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2017年8月 7日 (月)

肝機能が悪化した場合に専門の医療機関を紹介する診療契約締結とその不履行が認められた事例

京都地裁H28.2.17      
 
<事案>
Xが、Yの開設するYクリニックにおいて、Yとの間で、B型肝炎の治療を目的とした診療契約を締結
but
Yクリニックの担当医師であるA医師が、適切な診察を怠った結果、肝硬変及び肝がんに罹患

診療契約の債務不履行に基づき、1億2278万円余の損害賠償請求。

B医師は、A医師にXを紹介するにあたり、XがB型肝炎ウイルスキャリアであり、肝機能障害に注意すべきであるとの引継ぎ。
but
Yクリニックは、Xに対し積極的に肝炎の治療は行わなかった。
Xは平成17年10月、C病院で肝がんの疑いを指摘され、同年11月にはD病院で肝腫瘍と診断された。
 
<判断> 
①Yクリニックでの治療を受ける前のB医師の治療でもバセドウ病の治療を受けており、B型肝炎の治療を受けていない
②YクリニックはB型肝炎の専門的な治療を行う医療機関ではない
③XもYクリニックにおいて積極的な肝炎の治療を受けていたとまでの認識がない

X・Y間でB型慢性肝炎に関する諸検査等を積極的に実施するなどの治療管理を内容とする診療契約が成立したとまでは認定できない。
but
①A医師はB医師からXがB型肝炎ウイルスキャリアであり、肝機能障害に注意すべきである旨の引継を受けた
②これを受けて、A医師は、第1回目の診察の際、血液検査を実施し、その2か月後の診察の際には、腹部エコー検査及び腫瘍マーカー検査を実施し、「肝機能←ならG紹介」とカルテに記載している
③甲状腺機能亢進症の治療で処方されるメルカゾールにより肝機能が悪化することがあり、治療の際にも肝機能には注目しなければならない
④A医師は、定期的にXの血液検査を実施し、GOT及びGPTの各値をカルテに記載

A医師は、バセドウ病の治療を継続する際に、肝機能に着目し、Xの肝機能が悪化した場合には、専門医療機関を紹介する必要があるとの意思を有していた

Yは、Xの肝機能が悪化した場合には、肝臓専門の医療機関を紹介する診療契約を締結したと認定。

①平成15年6月に実施された血液検査によれば、GOT値がGPT値を上回るような数値でないものの、GOTが97、GPTが166といずれも急激に上昇しており、肝硬変への進行が疑わる数値が表れている
②A医師自身も、前記検査結果を受けてカルテに「肝機能←」と記載

平成15年6月の時点で、XをG等の肝臓の専門医療機関に紹介すべき義務があったのに、これに違反した債務不履行がある。

Yの債務不履行とXの肝硬変及び肝がん罹患との因果関係について、
平成15年6月の時点でXが肝臓の専門医療機関において治療を受けていれば、少なくとも、肝がんへの進行時機を遅らせることができたとして因果関係を肯定

損害については、4割の過失相殺
⇒954万円余の限度で請求の一部を認容。
 
<解説>
医師は、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準に従った診療を行うべき注意義務を負っている。

医師が自ら医療水準に応じた診療をすることができないときは、医療水準に応じた診療をすることができる医療機関に患者を転送する義務がある
(最高裁)。 

判例時報2332

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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