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2017年9月17日 (日)

市の、地縁による団体に対する、役員を交代するまで当該地域における投資的事業を休止することが違法とは認められなかった事例

広島高裁岡山支部H29.2.2      
 
<事案>
X:地方公共団体Yに属する特定の地域の住民全員で構成する地方自治法260条の2第1項所定の地縁による団体。
Yは、Xを、当該地域の住民との窓口としていた。 
 
<原審>
本件指導が行政指導か否かはともかく、Yの投資的事業の実施権限を背景としてXに役員交代等を事実上強制してその自治権を侵害したものであり、Xの構成員にだけYの投資的事業による恩恵を享受させない差別をしたもの

Xに対し、非財産的損害等の賠償義務がある
 
<判断>
本件通知は、全体として読めば、Xを当該地域の住民との窓口をしているYが、当該地域におけるYの投資的事業を円滑に実施するため、Xに対し、Xの役員交代等を求めた行為⇒行政指導である。

Xの役員は、当該地域の住民全員の総意によって選任され、Yの行う施策の説明等の相手方としてYの職員と対応⇒Xの役員の前記行為は、Xの組織的な行為

当該地域とその周辺では、Xの役員の前記行為により、行政施策の円滑な実施を不当に妨げられる状況があった⇒Yにおいて、その事情を考慮し、当該阻害要因が解消するまでの期間を目安として、当該地域における一部の投資的事業を一時的に休止することは、Yの投資的事業の実施に係る裁量権の範囲内にあるもの。

これがXが行政指導に従わないことを契機としてされたものであり、それによってXに不利益が生じたとしても、その不利益は、行政手続条例の禁止する「不利益な取扱い」には当たらない
国賠法上の違法性があるとは認めなかった
 
<規定>
行政手続法 第32条(行政指導の一般原則) 
行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない
 
<解説>
●本件通知がXに役員交代等を求める行為⇒行政指導。
行政指導が国賠法の「公権力の行使」に該当することは、多くの裁判例が認めるところ。
その違法性の判断基準も、平成5年の行政手続法の制定及び各地方公共団体の行政手続条例の制定によって、相当明確になっている。

●行政手続法32条2項は、行政指導に携わる者は、その相手方が、行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならないと規定。
「不利益な取扱い」とは、同法1項が、行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであると規定していることを受けて、これを否定するような不当なもの、すなわち、
制裁的な意図をもって行う行為や、相手方の任意性を損なうものをいい、不利益効果のある行為一般をいうわけではない(塩野等)。

各地方公共団体の行政手続条例においても、同様に解される。

市がマンションを建築しようとする事業主に対して指導要綱に基づき教育施設負担金の寄付を求めた行為が違法な公権力の行使に当たるとした最高裁H5.2.18。

●行政指導の適法性が問題となった事例は許認可等の権限と関連するものが多いのに対し、本件はいわゆる行政対象暴力を背景にして、地方公共団体のに広範な裁量権がある投資的事業の実施権限と、当該地域の住民全員で構成する地縁による団体の自治権が問題となった事例

判例時報2336

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