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2017年7月27日 (木)

①売買代金支払うまで②建物明渡しを拒絶する同時履行の抗弁権と③抵当権消滅請求の手続終了まで代金支払を拒絶する旨の主張

大阪地裁H28.7.27       
 
<事案>
Xは、平成16年7月2日、Yに対して賃貸用マンションである本件建物及びその土地(「本件物件」)を2億3500万円で売り渡した。
その際、XとYとの間で、Xが本件物件を2置く9464万5000円でXの一方的な意思表示により買い戻すことができる旨の再売買の予約を合意。
Xは、平成20年4月1日、Yに対し、本件再売買の予約を完結する意思表示を行ったとして、本件物件を2億9464万5000円で売り渡すことを求めた。
Yは、本件合意が無効である等を主張⇒Xは、本件物件について所有権移転登記手続を求める訴訟を提起⇒Yに対して本件再売買の代金と引換えに所有権移転登記手続を命じる旨の判決確定
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Yは、平成16年7月22日、本件物件に債務者をYとし、根抵当権者を第三者とし、極度額を3億4800万円とした根抵当権設定登記を設定。

Xは、無条件での本件建物の明渡し等を求める本件訴訟を提起。
 
<争点>
Yは、本件再売買の代金を支払うまで本件建物の明渡しを拒絶する旨の同時履行の抗弁
Xは、抵当権消滅請求の手続が終わるまで代金支払を拒絶する旨の再抗弁

前記の再抗弁に対してYが行った
①Y(売主)がX(買主)に対して遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求して一定期間が経過したから代金支払拒絶権は消滅したとの再々抗弁
②Xが本件再売買の予約完結権を行使したときに本件登記が存在することによる減価は考慮澄み⇒民法577条1項前段の適用はないとの再々抗弁
③代金供託を求める再々抗弁
 
<規定>
民法 第567条(抵当権等がある場合における売主の担保責任)
売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
2 買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる
 
民法 第577条(抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶)
買い受けた不動産について抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる

民法 第578条(売主による代金の供託の請求)
前二条の場合においては、売主は、買主に対して代金の供託を請求することができる。
 
<判断>
●代金支払拒絶権の消滅の再々抗弁(争点①)の可否 
民法577条1項前段の趣旨:
抵当不動産の買主は売主に対してて抵当権消滅請求の手続を行うために要した費用の償還を民法567条2項により請求することができる。
抵当不動産の買主が抵当権消滅請求の手続を終えた後にその費用を差し引いた売買代金額を支払えば足りるとすることによって、当事者間の衡平を図ることにある。

抵当不動産の買主が所有権移転登記を備えていない場合には抵当権消滅請求手続を行うことはできないところ、抵当不動産の売主が所有権移転登記手続に協力することなく民法577条1項後段に基づく抵当権消滅請求手続を行うことの請求ができるとすれば、抵当不動産の売主は同項前段による代金支払の拒絶を恣意的に回避することできる⇒同項前段の趣旨を没却。

抵当不動産の売主が所有権移転登記を備えていない買主に対して抵当権消滅請求の手続を行うことを請求するためには、原則として所有権移転登記を備えることへの協力を併せて行わねばならない

前訴判決に基づいてXは単独で所有権移転登記を備えることができるはずとのYの主張についても、前記判決に基づいて所有権移転登記手続を行うためには本件再売買代金全額を支払わなければならず、抵当権消滅請求の手続を先行させてその費用を差し引いた売買代金を支払えばよいとすることによって当事者間の衡平を図る同項前段の趣旨に反することになる。
⇒採用できない。
 
●民法577条1項前段の適用除外の再々抗弁(争点②) 
前記の民法577条1項前段の趣旨に鑑みれば、民法567条2項に基づく償還が否定される場合に限り、民法577条1項前段の適用が否定される。 

民法567条2項に基づく償還が否定される場合とは、売買契約を締結する際に、買主が、担保権がある事実を知った上、その債務の額を控除して代金額を定めたことにより、買主において担保権の被担保債権の債務引受けがあるものと認められる場合。

本件の再売買の合意は本件登記が設定される以前にされたもの⇒上記が妥当する場合ではない。
⇒Yの主張を排斥。
 
●代金供託の再々抗弁(争点③)
民法577条、578条に基づく代金供託請求は、担保権の登記のある不動産の売主が、代金支払を拒絶する買主の資力を担保するための制度

当事者間の公平のため、買主による代金の供託と売主による不動産の引渡しは履行上の牽連性を有していると解するべき。

Xによる売買代金の供託とYによる本件不動産の明渡しは同時履行関係に立つ
 
引き換え給付判決

判例時報2331

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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