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2017年10月 9日 (月)

中学生のいじめによる暴行についての損害賠償請求の事案

さいたま地裁越川支部H28.12.22      
 
<事案>
X1及びX1の母X2は、Y10(川越市)が設置する市立中学に在学していたY1、Y4、Y7が、同学年のX1に対し暴行を加え、遷延性意識障害を負わせた

①Y1、Y4、Y7に対し、共同不法行為に基づき、
②前記3名の親権者であるY2、Y3、Y5、Y6、Y8、Y9に対し、監督義務違反を理由として、不法行為に基づき
③Y10に対し、安全配慮義務違反を理由として、国賠法に基づき
それぞれ損害賠償を求めた。 
 
<判断> 
●上記①について
暴行に至る経緯や暴行態様等を認定。Y1、Y4、Y7の加害少年3名は、「タイマン」名下にX1に対し順次暴行を加え、場合によっては共同して暴行を加えることを合意し、かかる合意に基づいてX1に対する暴行を実行。
加害少年3名により一連の暴行とX1の傷害結果についての相当因果関係が認められ、加害少年3名は共同不法行為責任を負う。

●上記②について 
加害少年3名の生活態度、関与した事件及びこれらに対する親権者の指導状況等について認定⇒
①親権者は問題行動について指導を行っており、
②それ以上の措置をとらなければならないような切迫した状態にあったとも認められず、
③X1に対する暴行も予測し得ないものであった。
親権者らの責任を否定

●上記③について 
中学校の教員が負う注意義務
学校教育の場自体においてのみならず、これと密接に関連する生活場面においても、生徒に対して、他の生徒からもたらされる生命、身体等に危険が及ぶおそれが具体的に予見される場合には、被害発生を防止すべき注意義務(結果回避義務)を追う

①教員らは、X1が周囲の生徒から継続的なからかいの対象となっており、このことが暴力を伴う事件いまで発展していたことを認識し得、文科省の発した通知におけるいじめの定義に照らして、これがいじめに当たるものと評価し得た。
②X1と加害少年3名は、いずれも同学年の野球部員であり、学校教育の場と密接に関連する放課後や部活動終了後の帰宅までの間などの生活場面において行動を共にすることが多かった。

教員らは、前記生活場面においても、X1に対するからかいや嫌がらせが暴力を伴う事件にまで発展する事態を予見し得た。

加害少年3名によるX1に対する暴行は、冬休み期間中に学校外の公園で行われたものではあるが、部活動の後、時間を置かず、中学校に近い公園で行われた

学校教育の場と密接に関連する生活場面における事件と評価でき、
教員らにおいても予見可能であった。

教員らのとるべき措置として、いじめに関与した生徒らに対する適切な指導・監督及びX1の母であるX2への働きかけといった具体的な措置を検討した上で、教員らがこうした措置を講じることが可能であり、これによりX1に対する暴行を回避し得たにもかかわらず、教員らは前記措置をとらなかった。
⇒注意義務を怠った過失がある。


①教員らの認識してた事実を前提としてもいじめを認識できた
②X1と加害少年3名との関係等に照らし、暴行を受けるに至ったことにつき、X1、X2に考慮すべき過失があるとは認められない

Y10らの過失相殺の主張を斥けた。 

●損害について 
在宅介護において不可欠な医療機関との連携について具体的な主張立証がないなど、現段階において在宅介護の蓋然性が著しく低く、これを前提とする介護費用等の損害は相当因果関係が認められない

将来の介護費用等について、施設入所を前提とする限度でこれをみとめた。
 
<解説>
学校の教員が負う注意義務については、
学校における教育活動によって生ずるおそれのある危険から児童・生徒を保護すべき義務を負っている(最高裁)ところ、
その範囲については、学校教育活動及びこれに密接に関連する生活関係に限定されるものと解されている。。

加害少年の親権者らの監護義務違反の有無について、
未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めるときは、
監護義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立(最高裁)。

判例時報2338

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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