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2017年10月24日 (火)

個別信用購入あっせんにおいて、購入者が名義上の購入者となることを承諾した場合に、販売業者の不実告知該当性が認められた事例

最高裁H29.2.21      
 
<事案> 
Yら(34名)は、信販会社Xの加盟店であった販売業者Aとの間で商品の売買契約を締結⇒Xとの間でその購入代金に係る立替払契約を締結。
but
前記各立替払契約は、Aの依頼により、Yらが名義上の購入者となること(いわゆる「名義貸し」)を承諾して締結されたもの。 
Aは、名義貸しを依頼する際、Yらに対し、ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり、高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在することを告げた上で、「支払については責任をもってうちが支払うから、絶対に迷惑は掛けない。」などと告げた
Aは、Yら名義の引き落し口座に入金をしたが、その後営業を停止⇒破産手続開始決定を受けた。
 
X⇒Yらに対し、各立替払契約に基づく未払金の支払等を求める
反訴:Yらのうち1名が、Xに対し、立替払契約を取り消したとして、既払金の返還等を求めた
 
<争点>
AがYらに対し名義貸しを依頼する際にした告知の内容が、割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」、すなわち不実告知の対象に当たるか。 
 
<規定>
割賦販売法 第35条の3の13(個別信用購入あつせん関係受領契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
購入者又は役務の提供を受ける者は、個別信用購入あつせん関係販売業者又は個別信用購入あつせん関係役務提供事業者が訪問販売に係る個別信用購入あつせん関係販売契約若しくは個別信用購入あつせん関係役務提供契約に係る個別信用購入あつせん関係受領契約又は電話勧誘販売に係る個別信用購入あつせん関係販売契約若しくは個別信用購入あつせん関係役務提供契約に係る個別信用購入あつせん関係受領契約の締結について勧誘をするに際し、次に掲げる事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は第一号から第五号までに掲げる事項につき故意に事実を告げない行為をしたことにより当該事実が存在しないとの誤認をし、これらによつて当該契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

六 前各号に掲げるもののほか、当該個別信用購入あつせん関係受領契約又は当該個別信用購入あつせん関係販売契約若しくは当該個別信用購入あつせん関係役務提供契約に関する事項であつて、購入者又は役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの
 
<判断>
個別信用購入あっせんにおいて、
購入者が名義上の購入者となることを承諾してあっせん業者との間で立替払契約を締結した場合に、それが販売業者の依頼に基づくものであり、前記販売業者が、前記依頼の際、名義上の購入者となる者を必要とする高齢者等がいること、前記高齢者等との間の売買契約及び商品の引渡しがあること並びに前記高齢者等による支払がされない事態が生じた場合であっても前記販売業者において確実に前記購入者の前記あっせん業者に対する支払金相当額を支払う意思及び能力があることを前記購入者に対して告知したなどの判示の事情の下においては、前記の告知の内容は、割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たる旨判断

原判決を破棄し、本件を原審に差し戻した。
 
<解説>
●名義貸人が、販売業者との間の売買契約は虚偽表示により無効であることをもって、信販会社からの立替金請求を拒むことができるか?

学説:
A:否定説:売買契約の虚偽表示は、購入者の背信行為に基づくもの⇒抗弁事由に一律該当しない。
B:原則否定説:基本的には否定説に立ちつつ、抗弁権の接続を認めることが信義則に反しないといえる事情がある場合には、抗弁事由に該当。
C:原則肯定説:購入者は、原則として虚偽表示による無効を信販会社に対抗できるが、抗弁権の接続を認めることが信義に反するといえる事情がある場合には、対抗できない。
 
●個別割賦購入あっせんにおいても、売買契約と立替払契約は法的に別個の契約⇒売買契約に関する瑕疵が立替払契約の効力に影響することはないのが原則。
⇒販売業者により不実告知等の悪質な勧誘行為が行われ、売買契約が特定商取引に関する法律等により取り消されたとしても、立替払契約は引き続き有効
⇒購入者はあっせん業者に対して抗弁権の接続により未払金の支払を拒否し得るにとどまり、既払金の返還を求めることはできない。 

①他方で、消費者契約法5条は、消費者契約の締結につき事業者から媒介の委託を受けた者による不実告知があった場合、消費者は契約を取り消すことができる旨のいわゆる媒介者の法理を規定。
②個別信用購入あっせんにおけるあっせん業者と販売業者との間にもこれと同様の密接な関係があるといえるが、この不実告知の対象となる「重要事項」には、動機に関わる事項は含まれないとされていた。

このような場合であっても、既払金の返還を可能とすることで、購入者を保護するため、平成20年改正法による改正によって割賦販売法35条の3の13第1項の規定が新設
契約締結の動機に関わる事項について販売業者による不実告知があった場合にも、斡旋業者の主観的態様を問わず、立替払契約を取り消すことができることとされた
 
●本判決は、Aによる告知の内容が、割賦販売法35条の3の13第1項6号の不実告知の対象に当たる旨判断しただけであり、
同項による取消しの要件である、誤認の有無や意思表示との因果関係の有無等については、個別の購入者ごとに、販売業者との関係、名義貸しを承諾するに至った経緯等を考慮して、別途検討する必要。
購入者があっせん業者に損害を与える目的で名義貸しを承諾した場合や、自らの利益を得る目的で名義貸しを承諾した場合にのように、あっせん業者と販売業者との関係よりも、販売業者と購入者との関係の方が密接であるといえる場合には、これらの要件を欠くとして、あるいは、同項による取消しを主張することが信義則に反するとして、結局、不実告知による取消しは認められないであろう。

判例時報2341

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