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2017年7月 5日 (水)

交通事故による高次脳機能障害の発症を認めた事例

大阪高裁H28.11.30      
 
<事案>
Xは、本件事故により左不全片麻痺と記憶障害を主とする本件高次脳機能障害を負ったとして、労災保険法に基づく障害給付の支給を請求
⇒処分行政庁が障害給付を支給しない旨の処分⇒Y(国)に対し右処分の取消しを求めた。 
 
<原審>
Xの請求を棄却。 
 
<判断>
高次脳機能障害が交通事故により発症したか否かを判断する重要なポイントとして
意識障害の有無とその程度
画像所見
因果関係の判定
が挙げられる。

①Xは、本件事故にあり、救命救急センターに搬送された当時、意識障害があり、その障害は20時間継続したもので、その障害の程度は重大なものであった。
②Xには、受傷直後に撮影された頭部CT及びMRI画像上、脳実質の損傷を窺わせる出血が認められる⇒慢性期の脳室拡大、脳萎縮が不明であったとしても、高次脳機能障害を否定するのは相当ではない。
③本件事故後におけるXの診療録、本件事故後におけるXの行動、他の疾病の可能性を総合考慮⇒本件事故と本件高次脳機能障害との間には因果関係が認められる

Xの請求を認容。
 
<解説>
高次脳機能:
視覚や聴覚等の各感覚系の情報に基づく広い意味での、知識に基づいて行動を計画し、実行する精神活動であり、これには、知覚、学習、記憶、概念形成、判断、言語活動、抽象的思考等が含まれるとされ、これらに障害を起こすことを高次脳機能障害というとされる。

平成15年8月8日付けの労働者災害補償保険における「神経系統の機能または精神の障害に関する障害等級認定基準について」の厚生労働省労働基準局通達によれば、
①意思疎通能力
②問題解決能力
③作業負荷に対する持続力・持久力
④社会行動能力
の4能力に区分して、その能力の程度を6段階で評価して等級認定されることになるが、
脳外傷による高次脳機能障害と判断するためには、
①意識障害の有無とその程度・長さの把握、
②画像上での脳室拡大・脳萎縮等の有無
③因果関係の判定(他疾患との鑑別)
が重要なポイント。

判例時報2329

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