起立斉唱拒否等を理由に再任用教職員採用選考不合格⇒国家賠償請求
大阪地裁H28.12.12
<事案>
起立斉唱拒否等を理由に再任用教職員採用選考不合格⇒国家賠償請求
<判断>
先例(最高裁H23.5.30)に基づき、本件指導はXの歴史観・世界観を否定するものではない⇒Xの思想及び良心の自由を直ちに制約せず、また、本件指導及び本件不合格は、Xの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの、本件指導の目的及び内容並びに制約の態様等を総合的に較量すれば、前記制約を許容し得る程度の必要性と合理性が認められる。
自己申告票については教職員に特定の世界観や人生観等、個人の人格形成に必要ないしはそれと関連のある事項の記載をさせるものとは認められない。
⇒
本件所為及び自己申告票を提出しなかったことを本件不合格事由としたことについては、憲法19条に違反しない。
本件不合格に当たって、Xには本件所為のほか、その後の職務命令違反行為や自己申告書の不提出等複数の事由の存在が認められる
⇒
他の教員と事情が同じであるとは認め難い
⇒
本件不合格は憲法14条に違反しない。
①本件指導は児童に対するものではない、②本件不合格はXの行為を理由にするもの⇒それぞれは児童の権利を侵害しない。
教育の自由は現行法規の体系下での教育を実施する上で認められるところ、本件不合格はXの行為を理由とするもの
⇒教師の教育の自由を侵害しない。
①再任用の合否や採否の判断に関しては、市教委に広範な裁量権が認められているところ、②Xに係る各事情はXの教育公務員としての適性に疑義を抱かせるもの⇒これらの事情を考慮してXを不合格・不採用とすることに裁量権の逸脱・濫用はない。
<解説>
最高裁は、不規律等の職務命令違反を理由とする懲戒処分における裁量論の判断枠組を示している(最高裁H24.1.16)が、他方で、不起立等をした教員に対する再任用について裁量論のそれを示していない。
下級審では、
再任用についての教育委員会の広範な裁量を認めつつ、
「不合格等の判断が客観的合理性や社会的相当性を著しく欠く場合には」裁量権の逸脱・濫用を認めるべきという判断枠組を示した判決(東京地裁H27.5.25)。
この枠組みを踏まえ、不起立等の行為が消極的な態様で、その程度が重大であることの客観的な説明ができない
⇒行為の非違性を不当に重く扱う一方で他の具体的な事情を考慮することがなかったものとして、教育委員会の不合格の判断は、客観的合理性及び社会的相当性を欠き、裁量権の逸脱・濫用に当たるとされた事例(東京高裁H27.12.10)。
判例時報2332
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