« 親権停止審判申立事件を本案事件とする審判前の保全処分申立事件で、本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性を認め、未成年者に対する職務の執行を停止した事例 | トップページ | 高浜原発差止仮処分命令申立事件 »

2017年8月21日 (月)

賃金減額協定による賃金減額が認められなかった事例

大阪高裁H28.10.26      
 
<事案>
Yの従業員であるXらが、Yは平成23年8月から10月に支払う賃金について一方的に減額してその一部を支払っただけ⇒Yに対し、未払賃金と遅延損害金の支払を求め、
一部のXらは、賃金を支払わないことが不法行為に該当するとして、予備的に不法行為に基づく損害賠償金の支払を求めた。 

<争点>
(1)
14パーセント減額協定が就業規則の変更等としてXらに効力を及ぼすか、
14パーセント減額協定に対応する合意がXらとYとの間で個別に成立し、個別合意として効力を及ぼすか、
14パーセント減額協定が労働協約としてXらに効力を及ぼすか
(2)
14パーセント減額協定の効力がXらに及ばない場合、Xらの賃金はいくらか 
 
<判断>
●争点(1)について
①14パーセント減額協定は就業規則ないしそれに準ずるものとしてXらに効力を及ぼすとは認められない
②14パーセント減額協定に対応する合意がXらとYとの間で個別に成立したとは認められない
③14パーセント減額協定はYとA労働組合関西地方C支部が確認書を作成した時点で労働協約として効力を生じたと認めるのが相当であるが、C支部Y分会を脱退したXらについては労働協約としての効力は及ばない

①就業規則を変更する場合には、その内容の適用を受ける事業場の労働者が就業規則の内容を知り得る状態に置かれていることを要すると解するのが相当
②控訴人が就業規則の変更とみるべきと主張する社内報には、賃金改定の内容や説明が記載されているものの、それが就業規則の変更となる旨の説明はない上、交渉結果の報告等を交えたものとなっていることからすると、就業規則の体裁も整っていない

前記社内報は、協定内容等の説明文書の域を超えるものとはいえず、前記社内報に賃金改定の内容等が記載されていることによって、従前の就業規則が変更されたとみることはできない。

労使慣行(C支部との協議あるいは従業員との意見交換を踏まえた上で、社内報による周知により賃金改定を行う)の主張も否定

①労使慣行は、就業規則、労働協約などの成文の規範に基づかない集団的な取扱いが長い間反復・継続して行われ、それが使用者と労働者の双方に対して事実上の行為準則として機能する場合の問題であり、成文の規範であり所定の手続が必要とされる就業規則の変更の効力がこのような労使慣行により直ちに生じるものとは認め難い
②本件においては、およそ社内報による周知等によって賃金改定の法的効力が生じているとは評価し難く、労使ともに社内報による周知によって賃金の改定が実施されたと理解していたものとも認め難い
 
●争点(2)について 
Xらは、基本給協定、9パーセント減額協定及び逓増初任給協定に基づいて算定した賃金の支払を受ける権利を有している。
 
<規定> 
労契法 第7条
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

民法 第92条(任意規定と異なる慣習)
法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。
 
<解説>
●就業規則が法的拘束力を有するにはいかなる手続が必要か
最高裁H15.10.10(フジ興産事件):
就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を、適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきであると判示し、労契法7条においてもその旨を規定。
内規の形で労働組合に提示された退職功労金の支給基準について、体裁、手続面などを検討し、同基準自体は就業規則の一部ではないと判断した大阪高裁H27.9.29

●労使慣行について 
最高裁H7.3.9:
労使慣行が長期間にわたって反復継続して行われ、
②労使双方がこれを明示的に排除しておらず
労使双方、特に使用者の規範意識によって支えられている場合
には、「事実たる慣習」(民法92条)としてその法的効力を認める

判例時報2333

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 親権停止審判申立事件を本案事件とする審判前の保全処分申立事件で、本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性を認め、未成年者に対する職務の執行を停止した事例 | トップページ | 高浜原発差止仮処分命令申立事件 »

判例」カテゴリの記事

労働」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132655/65693611

この記事へのトラックバック一覧です: 賃金減額協定による賃金減額が認められなかった事例:

« 親権停止審判申立事件を本案事件とする審判前の保全処分申立事件で、本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性を認め、未成年者に対する職務の執行を停止した事例 | トップページ | 高浜原発差止仮処分命令申立事件 »