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2017年8月24日 (木)

特別の事情による仮処分の取消しのための担保の事由が消滅したとされた事案

東京高裁H28.7.20      
 
<事案>
Xは、Yとの間で抵当権設定登記手続をする合意をしたと主張して、Yを債務者とする土地(本件土地)の処分禁止の仮処分命令を申し立て、その旨の仮処分命令(本件仮処分命令)を得た上、Yに対する抵当権設定登記手続を求める訴えを提起(別件訴訟①)。 

Yは、民保法39条1項に定める特別の事情があるとして、本件仮処分命令の取消しを求め⇒東京地裁は、担保を立てることを条件として本件仮処分命令を取り消す旨の決定をし、Yは担保(本件担保)の供託

Xは、別件訴訟①において訴えを変更し、Yが他社に所有権を移転する登記手続をするとともに本件仮処分命令の取消申立てをして貸付金の回収を不可能にしたとして、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償等を求めた。
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東京地裁は、XがYとの間で本件土地にXを抵当権者とする抵当権の設定登記手続をする旨の合意をしたとは認められないなどと判断し、損害賠償請求を棄却。
Xは、不服として控訴を提起したが、別件訴訟①の控訴審で主張を変更し、
主位的に、抵当権設定合意に基づく信義則上の義務の不履行、
予備的に、共同不法行為に基づく損害賠償請求
⇒東京高裁はXの請求を棄却、上告・上告受理申立も棄却・不受理。

Xは、別件訴訟①における請求とは異なるものとして、Yらに対し、特別事情による本件仮処分命令の取消申立てによって貸付金の回収が不能になったことなどを理由とする損害賠償等を求める訴えを提起(別件訴訟②)。
Yは、別件訴訟②の係属中に、本件担保の事由が消滅したと主張してその取消しを申し立て、東京地裁は、本件担保を取り消し⇒Xが、原決定を不服として、その取消しを求めて即時抗告
 
<規定>
民訴法 第79条(担保の取消し)
担保を立てた者が担保の事由が消滅したことを証明したときは、裁判所は、申立てにより、担保の取消しの決定をしなければならない
 
<判断>
本件担保について、Xが本件抵当権設定登記請求権を行使すれば回収し得た金員を本件取消決定により回収し得なくなるであろう損害を担保するもの

本件担保について担保事由が消滅したとは、本件取消決定により取り消された本件仮処分命令において疎明されたと判断された被保全権利である本件抵当権設定登記請求権の不存在がその後の訴訟手続において確定した場合又はそれと同視すべき場合をいうものと解される。 

Xが別件訴訟①で主張したXのYに対する損害賠償請求権は、本件仮処分命令の被保全権利である本件抵当権設定登記請求権の発生原因事実及び本件担保が担保する損害を包摂すると解され、これを棄却する判断が確定しており、仮に、別件訴訟①の控訴審で主張した損害賠償請求権が一審の訴訟物と異なると解するとすれば、Xは貸付金の回収困難を発生原因とする不法行為に基づく損害賠償請求と同一の訴えを提起できない。

本件においては、本件担保の事由は消滅したとして、抗告を棄却。
 
<解説>
民訴法79条1項の「担保の事由が消滅したこと」の意義
最高裁H13.12.13は、「担保供与の必要性が消滅したこと、すなわち、被担保債権が発生しないこと又はその発生の可能性がなくなったこと」をいう。

民事保全における請求の基礎の同一性について、
最高裁昭和26.10.18は、本案の訴えの不提起による保全取消し(民保法37条)における本案について、請求の基礎が同一であれば足りると解し、
最高裁H24.2.23も、仮差押命令について、当該命令に表示された被保全債権と異なる債権について、これが前記保全債権と請求の基礎を同一にするものであれば、その実現を保全する効力を有するものと判示。
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保全処分の手続においては、同一訴訟手続内で行われる訴えの変更の可否が問題となる場面と異なり、審理を行う裁判所が同一であるとは限らない

請求の基礎の同一性の有無の判断にあたって訴えの変更の可否とは異なる考慮がされる余地もないではないと思われるとの指摘(最判解説)。

本決定は、最高裁H13.12.13を引用した上で、
別件訴訟①の第一審において、保険処分禁止仮処分の被保全権利に係る発生原因事実を請求原因事実として包含する損害賠償請求権が棄却され、また、控訴審における訴え変更後の請求も棄却され、その判断が確定したことを認定し、
本件抵当権設定登記請求権の不存在がその後の訴訟において確定した場合又はこれと同視すべき場合であると認められるとし、別件訴訟②の提起にかかわらず、担保の事由の消滅を認めたもの。

判例時報2334

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