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2017年7月24日 (月)

家屋課税台帳の登録価格について、需給事情による減点補正をすべき場合

宇都宮地裁H28.12.21      
 
<事案>
那須塩原市に所在する家屋に係る平成24年度家屋課税台帳の登録価格について、XがYに対し、需給事情による減点補正をすべきであるとして審査の申出
⇒Yが棄却する決定⇒Xが同決定の一部取消しを求めた。 
 
<解説>
固定資産の価格は、固定資産評価基準によって決定しなければならないとされているところ(地方税法403条1項)、平成24年度において適用される固定資産評価基準は、家屋の評価について、各個の家屋について評点を付設し、当該評点数に評点1点あたりの価格を乗じて当該家屋の価格を求める方法によると定める。
そして、各個の家屋の評点数は、
当該家屋の再建築費評点数を基礎とし
②これに家屋の損耗の状況による減点を行って付設するものとし、
さらに
家屋の状況に応じ必要があるものについては、家屋の需給事情による減点を行うものとしている。 
 
<争点>
①需給事情による減点補正率の適用は極めて限定的な場合に限られるべきか否か
②本件家屋において需給事情による減点補正率を適用すべきか否か、適用すべきとした場合の割合 
 
<判断>
●争点①について 
固定資産評価基準が需給事情による減点補正を認めている趣旨からすると、需要と供給の間に乖離がある場合には需給事情による減点補正をしなければならない需給事情による減点補正率を適用するのは極めて限定的な場合に限られるとまではいえない
 
●争点②について 
本件家屋所在地域の観光客入込数及び宿泊数等の著しい減退傾向
②上下水道の不存在
③公図未整備地区内に所在すること
④日光国立公園内に所在すること
土砂災害特別警戒区域内に所在すること

これらの要因を総合的に考慮すると、本件家屋において需給事情による減点補正を行う必要があり、
需給事情による減点補正率は15パーセントが相当。

減点補正率の算定にあたり各要因がどの程度影響を与えたか?
①の要因:一定程度影響を与える
②の要因:影響が大きいとはいえない
③の要因:影響がそれほど大きいとはいえない
④の要因:影響が大きいとはいえない
⑤の要因:大きく影響を与える
 
<解説>
固定資産評価基準は、需給事情による減点補正率の適用について、
建築様式が著しく旧式となっている非木造家屋、所在地域の状況によりその価格が減少すると認められる非木造家屋等について、その減少する価格の範囲において求めるものとする。」とのみ定め、具体的な適用場面をそれ以上明らかにしない。 

昭和42年10月21日改正の固定資産評価基準の取扱いについての依命通達
(1)・・・最近の建築様式又は生活様式に適応しない家屋で、その価額が減少するものと認められるもの。、
(2)不良住宅地域、低湿地域、環境不良地域その他当該地域の事情により当該地域に所在する家屋の価額が減少すると認められる地域に所在する家屋
(3)交通の便否、人口密度、宅地価格の状況等を総合的に考慮した場合において、当該地域に所在する家屋の価額が減少すると認められる地域に所在する家屋
について需給事情による減点補正を適用すると定めている。

本判決で大きく考慮された要因は⑤の要因と思われるが、これは、同要因を通達の環境不良地域((2))又は同地域に準ずる地域に該当する事情とした上で、土砂災害等が生じた急傾斜地の崩壊などが起きた場合には、住民等の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがあり危険性が大きいため、本件家屋の市場性に大きく影響を与えると判断した結果。

判例時報2331

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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