独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済給付等における因果関係の主張立証責任
東京地裁H28.10.14
<事案>
Xらは、子及び夫が後遺障害が残り、又は死亡したのは、タミフルの副作用⇒X1、X2は機構法に基づく障害児養育年金の給付請求を、X3は機構法に基づく遺族一時金及び葬祭料の給付等の請求⇒いずれも不支給とする各決定⇒本件各決定の取消しを求めて本訴を提起。
<争点>
①A、Bの知的障害及びCの死亡とタミフルとの因果関係の主張立証責任は、Xら(救済給付請求者)が負うのか、それともY(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が負うのか
②タミフルの服用と前記知的障害や死亡との間に相当因果関係が認められるか
<判断>
●争点①について:
副作用救済給付の支給決定は、授益的処分としての性質を有するものというべきであり、その根拠法規である機構法16条1項が副作用救済給付の請求権について規定する一方、同条2項が同条1項の規定にかかわらず、これを支給しない場合を規定するという機構法の文言・構造等
⇒因果関係の主張立証責任はXら(救済給付請求者)にある。
● 争点②について:
Xらの主張:タミフルに中枢神経抑制作用があることを前提に、服用したタミフルにより、A及びBには重篤な脳障害が残存したし、Cは突然死した
①経口投与されたタミフルについて、オセルタミビル未変化体が脳内に移行する割合は限られており、インフルエンザ罹患時にオセルタミビル未変化体の脳内濃度が上昇するとしても、脳内の各種受容体等へ有意に作用するほとには至らないものと考えられ
②動物実験の結果についても、臨床用量のタミフルが、中枢神経抑制作用を有することを裏付けるものとは評価し難い
⇒
Xらの主張を排斥。
疫学調査の結果等もタミフルの服用と異常行動との間に因果関係が存在することを裏付けるとも言い難い。
⇒
タミフルの服用とAの精神運動発達遅滞との間、Bの重度脳障害との間、Cの死亡との間には、それぞれ因果関係があるとはいえない。
⇒Xらの請求をいずれも棄却。
判例時報2335
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