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2017年9月29日 (金)

福島第一原発事故により自主避難した原告の損害賠償請求

京都地裁H28.2.18      
 
<事案>
福島第一原発事故⇒
自主避難等対象区域(中間指針等に基づくもの)内の自宅から家族で自主避難した原告らが、福島第一原発を設置・運営するY(東京電力)に対し、本件事故の結果、X1らが自宅から避難せざるを得なくなった上、X1(父)が精神疾患に罹患し、X1(父)及びX2(母)は就労が出来なくなった

原賠法3条1項に基づいて、
X1は自主避難に伴う費用通院に伴う費用休業損害慰謝料等
X2は休業損害、慰謝料等
X3~X5は、慰謝料等
の損害賠償を求めた。
 
<争点>
本件事故と相当因果関係の認められるX1らの損害の範囲
①避難先で起業が奏功しなかったため更に転居したことが自主避難として合理的であり、これによってX1に生じた損害につきYが賠償責任を負うか
②自主避難を継続する合理性が認められる期間
③本件事故とX1の精神疾患の発症との相当因果関係の有無
④本件事故がX1の精神疾患の発症に寄与した度合い
⑤本件事故と相当因果関係のあるsン買いは、中間指針等により示された損害に限られるか
 
<判断>
●争点①について
X1らが当該転居の主な理由とする避難先で起業を計画したその見通しが立たなかったことについて:
①起業は自主避難者としての合理的行動とはいえない
②起業が奏功しなかった責任は本来的に当人に帰すべきものである
⇒特段の事情のない限り合理的な理由とはいえない。
③本件では同事情は認められない。

再度の転居の理由についても、合理性は認められない
 
●争点②について 
①政府の要請に基づき設置されたワーキンググループの報告書をはじめとした低線量被ばくの危険性に関する科学的知見等を根拠に、年間20mSvを下回る被ばくが健康に被害を与えるとは認められない
②同知見の内容、その周知状況、自主避難等対象区域内のX1らの自宅所在地付近の放射線量の推移、本件における主張関係等を考慮

平成24年8月31日(中間指針等に基づき、18歳以下及び妊娠していた者につき、Yが精神的損害等を賠償する対象期間の終期)以降、X1らが自主避難を続けることに合理性は求められない
 
●争点③について 
PTSDについては、
本件事故が原因で同疾患に罹患したという医師の診断書を排除。
PTSDの診断基準を満たすとは認められない
本件事故との因果関係を否定

うつ病については、精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会が報告している具体的な出来事に係る心理的負荷の強度を掲げた上で、
本件事故に起因してX1は種々のストレス要因にさらされた
本件事故との因果関係を肯定
 
●争点④について 
X1のうつ病の悪化については、自主避難者の行動として合理性を欠くX1の様々な行動等に伴うストレスが相当程度寄与

民法722条2項類推適用により、うつ病に伴う損害の賠償責任を減じている
 
●争点⑤について 
中間指針等は本件事故に基づき賠償すべき損害として一定の類型化が可能な損害項目やその範囲等を示したものにすぎない
中間指針等の対象にならなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではない
 
<解説>
本件事故からの自主避難者によるYへの損害賠償請求を認めた初めての判決。 
自主避難中の再度の転居に自主避難としての合理性がないと判断したが、一般論を述べたものではないと理解すべき。

自主避難中に起業を選択することや、それに伴い生じた損害をYに負担させることが相当とされる事情が認められる場合は、その合理性が認めらる場合もあり得る。
but
①放射線被ばくの危険性が解消されるまでの間暫定的に非難を続けるという自主避難の性質
②起業は失敗により経済的損失を拡大するリスクを内包
③成功しても資本の回収に長時間を要することがある

避難者が起業を選択したことにより生じた損害の賠償責任をYに負わせることが相当とされる事情が認められる場合はそれほど多くないと思われる。

低線量被ばくによる危険性についての判断がただちに自主避難を継続する合理的期間を決定するのではなく、危険性が残存しているといえない場合であっても、危険性に関する情報開示が十分でない状況であれば、自主避難を続けることに合理性は認められる

自主避難継続の合理性の立証責任は自主避難者の側にあることを前提として、本件事案における主張立証状況を踏まえた上での判断

民法722条2項類推適用により寄与度減額による割合的解決。

判例時報2337

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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