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2017年10月 8日 (日)

県立高校男子生徒がいじめにより自殺した事案

神戸地裁H28.3.30      
 
<事案>
県立高校の男子生徒Aが、同級生Y1~Y3によるいじめ行為を原因として自殺したと主張して、Aの父X1及び母X2が、
Y1らに対して不法行為に基づく損害の賠償を求めるとともに、
同校クラス担任教師Y5が、いじめ行為を発見・防止すべき義務を怠り、
同校校長Y4がY5を監督すべき義務を怠ったため、
あの自殺を防止できなかったと主張

Y1~Y5に対しては不法行為に基づき、
同校を設置するY県に対しては国賠法1条1項に基づき、
損害賠償を求めた。
 
<判断>
●世上「いじめ」といわれる行為のうち、「自分より弱い者に対して、一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手方深刻な苦痛を感じているもの」との定義に該当する場合に限り「不法行為」を構成する。 
Y1らの行為のうち一部のこういについて共同不法行為であると判断。
 
Y県は、入学許可処分によって発生する公法上の法律関係に基づく付随義務として、
信義則上、学校における教育活動及びこれに密接に関連する生活関係によって生ずるおそれのある危険から生徒を保護し、安全の確保に配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っており、
かかる義務は、教師が国賠法上負う職務上の注意義務の内容をも構成する。 

かかる法理は学校生活の場におけるいじめ行為にも妥当することを前提に、
具体的な義務の内容として、
本件いじめ行為の存在を認定することが可能であったY5は、本件いじめ行為の存在を具体的に把握して、これを防止し、適切な措置を講ずるべき注意義務(予防・発見義務)を負い、
Y4は、他の教員にいじめ防止のための適切な指導・助言を与え、生徒の生命身体の安全をはかるべき注意義務(指導・助言義務)を負っていたが、
Y5・Y4ともに各注意義務に違反。
 
Aの自殺との間の条件関係(事実的因果関係)
①Aが、本件いじめ行為を受け続ける中で、自殺以外の解決方法が思い浮かばない心理的な視野狭窄の状態に陥っていたことが推認される
②Aが抱えていた他の問題だけでは直ちに自殺を選択する原因とはなり得ない

Aの自殺は、専ら本件いじめ行為に基因するものとみることに通常人の立場から合理的な疑いを挟む余地はないとして、これを肯定。

Y5及びY4の前記各義務違反とAの自殺との事実的因果関係についても、
①本件いじめ行為の性質、態様等に照らすと、Y5が予防・発見義務を尽くしていたならば、いじめ行為を察知し、然るべき措置を講じることなどにより、Aが自殺に至らなかったであろうことを是認し得る程度の蓋然性が認められる。
②Y4の指導・助言義務が尽くされていれば、Y5も予防・発見義務を尽くしていたものとみるのが自然

いずれも肯定。
 
Aの自殺による損害との間の相当因果関係 
①Aの自殺は、本件いじめ行為の性質等に照らして特別損害に該当⇒相当因果関係を認めるためにはY1ら、Y5及びY4がAの自殺を予見し得たことが必要
本件いじめ行為の態様等のほか、Aの抱えるその他の問題等についてY1ら、Y5及びY4が知る由もなかったことなどの事情

いずれも否定。

Y1ら及びY県の負う損害賠償責任の範囲は、本件いじめ行為によって被ったAの精神的苦痛に対するものにとどまる
 

①Y県は、安全配慮義務の1内容として、学校における教育活動及びこれに密接に関連する生活関係と何らかの関連性がうかがわれる生徒の死亡事故等が発生した場合、遺族対応において、その心情等を著しく傷付けないよう配慮すべき義務(配慮義務)を負う。
②Xらが配慮義務違反であると主張した各行為のうち、Y6が著しく不適切な発言をして配慮義務に違反し、Y4は同校の行使を指導・監督すべき義務を尽くさなかった

Y県に配慮義務違反及び国賠法1条1項に基づく損害賠償責任を肯定。
 

県が債務不履行に基づく損害賠償責任を負う場合であっても、国賠法1条1項に基づく損害賠償を追う場合と同様、公共団体に対し賠償義務が認められれば賠償能力に欠けるところはない⇒公務員個人はその責を負わない。 
 
<解説>
学校事故に関する最高裁昭和62.2.13:
「学校の教師は、学校における教育活動によって生ずるおそれのある危険から児童・生徒を保護すべき義務を負っている」

判例時報2338

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