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2017年10月20日 (金)

給与規定変更による給与の減額に伴う退職金の減額について、変更に合理性があるとされた事例

大阪地裁H28.10.25      
 
<事案>
退職金規程及びその前提となる給与規程の改訂により、退職金が減額⇒原告X1~X5が差額退職金の支払を請求。
被告Yは、学校法人であり中学、高校、通信制高校を運営。
XらはいずれもYの元教員であり35年程度の勤務の後、平成27年、28年に定年退職した者(定年退職後、シニア講師としてYに就労)。 

Yは平成25年5月、新たな人事制度を導入し、給与規則と退職金支給規則を改訂(但し、退職金制度について実質的な変更はない)するとともに退職年金制度を廃止。

Yは平成13年度から消費支出超過を続けており、同17年以降は帰属収支においても大幅な支出超過⇒大幅な経費削減を行わなければ早晩経営破たんするとして、平成25年5月、月額給与を8万円程度引き下げ、これに伴って退職金は85~90%程度に減額
 
<規定>
労働契約法 第9条(就業規則による労働契約の内容の変更)
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

労働契約法 第10条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
 
<判断>
●本事案は、退職金の計算基礎となる「基本給の額が減額となったことによるもの」で「新人事制度全体を踏まえて検討する必要がある」

①変更の必要性、②不利益の程度、③内容の相当性、④労働組合等の交渉状況を検討。 
 
●変更の必要性 
府下私立学校における退職給与引当率の平均値、日本私立学校振興・共同事業団「自己診断チェックリスト」における帰属収支差額費率、積立率、流動比率の評価や管理職手当の減額、理事の減員、役員手当のカットなどを認定

その経営状況は危機的なものであったとし、末期的な状況になってからでは遅いともいえると判示。
 
●不利益の程度 
Xらの請求額は300~400万円であるが、「不利益の程度は大きい」と認定。
 
●内容の相当性 
①基本給減額について経過措置(初年度95%、2年目90%、3年目85%の補償)が採られたこと、②新人事制度導入前に退職したと仮定した場合の退職金と、新人事制度導入後の退職金とを比較し、高い方の金額で支払ったことなど、一定の激変緩和措置を設けていることを認定。
公益財団法人大阪府私学総連合会の退職金事業における支給率と比較⇒「同一地域内において高いもの」

変更後の内容は相当
 
●労働組合等との交渉
①財政破綻のおそれがあることについては7年前から説明
②平成23年12月以降、教職員及び組合に対して情報(決算概要等)や改革案を適宜提示し、組合要求の資料を開示し、交渉においても強硬な態度をとることなく対応してきた。

Yの本件組合あるいは教職員に対する説明の内容・態度は適切なものであった。


本件変更については、
これにより被るXらの不利益は大きいものではあるが、
他方で、
変更を行うべき高度の必要性が認められ、
変更後の内容も相当であり、
本件組合等との交渉・説明も行われてきており
その態度も誠実なものであるといえる

本件変更は合理的なものであると認められる。 
 
<解説>
就業規則による労働条件の不利益変更の効力は、労働契約法9条、10条に、実定法化。 

判例時報2340

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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