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2017年9月19日 (火)

硬式野球部の部活動中の事故について、顧問兼監督教諭の注意義務違反が認められた事例

静岡地裁H28.5.13      
 
<事案>
高等学校の硬式野球部の部活動において、打撃投手を務めていた原告が、その右側頭部に、打者が打ち返したボール(硬球)が直撃した事故(本件事故)により後遺障害が残存⇒被告に対し、国賠法1条1項に基づき損害賠償を請求。 
 
<争点>
①本件野球部の顧問兼監督を努めていたA教諭の職務行為の違法性(過失による職務上の義務違反)
②本件事故による原告の損害
③過失相殺の要否 
 
<判断>
●争点①(A教諭の職務行為の違法性の有無)
高等学校における部活動を指導、監督する者として、A教諭は、部活動を行う生徒の生命及び身体の安全に配慮する義務に基づき、打撃投手を務める生徒に対し、一般財団法人製品安全協会によるSGマークが付けられている投手用ヘッドギアを着用するよう指導すべき職務上の注意義務を負っていた。
本件高校には投手用ヘッドギアが存在しており、A教諭も部活動に立ち会っていたにもかかわらず、原告に対し、投手用ヘッドギアを着用するよう指導を行っていなかった
A教諭の職務行為には違法性が認められる
 
●争点②(本件事故による原告の損害) 
◎ 当事者間で争われたの:
①将来の治療費、②後遺障害逸失利益、③後遺障害慰謝料
本件事故により、てんかん発作が起きる可能性のある脳波異常残存(「鋭波」の混入)等が残存したものの、「棘波」の混入は見られなかった

①学校の管理下における生徒等の災害に関して適用される独立行政法人日本スポーツ振興センター障害等級認定の基準に関する規程(平成15年度規程第7号)の定める障害等級第12級の13は、「発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの」には該当しないが、鋭波であっても、てんかん発作を引き起こす可能性を否定できない
②本件事故による後遺障害の存在を認めた上、その程度に関し、再度頭部につい衝撃が生じることは避ける必要があり、てんかん発作が発現する可能性も残っていることから、ある程度職業選択に制限が生じると認められること
③現在の原告の生活状況等を総合考慮

規程の定める障害等級14級の9等の「局部に神経症状を残すもの」と同等のものであると認めるのが相当。

◎ 原告の損害について、公益財団法人日本高等学校野球連盟(高野連)が保険契約者として加入している普通傷害保険契約の保険会社及び独立行政法人日本スポーツ振興センターから原告に対し、合計90万7687円が支払われていた
⇒これらの既払金の充当方法が争われた。

前記保険会社から支払われた金員は、いずれも損害費目との結びつきが明確
原告と被告との間において、損害の発生時に遡って損害賠償債務のうち当該損害費目の元本に充当するとの黙示の合意が存在するものと認めるのが相当
⇒元本への充当を認めた。

前記充当の合意により消滅する損害賠償債務の元本に対する遅延損害金の扱いについて:
不法行為責任に関し、不法行為時に全損害が発生してこれに対する遅延損害金も発生すると観念するのは、簡明、迅速な損害賠償の処理等を目的とする一種の擬制にとどまる

保険金等が通常必要かつ相当な期間内に支払われた本件においては、当事者の意思に鑑み、損害の発生と同時に支払がなされたものとして、被害者には当該保険金額に相当する元本に対する遅延損害金は発生していないと解することができる
 
●争点③(過失相殺の要否) 
被告:本件事故の当時、原告の前にはL字型ネットが設置されていた⇒原告は、投球後に同ネットに頭部を隠すことで本件事故を回避することができたとして、3割の過失相殺を主張。

①投手用ヘッドギアは、打撃投手を務める者と打者との距離及び打球の速さに鑑み、L字型ネットだけでは当該打撃投手が打球を避けられない場合があることなどから高野連がその着用を義務付けたもの
②本件の打撃練習が、ハーフバッティングという打撃投手と打者の距離が公式ルールで定められた距離よりも短いものであり、打者の打球が打撃投手の頭部に当たる可能性が一層高かった。

A教諭の過失は重大であったとして、損害の衡平な分担という見地から、過失相殺を認めることは相当でないと判断。

判例時報2336

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