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2017年7月20日 (木)

虚偽の供述調書の作成が証拠偽造罪に当たる場合

最高裁H28.3.31      
 
<事案>
被告人が、
①共犯者と共謀の上、生活保護費を不正受給して騙し取った、という詐欺事件のほか、
共犯者と共に警察署を訪れ、警察官らと意を通じ、知人の暴力団員が覚せい剤を所持しているのを目撃した旨の共犯者を供述者とする内容虚偽の供述調書を作成して証拠を偽造した
という事案。 
 
<争点>
参考人の捜査官に対する虚偽の供述に基づき供述調書が作成された場合に証拠偽造罪が成立するか。 
 
<判断・解説>
●「他人の刑事事件に関し、被疑者以外の者が捜査機関から参考人として取調べ・・・を受けた際、虚偽の供述をしたとしても、刑法104条の証拠を偽造した罪に当たるものではないと解されるところ・・・その虚偽の供述内容が供述調書に録取される・・・などして、書面を含む記録媒体上に記録された場合であっても、そのことだけをもって、同罪に当たるということはできない。」

現行刑法は、偽証罪以外の虚偽供述を不処罰としており、参考人が捜査官に虚偽供述をして、それに基づき供述調書が作成された場合であっても証拠偽造罪は成立しないと解するのが相当

●「本件において作成された書面は、参考にAのC巡査部長に対する供述調書という形式をとっているものの、その実質は、被告人、A、B警部補及びC巡査部長の4名が、Dの覚せい剤所持という架空の事実に関する令状請求のための証拠を作り出す意図で、各人が相談しながら虚偽の供述内容を創作、具体化させて書面にしたものである」と本件の特殊事情を示した上、
「本件行為は、単に参考人として捜査官に対して虚偽の供述をし、それが供述調書に録取されたという事案とは異なり、作成名義人であるC巡査部長を含む被告人ら4名が共同して虚偽の内容が記載された証拠を新たに作り出したものといえ、刑法104条の証拠を偽造した罪に当たる

本件は、単に参考人が捜査官に対して虚偽の供述をし、それに基づき供述調書が作成された場合とは異なり、被告人が調書の作成名義人である警察官らと共同して供述調書という形式の虚偽の証拠を作り出した場合であることから、前記の基本的立場が適用されるべき事案ではないと判断されたもの。

判例時報2330

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