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2017年7月 2日 (日)

地方公共団体が発注したプラント設備工事の契約解除等

京都地裁H28.5.27       
 
<事案>
原告(地方公共団体)と被告(請負人)との間で締結された廃棄物焼却の後に排出される焼却灰を溶融する施設のプラント設備工事を内容とする請負契約(請負代金112億4550万円)について、被告による工事がなされたが、当事者間で工期が何回か変更され、最終引渡期限前で被告による引渡前の第二次試運転中に、設備に不具合(ダスト堆積)が生じた。
被告が期限までに工事を完成させることが不可能となったなどとして、原告が、最終引渡期限より約1か月前に、契約を解除。 

工事途中において、原告は、被告に対し、出来率97%であるとの検査結果を通知し、請負代金約88%を支払っており
被告は、原告に対し、1162日分の工事遅延損害金合計23億円余を支払っていた。
請求  原告が被告に対し、
契約解除は有効であり、本件プラントの解体撤去及び損害賠償に関する合意(本件解体撤去等の合意)も成立したなどと主張し、

主位的に
①本件プラント設備全体の解体及び撤去
②損害賠償金68億円余及びこれに対する遅延損害金の支払
③既払請負代金98億円及びこれに対する遅延損害金の支払
を請求し、
主位的請求①について、予備的に、解体撤去費用相当額17億円余及びこれに対する遅延損害金を請求。

反訴請求:
被告が原告に対し、原告が工事の進捗を妨害し、工事を完成させることが社会通念上不能となったなどと主張し、本件契約に基づき、請負残代金の支払を請求。
 
<争点>
①本件解体撤去等の合意の成否
②本件請負契約の解除の有効性
③解除が有効である場合の解除の範囲
④被告の原告に対する請負残代金請求の可否 
 
<判断>
●争点①(本件解体撤去等の合意の成否)
原告は、本件解体撤去等の合意の意思を一貫して有し、明示的に申し込みをした。

被告の承諾について:
①株主代表訴訟のリスク等を理由に難色を示していた
②100億円以上の負担を被告が承諾する動機に乏しい
③被告担当者は、あくまで現行の要望を協議する意図で調整を図っていた
⇒否定
本件解体撤去等の合意の成立は認められない

●争点②(解除の有効性) 
◎適用される民法上の規定
予定された工程を一応完了したといえるためには、少なくとも発注仕様書において予定されていた第二次性能確認試験合格が必要
②被告は同性能試験に合格しておらず、いまだ予定された工程を完了していない
請負の担保責任ではなく、債務不履行一般の規定が適用される。

◎履行遅滞に基づく解除 
①本件請負契約上、債務不履行に基づく解除原因は、
「責めに帰するべき理由により」「工期又は工期経過後相当期間内に工事を完成する見込みがないと認められる場合」と規定。
②被告が、本件請負契約の変更契約によって合意された期間までに本件プラントの完成検査に合格できなかった
契約上の履行期徒過を認めた
but
本件請負契約の規定(損害金を徴収しての工期延長規定)
被告が同規定に基づく遅延損害金を支払っていること

被告は、原告に対し、同規定に基づき、引渡期限延長の申込みを行い、
原告は、被告に引渡期限を厳守すること等を内容とした「厳命書」を交付した時点で、被告の前記申込みを少なくとも黙示的に承諾

本件契約の履行期は平成25年8月末日まで延長された。

第二次試験運転時に発生したダスト堆積の発生により、前期債務不履行に基づく解除の各要件が満たされるか?
①同試験に使用された焼却残さ成分は、第一次試運転時と異なり、設計図書において設計値として記載された値を上回っており、性能評価会議の有識者もダスト堆積原因を明確に特定できていない
②被告が立案したプラント内部の形状変更や堆積したダストを空気圧で排除しして体積を防止するスチームブローを移設すること等の対策工事の有効性が、事後的な実験ではあるが確認された

原告による解除の意思表示時点で、本件請負契約上の解除要件は満たされていない

原告の解除に至る意思決定の過程には、原告の協力義務に違反するものがあると評価できる⇒受領遅滞の成立を認め、このような点からも債務不履行による解除が否定される。
 
◎履行不能に基づく解除 
本件請負契約には一定の開発行為が含まれ、想定外の不具合の発生及びその是正の必要が生じ得る不具合の発生から直ちに履行不法となるとはいえない
②被告提示のダスト堆積への対策工事の有効性が確認できる
③プラント内の炉内圧力(正圧)による蒸気噴出の問題は、負圧状態の維持の仕組みが整っていたと認められる

本件請負契約における仕事完成債務は社会通念上履行の期待可能性がないとはいえず、履行不能であるとは評価できない
 
●争点④(被告の原告に対する請負残代金請求の可否)
①被告の仕事完成債務について、被告が工事を完成させることができないのは、技術的対策工事の面ではなく、原告が被告の対策工事を明確に拒絶していることが原因
原告がそのような態度をとる原因となる事情があり、本件工事未完成の責任が、一概に原告のみにあるとまではいえず、被告にも原告の頑なな態度を招いた面も否定できない

原告が被告の対策工事を明確に拒絶していることのみから、ただちに社会観念上の履行不能と評価すべき事案ではない

公益上重要な施設の将来にかかわり、巨額の公的資金の使途における有効性にかかわる
⇒原告の翻意がいまだ期待される。

仕事完成債務が履行可能と解すべき事案であるとして、民法536条2項の履行不能に当たらない

反訴請求が既払部分を除く完成部分の請負残代金請求であると解したとしても、当該請求の根拠がない。
 
<解説>
債務不履行の一類型としての「履行不能」は、一般には、債務の対象が不存在又は滅失するなどの物理的不能の場合や、物理的には履行可能であっても、社会通念や取引通念によって債務者による履行の実現が期待できない場合をいうと解されている。

判例時報2328

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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