死刑確定者の再審請求の弁護人との立合いのない面会の申出に対する制限の仮の差止め
東京地裁H28.12.14
<事案>
死刑確定者であるXが、Y(国)に対し、拘置所長において、再審請求の弁護人である弁護士による、再審請求の打合せを目的とする、同拘置所の職員の立会いのない1時間の面会をしたい旨の申出⇒同拘置所の職員を立ち会わせた上での30分の面しか認めなかった
⇒
Xは、このような制限は違法であるとして、
主位的に、同拘置所長において、前記目的の面会について、同拘置所の職員を立ち会わせる措置を執る旨の処分及び面会の時間について制限する旨の処分をすることの差止めを求めるとともに、
同拘置所長のこれらの行為に処分性が認められない場合に備えて予備的に、同面会について、同拘置所の職員を立ち会わせ、面会の時間について制限を付して面会を許可する処分をすることの差止めを求めた。
本件は、前記本案の訴えを提起したXが、Yに対し、前記本案の訴えにおいて差止を求める各処分の仮の差止めを求める事案。
<争点>
①刑事施設の長による同施設の職員を立ち会わせる旨の措置及び面会時間を制限する措置が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかどうか
仮の差止めの要件である「本案について理由があるとみえるとき」に関し、
②刑事施設の長による同施設の職員を立ち会わせる旨の措置及び
③面会の時間を制限する措置が、
裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものといえるかどうか。
<判断>
●死刑確定者の面会に関する刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(「刑事収容施設法」)120条ないし122条の条立てと、受刑者の面会(同法111条、112条、114条)及び未決拘禁者の面会(同法115条、116条、118条)の条立ては基本的に同様であることを指摘した上、
受刑者の面会に関する同法の規定を挙げて、
被収容者の面会は、本来的には刑事施設の職員の立会い等及び面会の時間等の制限の規制を受けない性質のものとして規定されているとし、未決拘禁者の面会及び死刑確定者との面会に関しても別異に解すべき理由はない。
死刑確定者の面会に際し、刑事施設の長が、その指名する職員を面会に立ち会わせ、又は面会の時間を制限する措置を執る場合には、面会の許可によって認められた死刑確定者の面会の利益を制約することになる
⇒刑事施設の長によるこれらの措置は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
●最高裁H25.12.210を参照し
再審請求弁護人が、再審請求の打合せをするために死刑確定者と刑事施設の職員の立会いのない面会(「秘密面会」)の申出をした場合に、刑事施設の長が、その許可に係る面会に職員を立ち会わせる措置を執ることは、秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ、又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとなる。
現時点における事情の下では、前記の特段の事情があるとはいえない
⇒拘置所長が秘密面会を許さずにその指名する職員を立ち会わせる措置を執ることは、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものというべき。
⇒
死刑確定者の再審請求の弁護人による刑事施設職員の立会いのない面会の申出に対する、これを許さない刑事施設庁の措置を仮に差し止めた事例。
●同拘置所における面会の実施件数などから、一般の面会についての面会可能時間は30分程度である上、面会の時間を制限する措置については、個々の面会の申出ごとの当該措置の時点における同拘置所の個別具体的な人的・物的事情を踏まえた上でなければ、現時点で直ちにその措置が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとなるか否かを判断することができない。
⇒
面会の時間を制限する措置に係る部分については、本案について理由があるとみえるときに当たるとはいえない。
⇒
死刑確定者の再審請求の弁護人による時間制限のない面会の申出に対する、刑事施設長による面会時間を30分に制限する措置の仮の差止めの申立てを却下。
判例時報2329
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