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2017年7月 1日 (土)

社会保険事務所の担当者の説明・回答の誤り(⇒時効消滅)と国賠請求(肯定)

東京地裁H28.9.30      
 
<事案>
厚生労働大臣から遺族厚生年金の支払裁定を受けたXが、その裁定を受けるまでの間に、複数の社会保険事務所において、遺族厚生年金の受給の可否を相談⇒各職員から受給はできないとの誤った説明ないし回答⇒遺族厚生年金の受給権の一部が消滅時効にかかり支給を受けることができなかったことから損害を被った⇒Y(国)に対し、国賠法1条1項に基づき、消滅時効の完成を理由に受給できなかった年金総額及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。 
 
<判断>
●国賠法1条1項の違法な行為の有無 
・・・・このような事情の下では、平成4年6月15日の年金相談を担当した本件担当職員は、X及びBからの説明内容を踏まえ、配偶者要件充足の可能性を認識した上で、XがAの死亡時に離婚していた場合、原則としてAの遺族厚生年金を受給することはできないが、もし、配偶者要件及び生計維持要件を充足する事実関係が認められたとするならば、XがAの遺族厚生年金を受給することができる可能性もある旨説明すべきであったというべきであるのに、本件担当職員は、このような説明をすることなく、また、配偶者要件や生計維持要件の充足に関する事情を聴取することもないまま、死亡時に離婚していたので遺族厚生年金を受け取る方法はない旨誤った説明、回答を断定的にしたものといえ、これは、職務上の法的義務に違反する国賠法1条1項の違法な行為に該当する。
 
●損害額 
①平成22年10月15日の裁定請求の際のX及びBの対応⇒平成4年6月15日の年金相談において遺族厚生年金を受給することができるかもしれない旨の説明を受けていれば、X及びBは、速やかに、必要な書類を調査、収集して、遺族厚生年金の給付を請求したものと認めるのが相当。
②Xが平成4年6月15日の年金相談の後、速やかに遺族厚生年金の支給を請求すれば、そのころ社会保険庁長官により遺族厚生年金支給の裁定が行われ、Xは、平成22年の裁定では消滅時効が完成したためにXへ支給されなかった昭和62年9月分から平成17年7月分までの遺族厚生年金をも受給することができたと認めるのが相当。

時効消滅したXの遺族厚生年金の昭和62年9月分から平成17年7月分の合計額が・・・相当因果関係のある損害といえる
Xは・・・平成8年9月分から平成17年7月分までX自身の老齢厚生年金合計338万8646円を受給しているが、これは、仮に平成4年6月に、Aにかかる遺族高裁年金支給の裁定が行われていれば受給することのなかったもの

これを・・時効消滅額から控除した1433万9869円が、本件でXがYに請求することが可能な損害額と認めるべき。
 
●消滅時効の可否 
Xは、相談担当職員の誤った回答で遺族厚生年金の受給権が時効消滅したとして、国に対して時効消滅した年金受給権及び遅延損害金を請求する旨の平成25年11月6日付けの通知書を消滅時効完成前の同月7日に受け取っているところ、この通知書により、Xは、本件損害賠償請求についてYへ催告したものと認められる。
⇒仮にY主張の日が本件の損害賠償請求権の消滅時効の起算日となるとしても、上記の通知書による催告によってY主張の消滅時効は中断。
⇒消滅時効完成についてのYの主張を否定。

判例時報2328

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