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2017年10月22日 (日)

死亡した職員の夫について、当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを遺族補償年金の受給の要件としている⇒憲法14条1項違反(否定)

最高裁H29.3.21      
 
<事案>
Xは、地方公務員災害補償基金大阪支部長(「行政処分庁」)に対し、地方公務員であったXの妻が公務上の災害により死亡したとして、地方公務委員災害補償法31条に基づく遺族補償年金の支給を請求するとともに、地方公災法47条1項2号及び地方公務員災害補償法施行規則38条1項に基づく遺族特別支給金(この3つをあわせて「遺族特別支給金等」)の支給を請求。
処分行政庁は、平成23年1月15日付けで、遺族補償年金及び遺族特別支給金等をいずれも不支給とする旨の決定
XがYに対し、本件各不支給決定の取消しを求める。 
 
<判断>
地公災法の定める遺族補償年金制度は、憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障の性格を有する制度であるとした上で、
男女間における労働力率の違い、平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等からうかがえる妻の置かれている社会的状況

妻について一定の年齢に達していることを受給の要件としないことは合理的な理由を欠くものということはできない

本件各規定のうち、死亡した職員の夫について、当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを受給の要件としている部分が憲法14条1項に違反するということはできない。
⇒上告棄却。 
 
<解説> 
地公災法に基づく遺族補償年金を受けることができる遺族は、公務上の災害により死亡した職員の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、職員の死亡の当時その収入によって生計を維持していたものとされている。
死亡した職員の妻以外の遺族にあっては、職員の死亡の当時、18歳未満又は55歳以上とその年齢要件又は総務省令で定める障害の状態にあることとの障害要件を満たすことが受給要件

遺族補償年金職員の死亡によって扶養者を喪失した遺族で稼働能力を欠く者に必要な期間支給するもの

遺族の範囲は職員の死亡の当時その収入によって生計を維持していた者に限定し、さらに、妻以外の遺族であって年齢要件を満たさない者については、一定の障害の状態にない限り、自活可能であるものとし、
他方で、妻については、一般的には就労が困難であることが多いこと等を考慮し、特に年齢制限を行っていない。

国家公務員災害補償法及び労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金等についても、地公災法と同様に、妻以外の遺族については年齢要件又は障害要件を満たすことが受給資格要件とされている。
 

本件では、Xは、本件各規定が憲法14条1項に違反する旨を主張。
but
本件各不支給処分の適法性との関係で問題となるのは、本件各規定のうち、死亡した職員の夫について、当該職員の死亡の当時55歳以上であることを遺族補償年金の受給資格要件としている部分が憲法14条1項に違反するかどうか。 

最高裁判例:
憲法14条1項は国民に対して絶対的な平等を保障したものではなく、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づいて異なる取扱いをすうることは同項に反するものではない

合理的な根拠の有無を判断するに当たりどの程度厳格に審査するか
については、権利の性質や区別の利用により類型化した上で類型ごとに異なる審査基準を適用するという手法は用いておらず、区別の理由が憲法14条1項の列挙事由に当たるか否かにかかわらず、個別の事案に応じ、立法府等の有する裁量権の広狭、区別の対象となる権利の性質及び区別の理由を総合的に考慮している。

最高裁H20.6.4:
国籍法の定める国籍取得要件における区別が合理的な根拠に基づくものといえるかどうかを判断するに当たり、
国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかは、立法府の裁量判断に委ねられていることを指摘しつつ、
国籍が重要な法的地位であること、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは子にとって自らの意思や努力によって変えることのできない父母の身分行為に当たる事柄であること

このような事柄を持って日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討する必要
当該区別を設けることの合理性を裏付ける立法事実の有無を詳しく検討し、合憲性を判断

最高裁H27.12.16:
再婚禁止期間を定める規定の憲法14条適合性につき、婚姻をするについての自由は、憲法24条1項の規定の趣旨に照らし、十分尊重に値するもの解することができる。
婚姻制度に関わる立法として、婚姻に対する直接的な制約を課すことが内容となっている本件規定については、その合理的な根拠の有無について以上のような事柄の性質を十分考慮に入れた上で検討することが必要」であるとし、
比較的詳細に区別の合理性を裏付ける立法事実の有無を審査。
 

労働災害補償保険法の遺族補償年金制度が、災害により死亡した職員の遺族の生活保障を図ることを目的とするものであって、憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障の性格をも有する制度で、地公災補償制度も同様。 

社会保障制度に係る立法の裁量について、いわゆる堀木訴訟判決(最高裁昭和57.7.7)が、
障害福祉年金と児童扶養手当との併合を禁止する児童扶養手当法の合憲性につき、憲法25条にいう健康的で文化的な最低限度の生活なるものを立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするもの

具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は立法府に広い裁量権が認められる。
その上で、何らかの合理的理由のない不当な差別的取扱いに当たるか否かという緩やかな基準により憲法14条1項適合性を判断

本判決は、
地公災法の定める遺族補償年金制度が社会保障の性格を有する制度であることを指摘しつつも、
男女間における労働力率の違い、平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違いなどの立法事実を踏まえて、妻について一定の年齢に達していることを受給の要件としないことは合理的な理由を欠くものということはできない

区別の合理的な根拠の有無を立法事実に照らして具体的に検討。
原判決が摘示する男女間における労働力率の違い、平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等に鑑みれば、立法事実に照らして検討しても、妻の置かれている社会的状況が依然として不利益な状況であることは否定し難く、合理的な理由を欠くものとはいえない
⇒本判決は、審査の厳格さについて論ずることなく、本件各規定が憲法14条1項に違反するものではない旨を判示したのではないかと推察。
 

一審判決は、本件各規定が憲法14条1項に違反し違憲・無効であるとする。

遺族補償年金の受給資格要件を定める地公災法の規定のうち、妻以外の遺族に年齢要件を課している部分を無効とするもの。
but
仮に遺族補償年金の受給要件を定める地公災法の規定全体が無効となるのではなく、その一部が無効となるのかは検討を要する上、
仮にその一部が無効となるとしても、違憲とされる格差を是正する方法としては、
本件各規定を無効とすることのほかに、
妻に年齢要件又は障害要件を課していない部分を無効とすることも考えられる。
(←一審判決の意見とする理由が、女性の社会進出が進んだ結果、男女間の格差が縮小したことなどを理由とするもの。)

判例時報2341

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