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2017年10月12日 (木)

株式交換の効力発生日後に株式買取請求が撤回された場合

東京高裁H28.7.6       
 
<事案>
Y株式会社は、その親会社A株式会社との間で、Yを株式交換完全子会社とする株式交換を行った。
Yの株主であったX1ないしX3は、本件株式交換に反対して株式買取請求をしたが、買取価格の合意には至らず、本件株式交換の効力発生日から60日以内に価格決定の申立てもされなかった。
Xらは、その後、本件各株式買取請求を撤回

XらがYに対して、
①主位的に、Xらが株式交換完全親会社であるAの株式を取得していると主張⇒Aの株式をXらの指定する証券保管振替機構の口座へ振り返るよう指示すること及びAの配当金の支払を請求

予備的に
②XらがAの株式を取得していることが認められない場合、XらがYの株主であることの確認とYの株主名簿への記載及びYの配当金の支払(予備的請求1)
③主位的請求のうち口座振替指図が認められない場合、これに代わる金員の支払とAの配当金の支払(予備的請求2)
④予備的請求1のうちYの株式であることの確認・株主名簿への記載が認められない場合、これに代わる金員の返還とYの配当金の支払(予備的請求3)
を求めた。
 
<原審>
Xらによる株式買取請求の後、株式交換の効力発生日に買取の効力が生じ、Xらが有していたY株式は同効力発生日に完全子会社Yを経て完全親会社Aに移転
⇒Xらは完全子会社Yの株主にも完全親会社Aの株主にもなることはない。

Xらは完が株式買取請求を撤回したからといってYの株主の地位を回復するものではない

XらがA又はYの株主であることを前提とする上記①~③の各請求を棄却。

株式交換の効力発生日後に株式買取請求が撤回された場合には、完全子会社には原状回復義務として完全子会社の株式を返還する義務が生じる
but
②完全親会社が完全子会社の株式を取得している

当該義務は履行不能となり、結局、完全子会社は、株式買取請求に係る株式の価格相当額返還義務を負うことになる。

Xらの請求④のうちXらが有してたY株式の価格相当額の支払を求める請求の一部は理由がある。

その金額は、
株式買取請求を撤回した時点においてY株式の現物返還は履行不能であり、株主は金銭債権を取得することになる

撤回時を基準として、その時点におけるY株式の価格相当額を返還すべき。
 
<判断>
原判決のうち、
株式交換の効力発生日後に株式買取請求の撤回があった場合に完全子会社Yは買取請求に係るY株式の価格相当額の金銭を返還する義務を負うことについては支持。
but
YがXらに支払うべき金額は、株式の返還義務が履行不能となったとき、すなわち株式交換の効力発生日を基準として、その時点におけるY株式の価格相当額を返還すべきものと解するのが相当。

Xらによる株式買取請求の撤回時でではなく本件株式交換の効力発生日に最も近く市場取引最終日のY株式の終値にXらの各持株数を乗じた金額の支払をYに命じた

株式買取請求権の撤回時を基準(原審)
vs.
①株式交換に反対して株式買取請求をした者において、株式交換の効力が発生して完全親子会社の関係が生じた後、価格決定の申立てが可能な60日間の様子を見た上で、親会社の株価が上昇傾向を示した場合には価格決定の申立てをしないで買取請求を撤回し、一方、親会社の株価が下落傾向となった場合には価格決定の申立てをして株式買取請求日の評価による買取価額を得ようとするといった対応が可能になる
②これは、会社法が株式買取請求をした者に対して合意によるかあるいは裁判所による適正買取価格の決定に従わせようとしている趣旨に反し、恣意的に利益獲得を認めることにつながり、
③株式交換に反対してこの会社から撤退しようとした者に対し、完全親子関係の創設によって生じた利益を得させることにもつながる
もので相当でない。

判例時報2338

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