果を生ずる
⇒物品の区分については別に「経済産業省令で定める」ことにした。
●本件の意匠登録出願は、出願に係る物品が、前記の意匠法7条に規定する経済産業省令である別表第1に列挙されている物品の区分に該当しない場合。
審決は、このような出願について、2物品に係る出願であり、2意匠を表したものと判断。
本判決は、当該出願に係る物品が1物品といえるか否かは、願書の記載を参照し、
①当該物品の内容、製造方法、流通形態及び及び使用形態
②当該物品の一部分がその外観を保ったまま他の部分から分離することができるか、並びに、
③当該部分が通常の状態で独立して取引の対象となるか
等の観点を考慮して、社会通念に照らして判断すべきものであるとし、
本願に係る物品を1物品と判断した。
判例時報2341
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