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2017年8月20日 (日)

親権停止審判申立事件を本案事件とする審判前の保全処分申立事件で、本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性を認め、未成年者に対する職務の執行を停止した事例

親権停止審判申立事件を本案事件とする審判前の保全処分申立事件
 
<事案>
児童相談所長は、未成年者を一時保護し、親権者らについて親権停止の審判を求めるとともに、同審判が効力を生じるまでの間、親権者らの未成年者らに対する職務の停止を求める審判前の保全処分を申し立てた。 
 
<判断>
未成年者の病状は今後予定される手術の内容等
⇒未成年者の親権者としては、未成年者を頻繁に見舞うとともに、医療従事者と十分に意思疎通を図り、緊急の事態が生じた場合も含めて、未成年者が必要としている医療行為が実施されるよう、迅速かつ適切に対応する必要がある。 

親権者らのこれまでの対応や現在の生活状況等
親権者らが迅速かつ適切に対応できるかどうか疑問がある。

本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性があると判断し、申立人の申立てを認容
 
<規定>
民法 第834条の2(親権停止の審判)
父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる
2 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

家事事件手続法 第174条(親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判事件を本案とする保全処分)
家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所。以下この条及び次条において同じ。)は、親権喪失、親権停止又は管理権喪失の申立てがあった場合において、子の利益のため必要があると認めるときは、当該申立てをした者の申立てにより、親権喪失、親権停止又は管理権喪失の申立てについての審判が効力を生ずるまでの間、親権者の職務の執行を停止し、又はその職務代行者を選任することができる。

2 前項の規定による親権者の職務の執行を停止する審判は、職務の執行を停止される親権者、子に対し親権を行う者又は同項の規定により選任した職務代行者に告知することによって、その効力を生ずる
 
<解説>
●未成年者が病気・事故等のために手術や治療を必要としている場合、医療機関がその未成年者に対し医療行為を行うには、通常、親権者の同意が必要。
but
親権者が正当な理由もなく未成年者に対する医療行為についての同意を拒否して放置することにより、未成年者の生命・身体が危険にさらされている場合がある(=医療ネグレクト)。 

親権停止(民法834条の2)は、平成23年の民法改正によって設けられた制度であり、親権を喪失させるまでには至らない比較的程度の軽い事案や、一定期間の親権制限で足りる事案において、必要に応じて適切に親権を制限することができるようにするために設けられていたもの。

家庭裁判所は、親権喪失・親権停止等の申立てがあった場合において、親権者による虐待の程度が重大で子の心身に危険が生じている場合など、「子の利益のため必要がある」と認められる場合には、本案事件の申立人の申立てにより、本案審判が効力を生ずるまでの間、親権者の職務の執行を停止し、又はその職務代行者を選任することができる(家事事件手続法174条)。

● 本件では、保全処分の内容として、親権者の職務執行停止のみが申し立てられており、職務代行者選任は申し立てられていない。

未成年者につき一時保護が行われているため、親権者の職務の執行を停止しさえすれば、児童相談所長において親権の行使が可能とされている(児童福祉法33条の2)。
but
職務代行者を選任しない場合、職務代行者に告知をすれば親権者への告知を待たずに審判の効力が生ずるとする家事事件手続法174条2項を適用することができない(同法74条2項及び109条2項により、親権者に告知されたときに効力を生じる)。

● 医療ネグレクト事案における本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性についての考慮要素
①未成年者の疾患及び現在の病状
②予定される医療行為及びその効果と危険性
③予定される医療行為を行わなかった場合の危険性
④緊急性の程度
⑤親権者が未成年者に対する医療行為を拒否する理由及びその合理性の有無等

本件についても、前記の考慮要素等を総合考慮の上、未成年者の病状が深刻であって、直ちに治療及び手術を受ける必要性があり、これを受けなった場合には未成年者の生命に危険が生じかねない事態であることを重視し、親権者らがこのような緊急事態に迅速かる適切に対応できるかどうか疑問であるとして、本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性を認めた

判例時報2333

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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