刑の執行猶予の言渡し取消し決定謄本の送達先
最高裁H29.1.16
<事案>
執行猶予付き懲役刑の猶予期間中の再犯に関し、再度の執行猶予付き懲役刑を言い渡され、保護観察に付されていた申立人につき、遵守事項違反があったなどとして、刑の執行猶予の言渡し取消し決定がされ、即時抗告も棄却されたため、特別抗告が申し立てられた。
検察官が前記各刑の執行猶予の言渡し取消しを請求⇒原々審は各刑の執行猶予を取り消す各原々決定。各決定の謄本を、いずれも検察官と原々決定で申立人が選任した弁護人2名のうち主任弁護人に対して送達but申立人に対して送達しなかった。
申立人は、前記弁護人2人を原審の弁護人として改めて選任し、各原々決定に対して即時抗告⇒原審は、各即時抗告をいずれも棄却⇒申立人が本件特別抗告を申し立て。
前記弁護人2人は、刑訴規則62条1項の送達受取人には選任されていなかった。
<規定>
刑訴規則 第62条(送達のための届出・法第五十四条)
被告人、代理人、弁護人又は補佐人は、書類の送達を受けるため、書面でその住居又は事務所を裁判所に届け出なければならない。裁判所の所在地に住居又は事務所を有しないときは、その所在地に住居又は事務所を有する者を送達受取人に選任し、その者と連署した書面でこれを届け出なければならない。
刑訴規則 第34条(裁判の告知)
裁判の告知は、公判廷においては、宣告によつてこれをし、その他の場合には、裁判書の謄本を送達してこれをしなければならない。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。
<判断>
刑訴規則34条は、「裁判の告知は、公判廷においては、宣告によつてこれをし、その他の場合には、裁判書の謄本を送達してこれをしなければならない。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。」と規定しているところ、刑の執行猶予の言渡し取消し請求において、同条により刑の執行猶予の言渡し取消し決定(刑訴法349条の2第1項)の謄本の送達を受けるべき者は、検察官及び猶予の言渡しを受けた者(被請求人)であり、また、同謄本が、被請求人の選任した弁護人に対して送達されたからといって、被請求人に対する送達が行われたものと同じ法的な効力は生じないと解するのが相当である。
<解説>
最高裁昭和58.10.19:
刑の執行猶予言渡し取消し請求事件についての即時抗告棄却決定謄本が即時抗告の申立人(被請求人)本人と弁護人との双方に日を異にして送達された場合、特別抗告期間は申立人(被請求人)本人に対して送達された時から進行を始めるものと解すべき。
判例時報2329
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