« 社会福祉法人の理事選任の紛争 | トップページ | 民法910条の価額請求についての事案 »

2017年9月 1日 (金)

大学の教員の成績評価権等が問題となった事案

大阪高裁H28.3.22      
 
<事案>
Xは大学の教授。 
Xは、Aについて、卒業研究の単位を与えることができないと判断。

本件学部の学部長であるYは、平成25年2月13日、Xが所属する本件学科の教員らで構成される教室会議に対し、Aを卒業させる方向で検討させるよう伝えた(本件諮問)
これを受けて、同月15日、臨時の教室会議が開催され、Aの指導担当教員をXから他の教員に変更することが決議された。Yは、同月20日、Aの指導担当教員をXからBに変更する旨決定し(本件措置)、同年3月4日、本件学部の教授会においてAの指導担当教員をXからBに変更した旨を報告。
 
<争点>
①本件諮問及び本件措置の違法性
②名誉毀損の有無
③Xの損害及び名誉回復処分の要否 
 
<原審>
大学教員が成績評価を行う権利又は利益は、大学における教授の自由と密接な関係を有する
but
成績評価を行うこと専門の研究結果を教授することの不可欠な内容をなすとまではいえず、教授に伴って付随的に生じるもの
教授の自由とは保障の程度が異なる。 

学校法人学生との在学契約上、適切な教育を行う義務を負い、組織体として自主的な秩序維持の権能も認められる必要がある

成績評価を行う権利又は利益は、当該教員の学生に対する指導状況や、当該学部が秩序維持の権能を行使する必要性等から合理的な制約に服する

違法性の有無は、Yの人事権の行使に逸脱、濫用が認められるかどうかで判断すべき

本件事実関係の下では、本件措置には必要性があり、目的は不当ではなく、本件措置によりXが受けた不利益は甚だしいとはいえず、本件措置の必要性や理由につき、Xに必ずしも十分な説明がなかったとしても、教室会議で意見を述べる機会は保障されていた
Yによる人事権の行使に逸脱、濫用はないとして、本件諮問とともに違法ではない

<判断>
原審と同じ枠組みを採用した上、本件措置の前提として、XのAに対するハラスメントの可能性が否定できない状況にあったことや、Xに代わってAの指導担当となったBが行った成績評価の内容、本件諮問を受けた教育会議の審議状況等を補足して、本件措置や本件諮問が不当ではなく、かえって相当であった旨判示して、控訴を棄却。 
 
<解説>
大学における指導担当教員と学生との関係において、セクハラやパワハラなど、いわゆるアカデミックハラスメント(アカハラ)が問題となった事案で、本件と同様の枠組みを採用したものとして、大学教員を、必須科目の講義担当から外し、その研究室に学部4年生を配属せず、学科会議や専攻会議に出席させない措置を採ったことについて、
大学が有する人事権・業務命令権の行使としての職務命令権に基づくものであるが、大学教員の権利を制限する観点からこれを正当とするだけの合理的理由が必要であるとしつつ、人事権の濫用とは認められないとした裁判例。(東京地裁H24.5.31) 

成績評価権が問題となった事案として、大学教員が、論文を提出しなくても単位を認定するなど、単位認定基準を変更したことに関し、学部長から、学生への説明文を用意して事前に見せるよう不当な要求をを受けたとして損害賠償を求めた事案において、
成績評価権は、教育の自由から派生したものではあるが、学部の有する単位認定権限や秩序維持権限などによって合理的な制約を受けるものであって、学部長の要請に違法性はないとした裁判例。(東京高裁H22.1.21)

判例時報2335

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 社会福祉法人の理事選任の紛争 | トップページ | 民法910条の価額請求についての事案 »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132655/65738647

この記事へのトラックバック一覧です: 大学の教員の成績評価権等が問題となった事案:

« 社会福祉法人の理事選任の紛争 | トップページ | 民法910条の価額請求についての事案 »