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2017年9月28日 (木)

自己破産申立代理人の不法行為責任(財産散逸防止義務違反)

千葉地裁松戸支部H28.3.25      
 
<事案>
A社(代表取締役B)は、弁護士法人であるY1に自己破産の申立を委任し、Y1の社員であるY2が担当。
Xが破産管財人に選任された。
 
①Y2がA社の財産からBに対し役員報酬等として115万8220円を支払うなどしたこと、②破産申立ての弁護士報酬として相当金額を250万円を上回る金銭及びゴルフ預託金回収の弁護士報酬として800万円をY1に入金したことは、破産申立代理人として負うべき財産散逸防止義務に違反しており、不法行為に該当。

Xが、Y1に対しては、弁護士法30条委の30第1項、会社法600条に基づいて、
Y2に対しては、民法709条に基づいて、
それぞれ損害金合計1165万8220円の支払を求めた事案。

Y2がXに対して、XのYらに対する前記損害賠償請求の訴えの提起等が不法行為に該当すると主張して、慰謝料30万円の支払を求める訴えを提起。
 
<判断>
●債務者から破産申立てを受任した弁護士(弁護士法人)は、破産制度の趣旨に照らし、破産管財人に引き継がれるまで債務者の財産が散逸することのないよう、必要な措置を取るべき法的義務(財産散逸義務)を負い、この義務に違反して破産財団を構成すべき財産を減少・消失させたときは、不法行為を構成するものとして、破産管財人に対し、損害賠償責任を負う。

●Y2がA社の財産からBに支払うなどした115万円は、本件委任契約以降破産開始手続申立てまでのBの職務執行の対価である報酬と認めるのが相当であり、一般破産債権にすぎない取締役の報酬債権の支払は偏頗弁済に当たり、破産財団を構成すべき財産の減少を招いた

Y2がA社の財産からBに支払うなどした金銭の内前記115万円を含む115万8220円について、Y2の不法行為が成立。

●破産申立代理人が破産者から支払を受ける弁護士報酬は、破産手続においては、役務の提供と合理的均衡を失する場合、合理的均衡を失する部分の支払行為は、破産債権者の利益を害する行為として否認の対象となり、その支払を受領することは破産財団を構成すべき財産を減少させたもの

具体的な弁護士報酬の額が役務の提供と合理的均衡を失するか否かの判断は、客観的な弁護士報酬の相当額との比較において行うのが相当であり、
事件の経済的利益、事案の難易、弁護士が要した労力の程度及びその時間その他の事情を考慮し、日弁連が定めた旧日弁連報酬基準、弁護士の報酬に関する規程等も斟酌し、総合的に勘案すべき。
本件委任契約における前記諸事情を斟酌すると、本件委任契約の弁護士報酬相当額は200万円を上回ることはない⇒弁護士報酬450万円のうち200万円を超える部分は、Y2の役務の提供と合理的均衡を失する
⇒Y2がその部分をY1に入金したことについて、不法行為が成立。

●ゴルフ預託金回収の弁護士報酬相当額は、前記諸事情を斟酌すると、530万円を上回ることはない。
⇒弁護士報酬800万円のうち530万円を超える部分は、役務の提供と合理的均衡を失するものであり、Y2がその部分をY1に入金したことについて、不法行為が成立。 

●ゴルフ預託金を全額又はこれに近い金額回収することは通常容易ではなく、Y2はゴルフ預託金2100万円のうち1600万円を回収しており、破産申立て代理人としては可及的速やかに破産手続開始申立てを行うことが望ましいものの、ゴルフ預託金の回収行為が当然に財産散逸防止義務違反になるとまでは言い難い。
⇒弁護士報酬800万円全額についての不法行為の成立は認めなかった。 
 
<解説>
労働者に対する給与等は破産手続開始後は財団債権となるその支払は破産財団を構成すべき財産を減少させるものとはいえない
but
代表者の報酬は一般の破産債権にすぎない⇒その支払は他の破産債権者との関係で偏頗弁済に当たる。 

弁護士報酬の支払について否認権の行使が認められた裁判例はあるが、本件では、否認権の行使ではなく、不法行為に基づく損害賠償として請求。

判例時報2337

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