自宅に隣接した場所に折り畳み式ゴミボックスを設置された住民の道路占有許可処分の取消しを求める原告適格(否定)
津地裁H28.12.8
<事案>
自宅に隣接した場所に折り畳み式ゴミボックスを設置された住民が、本件ゴミボックス設置を許可した道路占有許可処分の取消しを求める原告適格があるのか否かが問題となった事案。
Xが取消の理由としているのは、
①本件ゴミボックスの設置により、Xは交通上の危険にさらされており、安全な交通環境等で生活する利益を侵害された
②Xは自宅敷地の利用を制限され自宅敷地の市場価値も下落する
<争点>
Xに本件処分の取消しを求める原告適格があるのか否か
<規定>
行訴法 第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。
<判断>
道路法が道路の占有について制限を設けた趣旨及び目的は、道路の構造を保全し、交通の障害を防止することによって、広く一般的公益を保護することにあり、同規定において考慮されている利益は、一般に道路を利用する者が共通して持つ一般的な利益であり、当該道路近隣の居住者の利益の保護は、前記一般的公益の保護の結果として、反射的に実現されるにすぎない。
道交法についても、当該道路の近隣の居住者の利益保護は、道路における危険が防止され、円滑な交通が保たれるという一般的な利益が確保される結果として、反射的に実現されるにすぎない。
以上のような道路法32条、道交法77条の各規定の趣旨及び目的、これらの規定が道路占有許可、道路使用許可を通じて保護しようとしている利益の内容及び性質を考慮
⇒本件設置場所に隣接して居住するXの安全な交通環境等の生活上の利益及び財産権が一般的な利益以上に個別具体的な利益として保護されているとはいえない。
⇒
Xの本件処分の取消しをもとめる原告適格はない。
<解説>
行訴訟9条1項の「法律上の利益を有する者」 について、法律上保護された利益説。
①処分行政庁B社に対してしたガス管の埋設を目的とする道路占有許可処分の取消訴訟で、原告的確を肯定したが請求を棄却した事案。
②墓地経営許可処分がされた土地の周辺住民のうち、違法な墓地経営に起因する周辺の衛生環境悪化により健康又は生活環境の著しい被害を直接に受けるおそれのあるものには原告適格があるとした事例。
③産業廃棄物処理施設付近に居住する住民が施設設置許可処分の取消訴訟の原告適格を肯定した事例。
④成田空港への航空機燃料輸送暫定パイプライン埋設のための道路占有許可処分をしたところ、住民からの取消訴訟について原告適格を否定した事例、
⑤道路法92条の不用物件の管理者がした使用承諾処分により営業上重大な支障を被った第三者の取消訴訟について原告適格を肯定した事例。
判例時報2337
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