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2017年7月26日 (水)

共同企業体の破産管財人に対する財団債権としての不当利得返還請求権が認められた事例

福岡高裁那覇支部H28.7.7      
 
<事案>
2社から構成される建物の建築工事の共同企業体が工事を施工し、発注者から請負代金を同企業体名義で振込受領する等した後、同企業体の代表者であった会社につき破産手続開始
請負代金が破産裁判所を介して、破産管財人に引き渡され、財団組入⇒同企業体の組合員である会社が破産管財人に対して取戻権、財団債権を行使。 

A㈱とB㈱は、平成25年5月、C市の発注に係る幼稚園新築工事の請負につきX共同企業体を結成。
Aは、平成25年7月、Xを代表し、Cとの間で、請負代金2億356万9537円で前記新築工事、同年10月、請負代金341万2500円で付随する防音工事の請負契約を締結。

Aの代表者Dは、平成26年4月9日、Aの破産を考え、E司法書士に破産申立書の作成を依頼するとともに、請負代金がF銀行のX名義の預金口座に入金されると相殺されるおそれがあり、G信用金庫のX名義の預金口座に入金先を変更し、Cは、GのX口座に請負代金残金7447万4037円を入金したほか、Dは、Xの財産を保全するため、Eに前記請負代金を預けることとし、同日、Eの預金口座に振込入金をした。(E口座①.当時、別事件の預り金1826万円余も預けられていた)。

Eは、その後、E口座①からXの債権者に対する支払等の入出金をしたが、同年5月7日、他の事件の預り金と区別して保管するため、本来は7440万5997円となるべきところ、誤ってXの請負代金残額として7408万281円をH銀行のE名義の預金口座(E口座②.当時、Aからの預り金31万円余も預けられていた)に振替送金。

Aは、Eの作成に係る申立書等の書類によって、同年10月8日、N地裁O支部に破産手続開始の申立て。

X(清算人はB)は、
主位的に、金銭6832万9457円(請負代金)の所有権を主張し、破産法62条の取戻権の行使として、同金銭の返還を請求
予備的に、債権としての請負代金につきEとの間の委任契約、あるいは信託契約に基づく受取物引渡義務を主張し、取戻権の行使としての返還
財団債権としての不当利得の返還を請求する訴訟をO支部に提起。
 
<規定>
破産法 第148条(財団債権となる請求権) 
次に掲げる請求権は、財団債権とする。
五 事務管理又は不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
 
<争点>
①請負代金についてのXの所有権の有無
②Xの取戻権の有無
③委任契約の成否
④信託契約の成否
⑤財団債権としての不当利得請求権の有無
等 
 
<判断>
●主位的請求は理由なし。

●予備的請求について:
Xの代表者Aの代表取締役Dは、Eとの間で、Xの請負代金の保全を目的とし、これを保管し管理する旨合意し、請負代金を預託

金銭の所有権はEに一旦帰属するものの、Eは、委任の趣旨に従って権利し、委任終了時に残金の返還義務を負い、Xは、委任契約上の預託金返還請求権を有するに至った。(Xの信託契約の主張については、同契約の成立は認め難いとした)。

①Eが裁判所に請負代金を含む7008万円余を予納したのは、とりあえず散逸防止のため予納させたと推認でき、Xに属すべき金銭であることが判明すれば、その時点で何らかの処理をするもの
②予納自体は対価性を有する行為でなく無償行為に属するものであり、請負代金がXが帰属すべき金銭である以上、裁判所が取得すべき法律上の原因は存しないし、Xに帰属すること判明すれば速やかに本来の権利者たるXに返還すべき義務を負う。
③裁判所は、前記7008万円余をYに支給し、Yが財団組入したが、支給決定自体は単に裁判所の保管金を破産管財人に交付するための内部手続にすぎず、何らかの法的原因や対価関係を伴うものではなく、破産管財人がこれを取得する法律上の原因たりえないし、損失と利得との間の直接の因果関係を否定するものでもなく、財団組入は破産手続開始決定時における法定財団と現有財団との間に不一致がある場合に、破産管財人の管理下になかった財産を回収し、現有財団に帰属させる行為にすぎず、第三者に帰属すべき財産を破産者ないし法定財団に帰属させる法律上の原因にならない

Yが請負代金を財団組入したことは、単に第三者であるXに帰属する財産を事実上破産財団としてYの管理下に置いたものXは、Yに対してこの時点で直接に不当利得返還請求権を取得し、Yは財団組入時に悪意であったとして、破産法148条1項5号所定の財団債権を肯定
 
<解説>
財団債権としての不当利得返還請求の有無について、
控訴審判決は、
請負代金が共同企業体の固有財産であることを前提とし、共同企業体の預金口座、司法書士の二口の預金口座、破産裁判所の保管金口座、破産管財人の預金口座のそれぞれの振込を経て、破産管財人が財団組入した場合に、予納、支給決定、財団組入のそれぞれの法的な性質を説示しながら、破産管財人が請負代金を財団組入したことは、法律上の原因がなく、不当利得の要件を満たすとし、
共同企業体が破産管財人に対して財団組入の時点で直接に不当利得返還請求権を取得したこと、
本件の破産管財人が悪意であるとしたこと、
破産法148条1項5号所定の財団債権に当たることを判示。

判例時報2231

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