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2017年8月31日 (木)

社会福祉法人の理事選任の紛争

東京高裁H29.1.31       
 
<事案>
Xは、
(ア)自らが保育園、老人介護施設などを設置運営する社会福祉法人であるY(代表者理事A)の理事に就任した旨
(イ)AはYの理事兼評議員でない旨
各確認を求めて提訴。 
 
<原審>
Bの役員人事に関する提案はされたが、理事の1人が反対意見を述べた結果、提案された人事案は承認されなかった
⇒(ア)の確認請求を棄却、(イ)の確認の訴えを不適法として却下。
   
Xが控訴し、
(ア)の確認請求を(ウ)XがYの理事兼常務理事の権利義務を有することの確認請求に交換的に変更し、
(←平成28年3月末日の経過により、当初の2年の理事任期が満了したことから、社会福祉法人においても役員が退任した場合に後任者が選任されるまでに従前の役員がその権利義務を有するとの任期伸長規定(一般法人法75条1項、会社法346条1項)が類推適用されるべきとの主張)
(エ)YがXを理事兼常務理事の地位を認めなかったことにつき不法行為に基づく慰謝料請求を追加
 
<争点>
①役員会におけるXの理事選任、事務理事指名の有無
②Xの理事兼常務理事の権利義務を有する地位の有無
③Aが理事兼評議員でないことの確認請求に係る訴えの利益の有無
④Yの不法行為の成否・損害論
⑤②に関連して、社会福祉法人における役員の退任後、後任者が選任されるまでの任期伸長規定の類推適用の可否
 
<判断>
Xが役員会でYの理事に選任されて就任し、併せて新理事長となったBから常務理事に指名されたと認定(争点①)

2年の任期が経過したことによりXは理事を退任し、その後Xが理事兼常務理事の権利義務を有するとの法律上の根拠はない
(争点②)⇒(ウ)は棄却 

Xは(イ)の確認を求める法律上の利益はない⇒不適法として却下

Xが理事に選任されたにもかかわらず、Yが一貫して否定し続けたことは不法行為に当たる⇒慰謝料10万円を相当と認める。

争点⑤について、
①当時の(平成28年法律21号による改正前のもの)社会福祉法には一般法人法75条1項、会社法346条1項にみられる任期伸長規定がない
②一般法人法78条等の準用規定はあるが、同法75条1項は準用しておらず、
③定めがない以上適用の余地はない

Xが理事兼常務理事の権利義務を有するという法律上の根拠はない
 
<解説> 
社会福祉法人の役員等に欠員が生じた場合に関する先例:
①「社会福祉法人において、理事の退任によって定款に定めた理事の員数を欠くに至り、かつ、定款の定めによれば、在任する理事だけでは後任理事を選任するのに必要な員数に満たないため後任理事を選任することができない場合において、仮理事の選任を待つことができないような急迫の事情があり、かつ、退任した理事に後任理事の選任をゆだねても選任の適正が損なわれるおそれがない場合には、民法654条の趣旨に照らし、退任した理事は、後任理事の選任をすることができる」(最高裁H18.7.10)

②退任理事が仮理事選任の申立てをしたのに対し、処分行政庁が職権で別の者を仮理事に選任する処分をした場合に、当該退任理事は処分行政庁の行った仮理事選任処分取消訴訟を提起する原告適格を有する(広島高裁H27.10.28) 

判例時報2335

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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