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2017年8月 3日 (木)

不特定多数の消費者に向けられた働きかけと消費者契約法12条の「勧誘」(肯定)

最高裁H29.1.24       
 
<事案>
消費者契約法2条4項の適格消費者団体であるXが、健康食品の小売販売を営むYに対し、Yが自己の商品の原料の効用等を記載した新聞折込チラシを配布することが、消費者契約の締結について勧誘をするに際し、いわゆる不実告知(法4条1項1号)を行うことに当たると主張⇒法12条1項及び2項に基づき、新聞折込チラシに前記の記載をすることの差止め等を求めた事案。

<規定>
消費者契約法 第一二条(差止請求権)
適格消費者団体は、事業者、受託者等又は事業者の代理人若しくは受託者等の代理人(以下「事業者等」と総称する。)が、消費者契約の締結について勧誘をするに際し、不特定かつ多数の消費者に対して第四条第一項から第三項までに規定する行為(同条第二項に規定する行為にあっては、同項ただし書の場合に該当するものを除く。次項において同じ。)を現に行い又は行うおそれがあるときは、その事業者等に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。ただし、民法及び商法以外の他の法律の規定によれば当該行為を理由として当該消費者契約を取り消すことができないときは、この限りでない。

2適格消費者団体は、次の各号に掲げる者が、消費者契約の締結について勧誘をするに際し、不特定かつ多数の消費者に対して第四条第一項から第三項までに規定する行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該各号に定める者に対し、当該各号に掲げる者に対する是正の指示又は教唆の停止その他の当該行為の停止又は予防に必要な措置をとることを請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

消費者契約法 第四条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

<争点>
本件チラシの配布が法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たるか否か?
 
<原審>
「勧誘」には不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれないところ、本件チラシの配布は新聞を購読する不特定多数の消費者に向けて行う働きかけ。
⇒前記の「勧誘」に当たるとは認められない。 
 
<判断>
事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしてもそのことから直ちに「勧誘」に当たらないということはできない
⇒原審の前記判断には法令の解釈適用を誤った違法がある。 
but
その事実関係からは、法12条1項及び2項にいう「現に行い又は行うおそれがある」とはいえない
⇒原審の判断は結論において是認することができる。
⇒原告の上告を棄却。
 
<解説>
そもそも、法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を図ること等を目的として(1条)、

事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為をしたことにより、消費者が誤認するなどして消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をした場合には、当該消費者はこれを取り消すことができることとし(4条1項~3項、5条)
さらに、一定の要件の下で適格消費者団体が事業者等に対して前記行為の差止め等を求めることができることとするもの(12条1項及び2項)。

事業者が、その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により働きかけを行うときは、その働きかけが個別の消費者の意思形成に直接に影響を与え、これにより当該消費者が誤認するなどして消費者契約を締結することもあると考えられる

事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を「勧誘」に当たらないとして法の適用対象から一律に除外することは、前記の法の趣旨目的に照らし相当とはいえない。

判例時報2332

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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